婚約破棄されても貴方が好き

はなおくら

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「奥様…。」

「ヒュードロ‼︎いらっしゃい…!。」

ひょろっとした男の名前を呼んで、自分のところへと呼び、わたしの目の前で長いキスを交わした。


 彼の母は既婚者にもかかわらず恋多き女性だ。正直なところウマが合わないが、そんな女性だからこそ情熱的なのだ。

 夫人は嬉しそうに男の耳元に何か呟く
と、男も満更ではない顔で部屋を出て行った。

「失礼したわね。それで婚約破棄したと聞いたけど、何がほしいの?」

 直接の質問に、内心冷や汗をかいたが
息を大きく吸い込み声を発した。

「彼です。アレクサンダー様…どんな形でもいいのです。彼の側にいられるなら…。」

「そう…。そこまでわたしの息子に熱をあげてもらえるなんて光栄だわ。……わかりました。下の者に息子の予定を送らせましょう。そのかわり条件があります。」

「条件…ですか?」

「えぇ、期限は今から半年、わたしも永遠にできるわけではないわ。だからこの期間に息子の心が変わらないのならば、こちらからの協力は断ち切らせてもらうわ。それでもいいのね?」

「はい!ありがとうございます‼︎」

 夫人が挑戦的な笑みを浮かべている。だが半年ほどでも構わない、半年後ダメならば他の手を使えばいい。

 今は彼と近づける手がかりをもらえたことに安心した。

 ガルリア邸から帰り急ぎ自室に駆け込んだ。

 手に持っているのは、アレクサンダーの1ヶ月間の予定表だ。これから毎月送られてくる約束だった。

 目を通してみると、月に3回ほど旅行の予定が組み込まれていた。

 ここで何かに扮して彼の側に行けないか考えた。それにこちらの予定もある。

 思いついた事がひとつだけあった。彼は旅行に行く時、一人の時間を欲しがり、近しい者を入れたくないと一回、一回、臨時で身の回りの世話をするメイドを雇っていた。

 これだと急ぎ、ガルリア家が募集をかけている建物へと入った。

 もちろん身なりは、平民が切るような服を身にまとい、知り合いにバレないように布で顔を覆った。

 面談する部屋に入ると、小さい頃からよく知っている。メイド長とアレクサンダーが座っていた。

 内心バレてしまわないか、ドキドキと震えたが、向こうはこちらに気づいていない。

「貴方が、連絡をくれたジニアね。」

「はい。」

 ジニアとはその時つけた偽名だ。ジェニファーの時には屈託なく笑うメイド長だが、この時は厳しい表情を浮かべていた。

 アレクサンダーは、表情を変えずにただ呆然とこちらを見つめている。

 色々な質問をされて、ボロが出ないように気を付けて答えていく。

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