婚約破棄されても貴方が好き

はなおくら

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「ジェニ…もう君を傷つけたりしない……結婚してほしい…。」

 顔を上げると、顔を真っ赤にしている彼の姿に嬉しくなる。

「はい…もう離さないで下さい。」

 わたしは微笑んで彼の顔を見上げた。すると瞼に水滴がぽつり、ぽつりと落ちてきた。

 目の前では彼が涙を流していた。わたしはおかしな事を言ったのかと慌てて彼の顔に触れると、アレク様はわたしの触れている手を添えて力強く握った。

 そこには私を離さないでいてくれると言う強い覚悟のようなものを感じ取れた。

 そして幸せな日常は続いている。婚約式の準備に2人で話し合いどんな会場にするのか、料理や飲み物、衣装は何色にするのか、2人で決めていくと楽しくて時間があっという間に過ぎていた。

 婚約式の当日になっていた。緊張した面持ちで扉の前に立っている。会場の中からは、盛大な人の声などが聞こえて来る。

 心臓の音をなんとか鎮めようと、呼吸の音が荒くなっている気がする。

 そんな私にアレクは隣に立ち笑って、微笑みかけてくれる。

「大丈夫。僕がいつでも君についてるよ…心配しなくていい…。」

 彼の顔を見つめるとさっきまでの沈んだ気持ちが不思議と明るくなる。

 このまま彼に身を任せてしまいたくなるほど甘えたくなるが、彼に恥を欠かせたくないと自分を奮い立たせて、彼の腕に少しだけ甘えて強く握った。

 彼もそんな私の仕草をわかってくれるかのようにぎゅっと手を握ってくれている。

 そしていよいよ扉が開く時、もう何を言われても毅然としてようと前を見据えた。

 それにこの式の後、彼に伝えたいこともあった。その事を考えると嬉しくて自信がついてくる。

 彼と一歩踏み出した。目の前の来賓達は私たちを見て、祝福する顔をする者、あからさまに嫌な顔をする者もいた。

 でも自然と何も気にならない。隣にアレク様がいてくれるからだろう。

「皆さま今日お集まりいただき感謝します。この度、世間を騒がしてしまっている自覚はありますが、一度離れて彼女の大切さを感じ取ることができました。どうか祝福していただきたい。」

 そういうと周りからの人々の拍手が帰ってきた。

 それからは、来客の挨拶やらと目まぐるしく一つ一つ気にしていられないほどだった。

 そんな時、急に目眩が起きた。

「ジェニっ‼︎」

 アレク様が慌ててわたしの体を支えてくれた。

「大丈夫です。少し疲れただけです、お気になさらずに…。」

「いや、君に何か有れば正気ではいられないだろう。」

 アレク様はそういうと言葉巧みに来賓に挨拶を済ませて先に退室をすることとなった。
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