婚約破棄されても貴方が好き

はなおくら

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「とてもおいしいです。…なんだか優しくて…暖かい気持ちになります。」

 そう言って再び彼の作ってくれたサンドウィッチに目をやった。

「僕も君の手料理の時そう感じるよ。」

 驚いて顔を上げると、優しい瞳でこちらを見つめている彼と目が会う。

 勘違いしてしまいそうになる。こんなに暖かい目で見つめられて、心臓が早鐘を打っている。周りの音すら聞こえないほどに。

「あっ…。ありがとうございます。まだまだ苦手ではありますがっ…もっと頑張りますねっ!」

 そう言って目を逸らして、食事を平らげて自分の仕事を取り掛かった。

 胸は彼にときめいたまま、打つ胸を深呼吸で必死に抑えた。

 そうしてどれくらいの月日が経ったのか。社交界シーズンがやってきた。

 そして王族が皆揃う日があった。この日、どの貴族もよっぽどの事がない限り出席しなければならない。

 私は今、使用人に体のケアをしてもらっている。今夜がその日なのだ。

 彼とも顔を合わせるのだろう。正直この姿で彼に会うのは気まずい。それに、お父様が次の相手をと目を光らせているのも事実。

 全く、ため息が出る。

「お嬢様、お召し物はどのようなものにいたしますか?」

 婚約時は目を輝かせて選んでいたドレスも、私の気乗りしない様子を感じているからか、使用人たちが寂しげに見える。

 自分がこうではいけないと無理に笑ってドレスに目をやった。その時目についたのは、ピンク色のシンプルなドレス。         彼と初めて社交界のデビューをした時に着た服だった。

 ふとその頃の事を思い出す。初めてもあって、あのいつも以上に言葉も交わせず、そのまま1日が終わった事を覚えている。だが彼に別れ間際、綺麗だと褒められたのを覚えている。

 使用人に、このドレスに装飾品などのアレンジを任せた。

 出来上がったのは、髪をアップにして、ピンクのドレスに薄いケープを肩に欠けている。ネックレスとイヤリングは天使の羽を連想させるものだった。

「みんな、ありがとう。」

 お礼を言うと使用人達は、頭を下げて嬉しそうに出て行った。

 馬車に乗り会場に入ると、大勢の人が皆言葉を巧みに使い話をしている。

「ジェニファ!」

 声のあった方へ振り向くと、外面をよくした父とその横の若い青年いた。

 内心ため息をついて近づくと、父は嬉しそうに言った。

「ジェニファ、この方はお前を気に入って声をかけてきてくれたんだ。」

 父がそういうと、目の前の青年がお辞儀をした。

「はじめまして、御令嬢の事は社交界でも聞かない日はないほど美しく華やかと…。」




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