婚約破棄されても貴方が好き

はなおくら

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「アドリア…いえ…小侯爵様……。」

 私の言葉に彼は顔を少し歪ませた。それから一つ息を吐き口を開いた。

「……貴方が来る事を聞いた時から、覚悟はしていましたが…。」

 私は目を見開いて驚いた。彼は私が何のためにここにきたのか気づいていたのだ。そのことに涙が溢れてきた。

「も…申し訳ありません…。友人である貴方を振り回して…ついには離れようとする身勝手を…。」

「………。」

 彼から返事はない。

「…ですが…私は貴方に対して大切な友人としてしか…見ることができません。」

 涙が後から流れては落ちていくが一つ大きく息を吸い込みアドリアの目を見て笑って言いたかった事を口にした。

「ありがとう…。いつも味方でいてくれて…。貴方が私を大切に想ってくれたから私は今幸せになれています。だからこそ今度は私は貴方に……っ……貴方に幸せになってほしい‼︎」

 いい終わるや否や目を閉じて涙が止まれと目を強く閉じた。

 アドリアから何も返事がない。

「…っ…っ……‼︎」

「………。」

 お互いにまた静寂が立ち込める。ただ泣き声を抑えようとするわたしの音がこだまする。

「……へへっ……。貴方は私を優しいと言ってくれますが…貴方の方こそ誰よりも心の優しい人です…。」

 顔を上げるとアドリアは赤い目をしていつものような優しい笑みを浮かべて口を開いた。

「貴方は私に助けられているといいますが、私も貴方に助けられてきました。貴方が笑うと私も心が温かく満たされた…。私にとって貴方は光その者でした。」

 アドリアの言葉に居た堪れなくなる。彼が評価してくれるほどの人間ではない。

「私はそんな人間ではありません…。」

 わたしがそういうと彼は首を横に振った後、体を震わせながら強くはっきりと言った。

「これからは私も貴方を友人として大切に思います。そして…貴方が願ってくれたように私も大切な人を見つけることにします。」

 そう言い切った彼の顔は、どこか切なそうで、でも何か吹っ切れた顔をしていた。

 2人落ち着いた頃、アドリアの邸を出た。アドリアも最後の別れのように、わたしの見送りに出てきてくれた。

 振り向き彼に何か言おうと口を開こうとした瞬間…。

 馬車が目の前に止まるや否や、アレクが飛び出てきた。

「アレク様っ⁉︎」

 驚き彼の顔を凝視していると、彼は私を抱きしめた後、私を強引に馬車に乗せた。

 そしてアレク様とアドリアは真顔をお互いの顔を見ていた。

 どれくらいの時があったのか、アレク様が頷くと、アドリアの顔はいつもの笑顔に戻っていた。

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