責任を取らなくていいので溺愛しないでください

澤谷弥(さわたに わたる)

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1巻

1-2

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「寝起きだから、っていう意味じゃないよ。そのさ、あからさまな営みの痕、見せつけながら食堂に行くわけ? もう少し首元が隠れるような服にしないとダメだよ。さすがに、そのワンピースはダメダメ」
「へ?」

 シャンテルにはローガンの言っている意味がわからない。

「シャン。まだ寝ぼけてるよね。あのさ、昼ご飯はなにかもらってくるからさ。とりあえず熱いシャワーでも浴びなよ」

 ローガンに背を押され、シャンテルはまた室内へと逆戻りする羽目になった。

(え、ものすごくお腹が空いているんだけど……。ご飯、ご飯……、食べられないの?)

 だが彼は、食事を持ってきてくれるとも言っていた。
 ローガンを信じつつも、彼から言われたことが気になった。それを確認するためには浴室へと向かうしかない。
 漆黒騎士団が所有する建物の個人部屋には、浴室とトイレがそれぞれ備え付けられている。それは、彼らの任務が特殊だからだ。昼夜問わない任務へ影響が出ないように、またほかの者たちに本当の姿を悟られないようにという配慮からである。
 ちなみに、黄金や白銀騎士団たちの宿舎は、風呂トイレが共同である。

「うぎゃ」

 シャンテルはつい、醜い声を出してしまった。
 ワンピースを脱いで、下着姿になった自分に絶句する。
 お腹や胸、そして首元、挙句太腿にまで残されている赤い痕の数々。間違いなく背中もやられているだろう。胸にいたっては、くっきりと歯型までついていた。
 忘れたかった記憶。忘れられなかった記憶。
 この鏡に映っている状況が、はっきりとそれを鮮明に思い出させてくれる。忘れたかったことをまざまざと思い出すことすら悔しい。
 ため息しか出てこない。
 ここはローガンに言われたとおり、熱いシャワーでも浴びて、熱いお茶を飲むのが気持ちを切り替える一番の方法なのだろう。
 そう思いながらも、なぜかあの男のことが頭に浮かんでくる。同時に、きゅっと下腹部がうずく。

『レイだ。君にはそう呼んでほしい』

 レイ……。レイが付く名前。
 レイモンド、レイフ、レイトン、アシュレイ、トレイシー、クレイ、レイン……
 シャンテルが思い浮かぶレイという愛称の男性の名前はそれくらいだ。
 あの見目のよさと身に着けている物から推測するに、恐らく高貴なお方だろう。
 そこで心当たりがあるとしたらレイトンである。だが彼は、王立図書館の司書であり、あんなワイルドイケメンではない。さっぱり顔のイケメンだ。
 となれば、アシュレイという名の男が白銀騎士団にいたような気がする。ただ地方担当だと記憶している。ほかにも、レイが愛称の男性はいただろうか。
 むしろ、そのレイという名前そのものが偽名かもしれない。シャンテルのシェインと同じように。
 しかし、あの状況であの男には偽名を名のる余裕もメリットもなかったはず。間違いなくレイは彼の愛称だ。

(こうなったら、国内関係者の名簿を全部確認するしかないかな……)

 そういった機密文書を閲覧できるのも、漆黒騎士団の特権である。
 シャンテルはきゅっとシャワーを止めて、肌に残った水滴をタオルで吸い取った。水滴は肌の上で玉になっている。
 昨日というよりも今日だろう。散々レイにもてあそばれた身体。今すぐにでも消したい情事の痕。
 消えそうにないけれど、だからってこれをこのままにして職場には行けない。これらを隠す服が必要だろう。幸い、職場での制服がそれに該当しそうだ。
 下着姿で浴室から出ると、クローゼットの中から黒色の事務官服を取り出した。首元まですっと覆われた襟、そしてロングスカート。襟は一番上までボタンを留めてしまえば、先ほどの痕はすべて隠れる。
 髪の色も、今は本来の銀色に戻っている。
 コンコンコン、コンコンコン――
 一定のこのリズムで扉を叩くのは、間違いなくローガンだ。扉を叩く音だけで、彼だとわかる。

「はいはーい」

 先ほどとは変わって、シャンテルは陽気な声と共に扉を開けた。そこには昼食を手にしたローガンがいた。だが、彼女は思わず視線を横にずらす。彼の横にもう一人、別の男性が立っていたのだ。

「げ。ガレット団長」

 シャンテルはつい、そう声を漏らしてしまった。
 ローガンの隣にいたのは、漆黒騎士団の団長を務めるガレット・グーチである。
 ローガンは爽やかな男性であるが、このガレットは中性的な男性だ。鈍色の髪は肩につくほどの長さで、こげ茶色の瞳もどこか艶めかしい。彼ほど妖艶という言葉が似合う男性もいないだろう。
 だがシャンテルには、彼の色めく瞳が恐ろしく見えた。

「ローガンには嬉しそうな声で答えて、私には『げ』っていうのは失礼じゃないのか?」

 恐ろしく見えたのではない。本当に恐ろしいのだ。なぜなら、ガレットは笑っているように見せかけて目は笑っていない。笑顔に見えるのに、怒っているようにも見える。

「ごめん、シャン。食事をとりに行ったらさ、団長に見つかった」
「見つかった、という表現もいささか聞き捨てならないが」

 ガレットの口の端がピクリと動いた。これは、彼が間違いなく怒っている証拠でもある。

「はいはぁい、私もいるわよ」

 そのガレットのうしろからひょっこりと顔を出したのは、漆黒騎士団の副団長であるアニトラ・サンド。少しだけ癖のある赤茶の髪を一つに結わえており、明るい茶色の目は楽しそうに笑っていた。

「あれ? アニ姉さん、今日はこちらなんですか?」

 シャンテルはアニトラのことを『アニ姉さん』と呼んで慕っていた。
 普段は事務官として働いている漆黒騎士団の騎士たちだが、このアニトラだけは別の場所で『便利屋』として働いている。

「うん、そうなのよ。で、食堂に行ったらローガンが珍しく一人でしょう? その割には二人分の食事を持っているし。これはなにかあるなと思って、ついてきちゃった」

 シャンテルは昼食をあきらめようと思った。無言で扉を閉めようとした。それができなかったのは、ガレットが足をすかさずその扉の隙間に入れてきたからだ。

「シャンテル。昼食をとりながら、ゆっくり話を聞かせてもらおうか。ほら、君の好物もたくさんもらってきたぞ」
「いえいえいえ、お腹、いっぱいですから」

 シャンテルは無理やり扉を閉めようとするが、ガレットの足が引っかかって閉まらない。そうやって暴れて押し問答をしているうちに、シャンテルのお腹は盛大にグルルルと鳴きだす。

「君は正直者だな。腹、減ってるんだろ? 減ってるよな?」

 ガレットは、美味おいしそうな食べ物をシャンテルに見せつけてくる。もちろん、不敵な笑みも忘れていない。

美味おいしいデザートもあるわよ?」

 アニトラまでもが、そうやってデザートを見せてくる。彼女が手にしているデザートは、シャンテルが好きなものばかりだ。

「シャン。あきらめたほうがいいよ」

 ローガンが首を横に振っていた。

(すべてはローガンのせいじゃないのよ)

 ジロリと彼を睨むシャンテルだが、ローガンはシャンテルと目を合わせようとしない。
 どうやら彼も、やらかしてしまったという自覚があるようだ。
 あきらめるしかないのだろう。このガレットという男からは逃げることができない。
 仕方なくシャンテルは三人を中に招き入れた。

「色気のない部屋だな」

 ガレットがぽつりと一言漏らす。

「この宿舎なんてどこも似たようなものではないですか」

 漆黒騎士団の個人部屋。浴室トイレは備え付きだが、それ以外はベッドとクローゼットと、食事用のテーブル、そして書き物をするための机しかない。幸い、食事用のテーブルには椅子が三つある。これは、シャンテルが同僚とここでたまに食事をしたり、おやつを食べたりするからだ。その同僚はローガンだったり、そうじゃなかったりする。
 書き物用の机から椅子をずりずりと引きずって、空いているところに置いた。四人で食事するには、少し狭いテーブルだ。

「シャンテル、お誕生席はお前に譲ってやる」

 そんなガレットの提案により、シャンテルはガレットとローガンの間という、またもや逃げられない席になってしまった。そして、目の前にはアニトラがいる。
 シャンテルが時間稼ぎのつもりでお茶をれようとした。

「いいよ、シャン。ボクがれるから」

 ローガンがポットを奪ってしまう。
 九十度隣から突き刺さるガレットの視線が痛い。なにも言わず、黙っているところも怖い。
 手際よくローガンがお茶と食事を並べる。

「では、いただこうか」

 両手を合わせたガレットの声が恐ろしい。

「さて、シャンテル。昨日は潜入調査だったはずだが、どうやら決められた時間に部屋へ戻ってくることができなかったようだね。私たちは君が相手に見つかってしまったのかと思って、焦っていたのだよ」

 妖艶に微笑み、パンをちぎりながら、ガレットが口を開いた。
 彼のように漆黒騎士団はわりと見目が整った人物が多い。だが、印象に残るような整い方ではなく、どこにでもいるような見目のよさである。これにも理由があり、あまり目立つ容姿だと、潜入調査の時に相手の印象に強く残ってしまうからだ。
 だから『あ、あの人、かっこよくない?』と街ですれ違う女性にちょっとうわさされる程度の見目のよさの人物が多く、シャンテルもちょっと可愛い程度の娘である。街に出れば『ちょっと、あの娘。可愛くね?』と言われることは、たびたびある。
 残念ながらシャンテルは美しいという形容詞よりは可愛いが似合う容姿をしている。もう少し年を重ねれば、美しい女性になるのかもしれないと周囲は思っていた。
 それでも、シャンテル自身はその評価に気づいていない。いたって普通のどこにでもいる女性だと自身を思っている。
 だからこそ危うい。

「すみません」

 すぐさまシャンテルは謝罪した。
 ガレットに対して言い訳をしてしまうと、たいてい話が五倍になって返ってくる。ガレットからの話は素直に聞いて『はい』か『すみません』か『承知しました』で答えるにかぎるというのが、漆黒騎士団の中でも有名な話だ。
 それに今回のガレットの指摘はごもっともである。潜入調査が相手に知られて、そのまま捕らえられてしまうという話も、耳にするからだ。

「団長。どうやらシャンは別なところに捕まってしまったようです」

 パンをちぎって口の中に放り込んでいたローガンが、変化球を投げてきた。

(くそ、ローの奴。余計なことを言いやがって……)

 シャンテルは彼をジロリと睨んだ。
 ローガンは我関せずの態度である。変化球を投げるだけ投げたらあとは打つなり見逃すなり、なんなり好きにしろ、とのことのようだ。
 そんな彼は、規則的にパンをちぎっては、口の中に放り込んでいた。
 シャンテルは唇をみしめながら、ローガンをじっと見つめる。口元をゆがめ、ついでに鼻のほうまでゆがめた。顔の見た目にこだわっている場合ではない。それだけ『余計なことは言うんじゃないわよ』とローガンへ訴えている。
 肝心のローガンは、シャンテルの気持ちを無視してパンを咀嚼そしゃくしていた。

「ほほう。別なところに捕まった、だと? シャンテルが? それは興味深いね」

 優雅にカップを傾けてお茶を飲むガレットは、口調も穏やかだ。
 だけど、腹の底でなにを企んでいるかはわからない。
 次に口を開くべき人物は誰なのか。それの探り合いだった。
 ここは間違いなくシャンテルなのだが、それを打ち破ったのはローガンである。

「見せたほうが早いんじゃない?」
「げほっ」

 ローガンの言葉に、シャンテルは危うくパンを喉に詰まらせるところだった。

「見せるって」

 唇の周りを手の甲で拭いながら、シャンテルは言った。

「その襟元。ボタン外せばいいだけじゃん。さっきはあれだけボクに見せつけたくせに」
「あれは、不可抗力だって」
「ほう。ローガンには見せることができて、私にはできないと言うのだね」

 テーブルの上に肘をついて両手を組んだガレットが怖い。

「団長。食事中です。テーブルに肘をついてはいけません」

 すかさずシャンテルはそんなことを口にして誤魔化す。だからといって、誤魔化されるようなガレットでもない。
 彼はシャンテルに視線を向け、ふたたび艶やかに笑った。

「あら、シャンテル。自分で見せることができないと言うのであれば、私が手伝うわよ。女性同士ですもの。なにも問題はないわよね」

 目の前のアニトラがにっこりと笑う。こちらは可愛らしい笑みである。だけどシャンテルは知っている。この笑顔に隠されている本当の恐ろしさを。
 すっとアニトラが席を立つと、シャンテルの腕を引っ張り、椅子から立つようにと促した。
 シャンテルはアニトラを見上げ、ぶんぶんと首を横に振るが、アニトラの目は笑っていない。
 渋々と席を立ち、浴室へと連れていかれて向かい合う。
 アニトラの手が伸びてきて、有無を言わさずシャンテルの襟元のボタンをゆっくりと外していく。
 シャンテルがされるがままになっているのは、ここで抵抗するものならば、ボタンを外すだけでは済まされないと思ったからだ。
 ぎゅっと、両目を強くつぶった。

「これは……」

 アニトラのその言葉に続く言葉など、容易に想像できる。

「見事にやられちゃったみたいね」

 だけど、その口調はなにやら楽しそうにも聞こえた。実際、このアニトラという女性は楽しんでいる。そして彼女は襟元だけでなく、シャンテルの胸元、お腹の辺りまでボタンを外し始めた。
 シャンテルは抵抗できない。

「あらぁ。これはすごいわよ」

 隣の部屋にいるガレットとローガンにも聞こえるようなアニトラの声が、浴室に反響した。

「じゃ、ボタンを留めて。むこうに戻りましょう」

 アニトラは笑っているが、シャンテルは笑えない。
 きっちりとした詰襟の第二ボタンを外したまま、シャンテルは席に戻った。一番上まできっかりと留めようと思ったのに、アニトラがそれを制したのだ。

「ごほっ」

 戻ってきたシャンテルを見るとすぐに、ローガンがむせた。
 第二ボタンまで外しているから、鎖骨の部分まではっきりと見えているはずだ。たったそれだけの場所であるにもかかわらず、昨日の営みの情事が色濃く残っている。
 アニトラには見られてしまったが、下着の下にも赤い痕は残っていた。

「いや、ここまでやられると、見事としか言いようがないな。もしかして、背中もか?」

 ガレットが手を伸ばして、ブラウスを下からめくると、背中の下側を確認し始めた。

「ちょっと、ガレット。それ以上見たら、私がやるからね」

 一応アニトラもシャンテルのことを気遣っているようだ。この場合の『やる』の意味がなにを指すのか、深く問い詰めるのはやめておくのが無難である。

「いや、これは。君は、本当にやられたんだな。なにをやってるんだ? まあ、ナニだろうけど。とりあえず、ご愁傷様とだけ言っておく」

 ボタン、留めてやろうか? とガレットが言ってきたのでシャンテルはそれを丁重にお断りした。自分でボタンを一番上までしっかりと留める。

「念のため尋ねるけど、合意の上よね? 襲われたわけではないよね?」

 アニトラが不安そうに目を細める。

「そうだ、アニトラの言うとおりだ。無理強いされても、抵抗できるだけの力はあるよな? で、相手は誰だ?」

 ガレットが一番肝心なところを尋ねてきた。

「まあ、合意の上というか。流れにデロデロと流されたというか」

 あははは、とシャンテルは笑いながら答えるしかない。

「ごほっ、ごほっ」

 まだローガンはむせている。

「相手は?」

 ガレットは続けた。その鋭い視線を、シャンテルから逸らそうとはしない。

「言わなきゃ、ダメですかね?」

 彼女は顎を引き、上目遣いでガレットを見た。

「シャンテル。君も漆黒のメンバーだからね。私には君の男関係を把握しておく必要があるのだよ」
「はあ」
(そんなもんなの?)

 ローガンに助けを求めてみるけど、彼はいまだにむせている。
 目の前のアニトラに視線を向ければ、彼女はにんまりと笑みを浮かべている。
 ここにシャンテルの味方はいないようだ。むしろ、シャンテルが危うく朝を共に迎えそうになった相手が誰なのかに、興味を持っている人物しかいない。

「あの、いや……。実は……。知らないんですよね」
「がほっ」

 ふたたびローガンがむせた。どうやらとどめを刺してしまったらしい。彼は、ごほごほと激しく咳込せきこみ始めた。

「知らないって。シャンテル。君は行きずりの男性にささげたってことか?」

 ガレットは少し声を荒げた。

ささげたって? なにを?」

 シャンテルが尋ねた。

「あなた、処女だったわよね?」

 アニトラが口にする。だった――つまり過去形。

「えっと。まあ。行きずりの男性かと言われると、そうではないんですけど」
「では、知らない、というのはどういう意味だ」

 ガレットの目は怒りの色で満ちている。
 それを受け流すかのように、シャンテルは首を傾けた。
 知らないのは彼の名前。彼はシャンテルが潜入している酒場に、三日に一度訪れる準常連客である。

(あれ? むしろ知っていることって、それしかないかも)

 改めて考えると、彼について知っていることなどなにもなかった。

「えっと。相手はあそこの酒場に来ている客です。名前は、愛称がレイということくらいしか知りません」

 しかもその愛称も、身体を重ねてから教えてもらった。

「行きずりに該当するかしないかの判定が難しいラインだな」

 ガレットは顎に右手を当てる。

(え、そんな判定があるの?)

 シャンテルはアニトラに助けを求めるが、彼女は笑いながらパンをちぎり、口の中へと放り込んでいる。

「はぁ……」

 そこでようやくローガンが息を吐き、ゆっくりとお茶を飲む。

「シャンの朝帰りじゃなくて深夜帰りにも驚いたけれど。相手が、名前も知らないような酒場の客っていうのも驚きだよね」

 そこでローガンはカップを置いた。

「でも、団長。相手の男は本気ですよ、それ」
「ああ、それは私も思っていたところだ」
「しかも、嫉妬深そうな感じもする。普通、そこまでやる? 処女相手に」

 ガレットとローガンが盛り上がり始めている。

(さっきから、処女処女うるさい)

 心の中で二人に文句を言う。

「あー、そう言えば」

 口元でパンを止めて、シャンテルは天井を見上げた。彼女が視線を上方向にずらすのは、なにかを思い出している時の仕草だ。

「責任は取る、と言われたような」
「なんとなくわかるけど。なんの責任、って聞きたいくらいだよね」

 ローガンはあきれており、目を細くしてシャンテルを睨みつけている。

「え、やっぱり責任を取る、ってそういう意味? それ以外の意味を考えたいんだけど」

 驚いたシャンテルが声をあげる。

「そういう意味じゃなかったらどういう意味だよ。そのレイって男、確実にシャンのことを狙ってたでしょ。確信犯だよね。なに、まんまと食われちゃってるのさ」
「ローガンの言っていることも、あながち間違いではないだろうな。相手が君の潜入先の酒場のやや常連客というのであれば、彼は君を知っていたということだ。何度か目にするうちに、君にれたという可能性は充分に考えられる」
「私に、れる? そんな要素、どこにありますかね?」
「あら、やだ。自覚がないって恐ろしいわ」


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