23 / 44
23
しおりを挟む
私が返答をしてからまた沈黙で気まずい雰囲気が流れてきた。
あまりの居心地の悪さに深々とお辞儀をして立ち去ろう彼の横を通り過ぎようとした時、薔薇の花束が落ちた。
気がつくと、腰を引き寄せられ彼の顔間近で見つめ合う様に向き合っていた。
抵抗してみるがびくともせず、彼と見つめあったまま時が止まった気がした。
「………。」
「……………。」
どれくらいそうしていただろうか、急に腰に回っていた彼の手が離れた。
「…すまない…。」
そういうと彼は私の横を通り過ぎて立ち去っていった。私は気がつくと激しい心臓を手で押さえ込んだまま、その場にしゃがみ込んだ。
彼はなぜ今になってこんな事をするのだろうか。諦めようと必死になる私にまるで未練でも残すかの様に…。
彼の気持ちがわからない。
戸惑う心を深く息を吸い、吐いて落ち着かせていった。
次の日の朝、枕元に一輪の黄色い水仙が置かれていた。
…これは…。
昔、本で見たことがある。外国に水仙の生殖する国から来た花だ。手に入れるには難しい事も…。
でも何気に覚えているのは、この花言葉故だった。
もう一度愛してほしい。
誰からの贈り物かわからないが、その花をお気に入りの本の中に挟んだ。
身支度を整えて自分の担当の仕事場へと向かう。私が任されているのは、皿洗い兼雑用だ。
一緒に働く人達は話もせずきびきびと働いている。だからといって仲が悪いわけではない。
私が皿を洗い終えた頃、メイド長から頼み事をされた。彼の部屋の掃除担当が急用の為、人手が不足しているとのこと。
私は急ぎ掃除担当をしている人の所へ向かった。着いた頃には皆先に始めていた。私も続いて手を動かす。
そして掃除が終わった。担当の使用人からお礼を言われて笑顔で返した。自分の担当に戻ろうと、最後に部屋を出たその時、彼が部屋に戻ってきた。
昨日の事もあり、お辞儀をして去ろうとした時。
「少し…いいか?」
呼び止められ私は振り向くと、彼はこちらを見つめていた。
「はい…。」
他の使用人に少し遅れると持ち場の人への伝言を頼み、彼のバルコニーで向かい合ってお茶を飲んだ。
「…………。」
気まずく思い、お茶を口に含みはしたが、カップから口を外せずにいた。
彼はこちらを見つめたまま何も言わない。
「あの…何かご不便をおかけしましたか?」
私がそういうと彼は首を横に振った。
「いや、君はよく働いてくれている。他の使用人からもよく耳にする。」
自分が認められたことに嬉しく思った。
「君に頼みがあるんだ。」
あまりの居心地の悪さに深々とお辞儀をして立ち去ろう彼の横を通り過ぎようとした時、薔薇の花束が落ちた。
気がつくと、腰を引き寄せられ彼の顔間近で見つめ合う様に向き合っていた。
抵抗してみるがびくともせず、彼と見つめあったまま時が止まった気がした。
「………。」
「……………。」
どれくらいそうしていただろうか、急に腰に回っていた彼の手が離れた。
「…すまない…。」
そういうと彼は私の横を通り過ぎて立ち去っていった。私は気がつくと激しい心臓を手で押さえ込んだまま、その場にしゃがみ込んだ。
彼はなぜ今になってこんな事をするのだろうか。諦めようと必死になる私にまるで未練でも残すかの様に…。
彼の気持ちがわからない。
戸惑う心を深く息を吸い、吐いて落ち着かせていった。
次の日の朝、枕元に一輪の黄色い水仙が置かれていた。
…これは…。
昔、本で見たことがある。外国に水仙の生殖する国から来た花だ。手に入れるには難しい事も…。
でも何気に覚えているのは、この花言葉故だった。
もう一度愛してほしい。
誰からの贈り物かわからないが、その花をお気に入りの本の中に挟んだ。
身支度を整えて自分の担当の仕事場へと向かう。私が任されているのは、皿洗い兼雑用だ。
一緒に働く人達は話もせずきびきびと働いている。だからといって仲が悪いわけではない。
私が皿を洗い終えた頃、メイド長から頼み事をされた。彼の部屋の掃除担当が急用の為、人手が不足しているとのこと。
私は急ぎ掃除担当をしている人の所へ向かった。着いた頃には皆先に始めていた。私も続いて手を動かす。
そして掃除が終わった。担当の使用人からお礼を言われて笑顔で返した。自分の担当に戻ろうと、最後に部屋を出たその時、彼が部屋に戻ってきた。
昨日の事もあり、お辞儀をして去ろうとした時。
「少し…いいか?」
呼び止められ私は振り向くと、彼はこちらを見つめていた。
「はい…。」
他の使用人に少し遅れると持ち場の人への伝言を頼み、彼のバルコニーで向かい合ってお茶を飲んだ。
「…………。」
気まずく思い、お茶を口に含みはしたが、カップから口を外せずにいた。
彼はこちらを見つめたまま何も言わない。
「あの…何かご不便をおかけしましたか?」
私がそういうと彼は首を横に振った。
「いや、君はよく働いてくれている。他の使用人からもよく耳にする。」
自分が認められたことに嬉しく思った。
「君に頼みがあるんだ。」
0
あなたにおすすめの小説
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
もう我慢したくないので自由に生きます~一夫多妻の救済策~
岡暁舟
恋愛
第一王子ヘンデルの妻の一人である、かつての侯爵令嬢マリアは、自分がもはや好かれていないことを悟った。
「これからは自由に生きます」
そう言い張るマリアに対して、ヘンデルは、
「勝手にしろ」
と突き放した。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
薫る袖の追憶を捨て、月光の君に溺愛される
あとりえむ
恋愛
名門の姫君・茜は、夫の高彬に蔑まれ、寂れた離れで孤独な死を迎えた……
けれど意識が途切れた瞬間、視界を埋め尽くしたのは命を削って輝く緋色の夕映え。
目が覚めると、そこは高彬との婚約が決まったばかりの十五歳の春に戻っていた。
「二度目の人生では、誰のことも愛さず、ただあの方の幸せだけを願おう」
茜は、かつて自身の孤独を救ってくれた「最推し」の東宮・暁を、未来の知識で密かに支えることを決意する。
執着を捨て、元夫に無関心を貫く茜。
一方、高彬は自分に興味を失った茜の価値に気づき、今更遅い後悔に狂い始めるが……。
「見つけた。お前は俺の、運命の番だ」
正体を隠して東宮を支えていたはずが、冷徹な暁に見出され、逃げ場のないほどの執着と溺愛を注がれることに。
平安の雅な風情の中で描かれる、逆転と救済の物語。
最後は、二人が永遠の契りを交わす和歌で幕を閉じます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる