婚約破棄されても貴方が好き

はなおくら

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 何日も部屋に篭った。まだ誰とも顔を合わせたくなったからだ。

 婚約破棄の日から一週間後、お父様が部屋に入るなり、冷たい声色で口を開いた。

「ガルリア公爵から話は聞いた。全く役に立たない娘を持ったものだ…。お前の兄や姉は立派に己の勤めを果たしていると言うのに…。」

 そう愚痴をこぼすと、早々に部屋から去って行った。

 こんな生活に飽き飽きしていた。父は冷たく利益の事しか考えておらず、母は気が弱く父の言いなりだ。

 そして一番上の兄とその下の姉は、結婚して子供もいるが、自分の事が大切で家庭を顧みない。

 そんな家族の元で育ったからだろうか、小さい時から自分は幸せな家庭を作ると決めたのは、だからこそアレクサンダー様との結婚に期待した。

 自分には向けずとも動物達に向ける優しい視線も惹かれた一つだ。

 彼が来る日は、ドレスに前日、時間がかかった。可愛く綺麗に見られたくて、歳に似合わないヒールを履いてみたりしてそんな時間も楽しくて仕方なかった。

 だがそんな生活ももう終わった。このままだとまた父の言う婚約相手をあてがわれてしまうだろう。

 そんなのは絶対に嫌、私は彼と一緒がいい。

 父の嫌味のおかげか頭が冷えた。今考えついたのは、彼の母に会いに行く事にした。

 急いで着替えを済ませて馬車に乗り込んだ。

 そしてガルリア公爵邸にたどり着いた。遠慮気味に御者が見つめているのを、手で制して呼び鈴を鳴らした。

 中から家令が出てきた。

「ガルリア公爵夫人に会いにきました。」

 そう言うと、家令は焦った顔で言った。

「っ…奥様にどのような御用でしょうか?」

 当たり前だ。婚約破棄した相手が何の連絡もなしに来るなど、しかも相手の母にとは異例の事だ。

「ごめんなさい。今までお世話になった事のお礼が言いたくて…。」

「…かしこまりました。少しお待ちください。」

 家令はそう言うと、近くのメイドに私を部屋へと案内させ、奥へと消えて行った。

しばらくすると、派手に着飾った夫人が顔を出した。

「ジェニファー、久しぶりね。私に用があると聞いたけど、どうしたのかしら?」

「突然の訪問失礼いたします。実は折言ってお願いがあります。」

「何かしら?」

「彼の…アレクサンダー様の今後の行動を教えていただけませんか?」

 私がそう言った瞬間、部屋の中が静寂に包まれた。

 自分で言っててやってる事はイカれていると分かっていた。卑怯な事も。

 その時、部屋の戸が鳴って、夫人が返事をすると、ひょろ長い体型だが顔が異様に整った男性が入ってきた。
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