28 / 30
パーティのエスコート(2)
しおりを挟む
その日の夜は珍しく、本当に珍しく、両親と兄が揃って帰宅した。卒業パーティがあるせいだと思われた。ルネが言った通り、卒業パーティは未来の魔導士と騎士の誕生を祝うためのパーティでもある。
騎士団長の父と、白魔導士団長の母は、間違いなく出席する。むしろ、しなければならない。それの準備も兼ねて帰宅してきたものと思われる。
夕飯の席で、ミレーヌは口を開いた。
「あの、お兄様。卒業パーティのことで、ご相談があるのですが」
「どうした? エドガーが、ミレーヌからお誘いが無いと嘆いていたが。それに関係することか?」
「いえ、違います。お兄様にエスコートをお願いしたい、という話です」
「ミレーヌ」とそこで口を挟んだのは母親。
「いくら兄のことが好きであっても、そこは婚約者と一緒に出席するものよ」
やんわりと言う。
「いえ、違います、お母様。お兄様にお願いしたいのは、私の友達のエスコートです」
「そうか、ミレーヌにも友達がいたのか」
と父親が感心する。
だから、なぜ友達がいないと思われているのだろうか。
「私だって、友達くらいいます」
そこでミレーヌは頬を膨らませた。
「友達とは、誰のことだ?」
マーティンが尋ねる。
「あ、シャノンです。魔導科の」
ミレーヌが答えると、母親が顔を輝かせた。
「シャノンって、あのシャノン? シャノン・メイビーよね?」
「はい」
「彼女ね。ものすごぉおおく優秀なのよ。ここ、十年に一人の逸材よ。あの第一皇子の婚約者候補に名前はあがったのだけれど、身分がどうのこうのって言って、上が猛反対。私としては、あの第一皇子の相手にはもったいないと思っていたから、ちょうどよかったわ。で、そのシャノンのエスコートにマーティンってことかしら?」
母親のマシンガントークの中には、ちょっと不敬罪に該当するところが含まれているのではないか、と思ったが、聞かなかったこととする。
「そうです」とミレーヌは頷き。
「お母様。シャノンがいじめられていたこと、ご存知でしたか?」
「まあ、うすうすわね。結局、妬みなのよね。こっちのほうで何か言っても、またその結果がシャノンに戻ってしまうし。どうしたらいいかわからなかったのよね。それは私の立場として情けないと思っている。でも、実力で見返してくれればいい、そう彼女に言うことしかできなかったわ」
「シャノン。屋上から突き落とされたんです」
「え? 初めて聞いたわ」
母親が驚く。
「ええ、誰にも言っていません。そのとき、シャノンを助けてくれたのがお兄様なのです」
と、なぜかミレーヌが胸を張る。
「よくやった、マーティン。騎士の鏡だ」
父親が口を挟んだ。
「シャノンが、お兄様の優しさと包容力に惚れたようです。そこで、できれば卒業パーティでエスコートをお願いしたい、と私に相談してきたわけです」
「マーティン、引き受けなさい。女性にそこまで言わせたのよ。断る理由はありませんよね?」
母親がものすごい形相で兄に言い寄っている。
マーティンの耳が少し赤く染まっている。
そしてさらに。
「今までマーティンの縁談を断ってきた甲斐があったわ」と、恐ろしいことを母親が呟いていたのしっかりとミレーヌは聞いてしまった。
父親はそれが聞こえていたのかいないのか、表情一つ変えなかった。
騎士団長の父と、白魔導士団長の母は、間違いなく出席する。むしろ、しなければならない。それの準備も兼ねて帰宅してきたものと思われる。
夕飯の席で、ミレーヌは口を開いた。
「あの、お兄様。卒業パーティのことで、ご相談があるのですが」
「どうした? エドガーが、ミレーヌからお誘いが無いと嘆いていたが。それに関係することか?」
「いえ、違います。お兄様にエスコートをお願いしたい、という話です」
「ミレーヌ」とそこで口を挟んだのは母親。
「いくら兄のことが好きであっても、そこは婚約者と一緒に出席するものよ」
やんわりと言う。
「いえ、違います、お母様。お兄様にお願いしたいのは、私の友達のエスコートです」
「そうか、ミレーヌにも友達がいたのか」
と父親が感心する。
だから、なぜ友達がいないと思われているのだろうか。
「私だって、友達くらいいます」
そこでミレーヌは頬を膨らませた。
「友達とは、誰のことだ?」
マーティンが尋ねる。
「あ、シャノンです。魔導科の」
ミレーヌが答えると、母親が顔を輝かせた。
「シャノンって、あのシャノン? シャノン・メイビーよね?」
「はい」
「彼女ね。ものすごぉおおく優秀なのよ。ここ、十年に一人の逸材よ。あの第一皇子の婚約者候補に名前はあがったのだけれど、身分がどうのこうのって言って、上が猛反対。私としては、あの第一皇子の相手にはもったいないと思っていたから、ちょうどよかったわ。で、そのシャノンのエスコートにマーティンってことかしら?」
母親のマシンガントークの中には、ちょっと不敬罪に該当するところが含まれているのではないか、と思ったが、聞かなかったこととする。
「そうです」とミレーヌは頷き。
「お母様。シャノンがいじめられていたこと、ご存知でしたか?」
「まあ、うすうすわね。結局、妬みなのよね。こっちのほうで何か言っても、またその結果がシャノンに戻ってしまうし。どうしたらいいかわからなかったのよね。それは私の立場として情けないと思っている。でも、実力で見返してくれればいい、そう彼女に言うことしかできなかったわ」
「シャノン。屋上から突き落とされたんです」
「え? 初めて聞いたわ」
母親が驚く。
「ええ、誰にも言っていません。そのとき、シャノンを助けてくれたのがお兄様なのです」
と、なぜかミレーヌが胸を張る。
「よくやった、マーティン。騎士の鏡だ」
父親が口を挟んだ。
「シャノンが、お兄様の優しさと包容力に惚れたようです。そこで、できれば卒業パーティでエスコートをお願いしたい、と私に相談してきたわけです」
「マーティン、引き受けなさい。女性にそこまで言わせたのよ。断る理由はありませんよね?」
母親がものすごい形相で兄に言い寄っている。
マーティンの耳が少し赤く染まっている。
そしてさらに。
「今までマーティンの縁談を断ってきた甲斐があったわ」と、恐ろしいことを母親が呟いていたのしっかりとミレーヌは聞いてしまった。
父親はそれが聞こえていたのかいないのか、表情一つ変えなかった。
117
あなたにおすすめの小説
王宮メイドは今日も夫を「観察」する
kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」
王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。
ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。
だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……?
※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。
【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない
金峯蓮華
恋愛
子供の頃から休みなく忙しくしていた貴子は公認会計士として独立するために会社を辞めた日に事故に遭い、死の間際に生まれ変わったらぐうたらしたい!と願った。気がついたら中世ヨーロッパのような世界の子供、ヴィヴィアンヌになっていた。何もしないお姫様のようなぐうたらライフを満喫していたが、突然、王太子に求婚された。王太子妃になんかなったらぐうたらできないじゃない!!ヴィヴィアンヌピンチ!
小説家になろうにも書いてます。
折角転生したのに、婚約者が好きすぎて困ります!
たぬきち25番
恋愛
ある日私は乙女ゲームのヒロインのライバル令嬢キャメロンとして転生していた。
なんと私は最推しのディラン王子の婚約者として転生したのだ!!
幸せすぎる~~~♡
たとえ振られる運命だとしてもディラン様の笑顔のためにライバル令嬢頑張ります!!
※主人公は婚約者が好きすぎる残念女子です。
※気分転換に笑って頂けたら嬉しく思います。
短めのお話なので毎日更新
※糖度高めなので胸やけにご注意下さい。
※少しだけ塩分も含まれる箇所がございます。
《大変イチャイチャラブラブしてます!! 激甘、溺愛です!! お気を付け下さい!!》
※他サイト様にも公開始めました!
【完結】好きになったら命懸けです。どうか私をお嫁さんにして下さいませ〜!
金峯蓮華
恋愛
公爵令嬢のシャーロットはデビュタントの日に一目惚れをしてしまった。
あの方は誰なんだろう? 私、あの方と結婚したい!
理想ドンピシャのあの方と結婚したい。
無鉄砲な天然美少女シャーロットの恋のお話。
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」
イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。
ある日、夢をみた。
この国の未来を。
それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。
彼は言う。
愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?
え?わたくしは通りすがりの元病弱令嬢ですので修羅場に巻き込まないでくたさい。
ネコフク
恋愛
わたくしリィナ=ユグノアは小さな頃から病弱でしたが今は健康になり学園に通えるほどになりました。しかし殆ど屋敷で過ごしていたわたくしには学園は迷路のような場所。入学して半年、未だに迷子になってしまいます。今日も侍従のハルにニヤニヤされながら遠回り(迷子)して出た場所では何やら不穏な集団が・・・
強制的に修羅場に巻き込まれたリィナがちょっとだけざまぁするお話です。そして修羅場とは関係ないトコで婚約者に溺愛されています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる