婚約破棄されても貴方が好き

はなおくら

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 私が返答をしてからまた沈黙で気まずい雰囲気が流れてきた。

 あまりの居心地の悪さに深々とお辞儀をして立ち去ろう彼の横を通り過ぎようとした時、薔薇の花束が落ちた。

 気がつくと、腰を引き寄せられ彼の顔間近で見つめ合う様に向き合っていた。

 抵抗してみるがびくともせず、彼と見つめあったまま時が止まった気がした。

「………。」

「……………。」

 どれくらいそうしていただろうか、急に腰に回っていた彼の手が離れた。

「…すまない…。」

 そういうと彼は私の横を通り過ぎて立ち去っていった。私は気がつくと激しい心臓を手で押さえ込んだまま、その場にしゃがみ込んだ。

 彼はなぜ今になってこんな事をするのだろうか。諦めようと必死になる私にまるで未練でも残すかの様に…。

 彼の気持ちがわからない。

 戸惑う心を深く息を吸い、吐いて落ち着かせていった。

 次の日の朝、枕元に一輪の黄色い水仙が置かれていた。

 …これは…。

 昔、本で見たことがある。外国に水仙の生殖する国から来た花だ。手に入れるには難しい事も…。

 でも何気に覚えているのは、この花言葉故だった。

 もう一度愛してほしい。

 誰からの贈り物かわからないが、その花をお気に入りの本の中に挟んだ。

 身支度を整えて自分の担当の仕事場へと向かう。私が任されているのは、皿洗い兼雑用だ。

 一緒に働く人達は話もせずきびきびと働いている。だからといって仲が悪いわけではない。

 私が皿を洗い終えた頃、メイド長から頼み事をされた。彼の部屋の掃除担当が急用の為、人手が不足しているとのこと。

 私は急ぎ掃除担当をしている人の所へ向かった。着いた頃には皆先に始めていた。私も続いて手を動かす。

 そして掃除が終わった。担当の使用人からお礼を言われて笑顔で返した。自分の担当に戻ろうと、最後に部屋を出たその時、彼が部屋に戻ってきた。

 昨日の事もあり、お辞儀をして去ろうとした時。

「少し…いいか?」

 呼び止められ私は振り向くと、彼はこちらを見つめていた。

「はい…。」

 他の使用人に少し遅れると持ち場の人への伝言を頼み、彼のバルコニーで向かい合ってお茶を飲んだ。

「…………。」

 気まずく思い、お茶を口に含みはしたが、カップから口を外せずにいた。

 彼はこちらを見つめたまま何も言わない。

「あの…何かご不便をおかけしましたか?」

 私がそういうと彼は首を横に振った。

「いや、君はよく働いてくれている。他の使用人からもよく耳にする。」

 自分が認められたことに嬉しく思った。

「君に頼みがあるんだ。」





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