【R18】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私

澤谷弥(さわたに わたる)

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第七章(5)

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「それなら、眠れるように子守歌でも歌ってやろうか?」

 リネットが眠れないとき、ラウルはいつもそう言う。だが、彼の子守歌を一度も聴いたことがない。なぜなら、今までその提案を断っていたからだ。

「いえ、不要です。余計に眠れなくなりそうですから……」
「そうか、それは残念だな。俺の子守歌は、いつになったら披露できるのだろうか……」
「そうですね。赤ちゃんでも寝かしつけるときに歌ってはどうですか? って、なんで? え?」

 リネットの臀部に硬いものが当たっている。確認しなくてもこれはラウルのアレだとわかる。

「なんで、元気になってるんですか! 私、何もしてないですよね?」
「すまない……君が、赤ちゃんなんて言うから……。俺と君の赤ん坊は絶対にかわいい……」

 そこに反応するの? というのがリネットの率直な気持ちだった。

「それに……ここに移動するまでの二日間、俺は満足に君に触れることができなかった」

 彼は護衛を兼ねて同じ馬車に乗っていたのだ。それに毎朝の「おはようのキス」はかかせない。

「触れ合いは十分だったと思いますが……」
「俺にとっては不十分だ。リネットが足りない。いや、飢えている」

 かぷっと首元を甘噛みしてきた。

「ひゃっ……や、やめてください。外に声が聞こえるじゃないですか」

 外の声がテントにまで聞こえてくるのだ。その理屈を考えれば、テントの声だって外に聞こえるはず。

「俺だって、君のかわいらしい声を、他の男に聞かせたくない」
「では、やめましょう。あ、わかりました」

 そこでリネットはラウルの手を振りほどくようにして、身体の向きを無理やり変えた。

「こうやって一緒に寝ているからダメなんです。別々に寝ましょう」

 リネットがラウルの腕から這い出ようとするが、すぐに囚われる。

「ダメだ。リネットが足りないと言っているのに、別々に寝るなんて言うな。俺は君に飢え死にする」

 すんすんと匂いを嗅ぐようにして、首元に顔を埋め、先ほど噛んだ場所を舐め上げる。

「あっ……ダメ、触らないで……」

 ラウルがプレゼントしてくれたネグリジェは、いとも容易く彼の手を受け入れてしまう作りだ。いつの間にか、胸元のリボンは解かれていた。
「あっ……ん、んっ……」

 できるだけ声を出さないようにと、リネットは唇を噛みしめる。

「我慢しないで、そのかわいい声を聞かせなさい……」

 リネットはぶんぶんと頭を振る。こんなはしたない声は、誰にも聞かせたくない。

「リネット。安心しろ」

 するとラウルが手を伸ばして何かを取り、リネットに手渡した。

「エドガー殿が遠征の餞別にとくれた。防音魔法具らしい」
「あっ」

 薄暗くてもそれが何かはよくわかった。ラウルが言うように防音効果のある魔法具だ。この魔法具があれば、室内の声を外に漏れるのを防ぐ。密談なんかによく使われるのだが。

「なんでエドガー先輩が、ラウルさんに……?」

 むしろそれが疑問である。

「ん? エドガー殿も俺と君の関係を認めてくれているからだろう? リネットを泣かせたら許さないとまで言われたが?」

 これではラウルよりもエドガーのほうが保護者ではないだろうか。

「あ。左様ですか……」

 抑揚のない声で返事をしたリネットは、防音魔法具をラウルに返した。

「では、おやすみなさい」

 今までの恥ずかしい声も、外には聞こえていなかった。それだけでも安心だ。ささっと胸元をしまう。

「おい、待ちなさい」
「ひぃっ……」
「眠れないのではなかったのか……?」

 目も慣れてきたから、ラウルの顔がはっきりとしてきた。

「リネット。俺は君を愛している……」

 すべてを見透かすような真剣な眼差しを向けられ、リネットの心は弾む。

「は、はい……」

 トクトクと心臓は忙しない。

「俺の呪いが解けたら、君に言いたいことがある……」

 愛していると言ってくれただけで嬉しいのに、それ以上にどんな言葉があるのか。ラウルだからこそ、期待してしまう。

「わかりました。私も、早くラウルさんの呪いが解けるように、頑張ります」

 苦笑しつつもそう言ったリネットは、寝る気満々だ。
 むしろこのままラウルに流されてはならない。だが、そんな想いは容易く折れそうな自覚もある。だからさっさと寝てしまおうと、そう考えたのだ。

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