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私の質問に、彼はキョトンとした表情を浮かべた。
「僕はそんな事気にしないよ。それに人間が容姿が全てではないよ。」
そう言った彼の瞳は暖かく見とれてしまうほど優しい目をしていた。社交界の時の彼とは違う。こんな表情を私に見せて欲しいとどうしようもない熱情が出てきて胸を締め付けた。
目的地に到着した。ここは湖があり、周りは森で囲まれていて人気がない神秘的な景色だった。
遠くには鹿やウサギなど皆、何にも邪魔される事なく伸び伸びと生きている。自由とはこういう事なのだろうと思った。
「素敵なところですね…。」
「ここは僕にとって特別な場所だよ。君と一緒に来たかったんだ。」
「えっ…?」
耳を疑った。もしかして彼は私の事を…。勘違いと思いたくても期待してしまう。
「ここに来ると落ち着く。生き物の伸びやかな生活をみると自分はちっぽけでつまらない人間なのだと思うんだ。」
そう言った彼の表情は、どこか寂しそうな目をしていた。
彼のこんな表情は初めて見たかも知れない。だけどわたしには理解できた。
衣食住には困っていないが、唯与えられるだけの行為が虚しい事を知っている。
私はその空いた心を埋めようと、婚約者だった彼に執着してしまったのかも知れない。
そう考えると、私は彼の事を本気で愛しているのだろうか?身分を隠して、彼の近くに寄る事が正解なのだろうか。
でもその答えを出して仕舞えば彼とのこの関係が終わってしまう。
…もう少しだけ…彼の側にいたい。
そう願っていた。そんな私の顔を彼が見つめていることにも気づかずに。
動物の観察を続けていつのまにか昼食の時間がやってきた。
離れている間に、料理の訓練を行ったおかげか、コツが掴めて作るのが楽しくなっていた。
今日は卵料理だ。チキンを炒めて玉ねぎを加えて、お米と混ぜ合わせる。そしてふわふわの焼いた卵をその上に乗せれば、オムライスの完成だ。付け合わせに小さなサラダを出した。
「美味しそうだ!一緒に食べよう!」
料理を見た瞬間、彼は笑顔でそう言うと私をマットの上にエスコートしてくれた。
唯座るだけなのだが、彼の大層なエスコートについ笑いが漏れてしまう。そんな私に彼も笑ってこちらを見てくれている。
二人で向かい合い食事を始めた。
「「いただきます。」」
彼の反応が気になってみつめた。彼は一口食べ終えるとこちらを向いて言った。
「美味しいよ。君の作る料理は最高だ。」
屈託無く笑う彼の姿に自分も食欲がそそられた。
スプーンを持ち、卵を口の中に入れると、自分で作ったのにも関わらず、初めて食べた物を食すように食べていた。
これも目の前に彼がいるからだろう。
「僕はそんな事気にしないよ。それに人間が容姿が全てではないよ。」
そう言った彼の瞳は暖かく見とれてしまうほど優しい目をしていた。社交界の時の彼とは違う。こんな表情を私に見せて欲しいとどうしようもない熱情が出てきて胸を締め付けた。
目的地に到着した。ここは湖があり、周りは森で囲まれていて人気がない神秘的な景色だった。
遠くには鹿やウサギなど皆、何にも邪魔される事なく伸び伸びと生きている。自由とはこういう事なのだろうと思った。
「素敵なところですね…。」
「ここは僕にとって特別な場所だよ。君と一緒に来たかったんだ。」
「えっ…?」
耳を疑った。もしかして彼は私の事を…。勘違いと思いたくても期待してしまう。
「ここに来ると落ち着く。生き物の伸びやかな生活をみると自分はちっぽけでつまらない人間なのだと思うんだ。」
そう言った彼の表情は、どこか寂しそうな目をしていた。
彼のこんな表情は初めて見たかも知れない。だけどわたしには理解できた。
衣食住には困っていないが、唯与えられるだけの行為が虚しい事を知っている。
私はその空いた心を埋めようと、婚約者だった彼に執着してしまったのかも知れない。
そう考えると、私は彼の事を本気で愛しているのだろうか?身分を隠して、彼の近くに寄る事が正解なのだろうか。
でもその答えを出して仕舞えば彼とのこの関係が終わってしまう。
…もう少しだけ…彼の側にいたい。
そう願っていた。そんな私の顔を彼が見つめていることにも気づかずに。
動物の観察を続けていつのまにか昼食の時間がやってきた。
離れている間に、料理の訓練を行ったおかげか、コツが掴めて作るのが楽しくなっていた。
今日は卵料理だ。チキンを炒めて玉ねぎを加えて、お米と混ぜ合わせる。そしてふわふわの焼いた卵をその上に乗せれば、オムライスの完成だ。付け合わせに小さなサラダを出した。
「美味しそうだ!一緒に食べよう!」
料理を見た瞬間、彼は笑顔でそう言うと私をマットの上にエスコートしてくれた。
唯座るだけなのだが、彼の大層なエスコートについ笑いが漏れてしまう。そんな私に彼も笑ってこちらを見てくれている。
二人で向かい合い食事を始めた。
「「いただきます。」」
彼の反応が気になってみつめた。彼は一口食べ終えるとこちらを向いて言った。
「美味しいよ。君の作る料理は最高だ。」
屈託無く笑う彼の姿に自分も食欲がそそられた。
スプーンを持ち、卵を口の中に入れると、自分で作ったのにも関わらず、初めて食べた物を食すように食べていた。
これも目の前に彼がいるからだろう。
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