愛情に気づかない鈍感な私

はなおくら

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 曲に合わせて踊りながら、この婚姻生活に終止符を打つ時なのだと実感する。

 今自分はダンスを踊っているが、目の前にはハリアとの大切な思い出が蘇ってくる。

 どれも大切な宝物で、忘れ難いものたちだ。

 いつの間にかうっとりとしていたのか、ダンスも終わっていた。

 目の前には戸惑った令息がこちらをずっと見ていたため慌ててお礼を言ってその場を後にした。

 ダンス会場を後にしようとしたその時、手を引かれた。

 驚き気づけば、目の前にハリアがいた。

 ハリアの目から不機嫌さが出ており、ハーブ嬢と何かあったのかと心配になった。

「どうしたの?」

「……いや、まだ踊り足りないんだ。」

 そう言うと私の手を引いてまたダンスの中央へと手を引いた。

 彼と黒色の瞳を見つめていると、彼に愛されている様な錯覚さえ覚えてくる。

 手を握り合った手のひらからゴツゴツとした感触が感じられる。

 静かな音楽に身を任せて彼とのダンスに心躍らせる。

 あぁ…このまま時が止まればいいのに。

 現実を見たくないと目を閉じた。

 その時、腰に回してた手に力が入ったと思った瞬間、体が密着するほど近づけられた。

 そのせいで足が浮き、ハリアに抱えられる形になっている。

「セリーナ、一体何を考えてるんだ?」

「えっ…何もあなたとのダンスに気をよくしただけよ。」

 思ったことを口にしただけだったが、彼はどこか納得のいかない様な顔をしている。

 そこでタイミングよく曲が終わった。

 ともに礼を尽くして、ダンスホールに出ようと彼に手を伸ばしたその瞬間、彼に抱き寄せられて頬にキスを落とされた。

「セリーナ…。」

 その声はまるで愛しい恋人を呼ぶ様な声色で私は戸惑うばかりだった。

 夜会が終わり、翌朝とある事件が起きた。

 昨日ダンスを踊った令息の家が没落したと報告があった。

 あまりの突然の事に急いで、ハリアの元へと足を運んだ。

 彼の書斎に入り、報告された紙面を彼に見せた。

「残念だ。才能ある家だったのに…。」

「本当に…。」

 なんの違和感もなく彼の落胆ぶりに同意した。

 この時私は、彼が突然の出来事に驚いていない事に気が付きもしなかった。

 部屋に戻り、私は書面を走らせた。

 彼との離婚届の準備に取り掛かっていた。

 私がいつまでもここにいれば、彼はハーブ嬢を迎える事ができなくなってしまう。

 準備した書類を手に、彼といつも読書をする部屋を訪れた。

 ハリアは先に来て、書物を読んでいた。

「セリーナ、遅かったね。」

「ごめんなさい、いろいろ準備があって…。」

「準備?」

「ええ!」

 そうして私は彼に一枚の紙を渡したのだった。



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