婚約破棄されても貴方が好き

はなおくら

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 好きな人に冷たくされると苦しい、こんなに好きなのに相手に伝わらないもどかしさに胸が痛んだ。

 その時、肩に何かをかけられた。目を開けると屈んでこちらを困った顔をしている小侯爵様がいた。

「…泣かないでください。」

 小侯爵様はそういうと、私の瞼をハンカチで優しく抑えてくれた。

「…申し訳っ…ありませんっ…。」

 涙が邪魔をして言葉がうまく出てこない。そんな私に小侯爵は顔を寄せた。

 気づいた時には、おでこに柔らかい感触が残った。

「えっ…?」

「ジェニファ嬢、とりあえずソファに…。」

 そう言って小侯爵様は、私の体を支えて立ち上がらせてくれ、ソファまで連れて行ってくれた。

 そして立ち上がり、ドアを少し開け使用人にお茶の準備を頼むと、すぐにこちらに戻ってきた。

「今日は、小侯爵様に恥ずかしいお姿ばかり見せてしまっていますね。」

 少し落ち着きを取り戻した。小侯爵に悪いと思いそういうと彼は優しく首を振った。

「いえ…。ジェニファ嬢、実はあなたの父上から婚約を進められています。あなたにとって身分の低い私では、気に入らないと思いますが…。」

「いえ!…かえってこんな姿まで見せている私の方こそ…小侯爵様には…。」

 私がそういう時、横から小さな笑い声が聞こえた。小侯爵の顔を笑いを堪えている。その顔に少しキュンときてしまった。

 そしてこの状況があまりにもおかしく感じられて、つられて自分も笑っていた。

 笑ったおかげだろうが、気持ちが少しスッとした。改めて小公爵の顔を見ると彼は誠実な人なのだと感じた。でも婚約とは話が別だ。お断りしようとした。

 すると彼も私の表情で感じ取ったのか口を開いた。

「ジェニファ嬢、今すぐに決めてくれと言いません。僕が欲しいのはあなたの心です。」

「いえ、小公爵様申し訳ありませんがお断り致します。」

 小公爵様の気持ちはありがたいが、彼を利用する事はしたくない。それに気持ちのない婚約がどれほど、相手を傷つけるのかは自分が痛いほどわかっている。

「申し訳ありません…。」

 私が謝ると彼は、悲しげに笑ったが顔をすぐにあげて、真っ直ぐな目で私を見た。

「ジェニファ嬢、婚約の事はわかりました。友達ではダメですか?…私はあなたの事が人として好きです。どうか私のわがままを聞き届けていただけませんか?」

 誠実な目に心が動いた。

「わかりました。私もあなたを友人として好きです。よろしくお願いします。」

 初めて私にできた友達。純粋に嬉しかった。だからこそ大事な友人に期待させない振る舞いをしなければと思う。

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