あやかし夫(予定)の溺愛~真夏の雪

澤谷弥(さわたに わたる)

文字の大きさ
12 / 26

11.

 普通の人間とあやかしの間に産まれた子は、霊力ちからが大きいと言われている。本来であれば、人間とあやかしでは子を授かることができないから。子を授かったことそのものが奇跡であり、その奇跡の先にあるのが霊力ちからの強い子なのだとか。

 私にはまったく知らなかった世界だ。

 そんなキャラ文芸に出てくるようなあやかしの健太郎さんは『雪男』と呼ばれる種族とのことだった。

 雪男って、毛むくじゃらのイエティのイメージしかないんだけど。と言ったら、似たようなものだと笑われた。どうやら、健太郎さんのお母さまが『雪女』なのだとか。

 まったくもって、この世のあやかし業界についてわからない私だけれど、健太郎さんとお義母かあさまの話を聞く限り、財政界を牛耳っているほとんどがあやかしなのだそうだ。

 彼らは、人間とは異なる霊力ちからがあるため、商売やら何やらに才能を発揮する。スポーツ選手の中にもあやかしはいるらしい。そうやって、普通の人間の世界に溶け込んでいる。

 基本的には、普通の人間とあやかしは交わることはない。だから、私があやかしについて知らなかったのはそれが理由。あやかしは人間を知っているけれど、人間はあやかしを知らないという、一方的な片思い的な関係にも見える。

 基本的には異種婚と呼ばれるものはない。あやかしはあやかしであることを隠しているし、あやかしが結婚する相手はあやかしなのだとか。

 そもそも、二つの種族の間では子を授かることができないのだから、お付き合いはするけれども、結婚という話になるとあやかしのほうから離れていくらしい。
 もしくは、あやかしがあやかしであることを隠して、結婚をする者もいるらしいのだが。その辺は愛しあった二人の話なので、私が口を出すようなことではない。

 そんなわけで、私と健太郎さんの関係は異例中の異例。

 異例中の異例だから、それを面白く思わないあやかしから狙われる可能性がある、というのが健太郎さんとお義母さまの話だった。

 本当に、本の中の世界かと思った。もしかしたら、本の中の世界のほうが現実なのかもしれない。真実は小説より奇なりとは、まさしくこのことか。と、何度も思った。

 健太郎さんが淹れてくれたそば茶が、鼻腔を撫でていく。どこか香ばしくて、落ち着く香りだ。
 熊さんの顔型のクッションを抱きかかえるようにして、ふかふかのソファに座っていた私は、ここのところ悪阻が酷い。

 今日はとうとう会社を休み、お義母さまに付き添われて、病院で点滴を打ってきたところ。そして、健太郎さんは午後になって慌てて会社から戻ってきたところだった。

 点滴のおかげでだいぶ気分は良くなった。だから健太郎さんから、あやかし講義を受けていたのだが。
 本来ならば信じられないような話であるのに、あまりにも健太郎さんが真面目に話をするので、すとんと信じてしまった。
感想 8

あなたにおすすめの小説

確かに愛はあったはずなのに

篠月珪霞
恋愛
確かに愛はあったはずなのに。 それが本当にあったのかすら、もう思い出せない──。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

ど天然で超ドジなドアマットヒロインが斜め上の行動をしまくった結果

宝月 蓮
ファンタジー
アリスはルシヨン伯爵家の長女で両親から愛されて育った。しかし両親が事故で亡くなり叔父一家がルシヨン伯爵家にやって来た。叔父デュドネ、義叔母ジスレーヌ、義妹ユゲットから使用人のように扱われるようになったアリス。しかし彼女は何かと斜め上の行動をするので、逆に叔父達の方が疲れ切ってしまうのである。そしてその結果は……? 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。 表紙に素敵なFAいただきました! ありがとうございます!

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む

浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。 「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」 一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。 傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語

【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。 知らない生物、知らない植物、知らない言語。 何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。 臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。 いや、変わらなければならない。 ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。 彼女は後にこう呼ばれることになる。 「ドラゴンの魔女」と。 ※この物語はフィクションです。 実在の人物・団体とは一切関係ありません。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)