花嫁の勘案

はなおくら

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 そんな日々で、ヴォンはやはり女性に人気だった。

 新しい孤児院で働く先生方に大人気でいつも囲まれている。

 印象を悪くしてはダメだと、愛想良く笑う彼を見てしかたないと思いつつ面白くなかった。

 彼に声をかけようとして、たくさんの女性に囲まれているのが面白くなくてわたしは彼に背を向けた。

 そんなわたしの様子に彼は気がついていた。

「リア、待ってくれ。」

 振り返るとヴォンはわたしを後ろから抱きしめた。

 それが嬉しいのに素直に慣れずにそっぽを向いた。

「…なんですか…。」

 可愛くない態度をとってしまう。

 そんなわたしの様子を見てヴォンは気まずそうにしつつも笑っている。

「リア、機嫌直してくれ。実は君と行きたいところがあるんだ。明日久々に出かけよう。」

「…わかりました。」

 不機嫌な返事をしつつ、彼と出かけるのは久しぶりな事に気がついた。

 内心ソワソワしながら明日が来るのを心待ちにしていた。

 そんなわたしの様子をヴォンは見透かしたように笑っていた。

 次の日、侍女にお願いしておしゃれな服装に着替えた。

 出かけるには馬車を使うだろうと、玄関で待っていると、ヴォンがラフな格好をして歩いてきた。

「待たせたね。いこうか。」

「はい…。」

 まぁ、どんな格好でも出かけられるのは嬉しいと屋敷を出て前を見ると何もなかった。

「ヴォン、馬車は使わないのですか?」

 わたしがそう聞くと、彼は首を振った。

「今日行くところは馬車は使わないんだ。」

 そう言って、わたしの手を引いて歩き出した。

 いつもなら最低1人はいる護衛もいない、むしろ屋敷の敷地を歩いている様に思う。

 どこへ行くのか不思議に思いながら、屋敷内の庭の少し奥に連れて行かれる。

 不思議に思っていると、目の前に小さな小屋が見えてきた。

「…ここは…?」

 ヴォン様 の方を見ると、彼は笑って答えた。

「私たちの家だ。」

「…え…?」

 わけがわからなかった。

 今きた屋敷が私たちの家ではないのかと思っていたのだが、どうやら違う様だった。

 混乱するわたしの手をまたヴォンは握ると家の中に案内してくれた。

 家の中は本当にこぢんまりとしたところだった。

 一部屋に、ベッドとキッチンだけが付いている。

 なかなか見慣れないものなとだが、不思議と心地いい気持ちになった。

 部屋を見渡すとヴォンはキッチンの前に置いているテーブルに腰掛ける様にイスを引いてくれた。

 わたしを座らせると、彼は目の前の椅子に腰をかけて、向かい合う様に座る。

「ヴォン…いつのまにかこんな可愛いお家を?」

 そう聞くと、彼は照れくさそうに頭を掻いた。
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