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第七章(5)
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「それなら、眠れるように子守歌でも歌ってやろうか?」
リネットが眠れないとき、ラウルはいつもそう言う。だが、彼の子守歌を一度も聴いたことがない。なぜなら、今までその提案を断っていたからだ。
「いえ、不要です。余計に眠れなくなりそうですから……」
「そうか、それは残念だな。俺の子守歌は、いつになったら披露できるのだろうか……」
「そうですね。赤ちゃんでも寝かしつけるときに歌ってはどうですか? って、なんで? え?」
リネットの臀部に硬いものが当たっている。確認しなくてもこれはラウルのアレだとわかる。
「なんで、元気になってるんですか! 私、何もしてないですよね?」
「すまない……君が、赤ちゃんなんて言うから……。俺と君の赤ん坊は絶対にかわいい……」
そこに反応するの? というのがリネットの率直な気持ちだった。
「それに……ここに移動するまでの二日間、俺は満足に君に触れることができなかった」
彼は護衛を兼ねて同じ馬車に乗っていたのだ。それに毎朝の「おはようのキス」はかかせない。
「触れ合いは十分だったと思いますが……」
「俺にとっては不十分だ。リネットが足りない。いや、飢えている」
かぷっと首元を甘噛みしてきた。
「ひゃっ……や、やめてください。外に声が聞こえるじゃないですか」
外の声がテントにまで聞こえてくるのだ。その理屈を考えれば、テントの声だって外に聞こえるはず。
「俺だって、君のかわいらしい声を、他の男に聞かせたくない」
「では、やめましょう。あ、わかりました」
そこでリネットはラウルの手を振りほどくようにして、身体の向きを無理やり変えた。
「こうやって一緒に寝ているからダメなんです。別々に寝ましょう」
リネットがラウルの腕から這い出ようとするが、すぐに囚われる。
「ダメだ。リネットが足りないと言っているのに、別々に寝るなんて言うな。俺は君に飢え死にする」
すんすんと匂いを嗅ぐようにして、首元に顔を埋め、先ほど噛んだ場所を舐め上げる。
「あっ……ダメ、触らないで……」
ラウルがプレゼントしてくれたネグリジェは、いとも容易く彼の手を受け入れてしまう作りだ。いつの間にか、胸元のリボンは解かれていた。
「あっ……ん、んっ……」
できるだけ声を出さないようにと、リネットは唇を噛みしめる。
「我慢しないで、そのかわいい声を聞かせなさい……」
リネットはぶんぶんと頭を振る。こんなはしたない声は、誰にも聞かせたくない。
「リネット。安心しろ」
するとラウルが手を伸ばして何かを取り、リネットに手渡した。
「エドガー殿が遠征の餞別にとくれた。防音魔法具らしい」
「あっ」
薄暗くてもそれが何かはよくわかった。ラウルが言うように防音効果のある魔法具だ。この魔法具があれば、室内の声を外に漏れるのを防ぐ。密談なんかによく使われるのだが。
「なんでエドガー先輩が、ラウルさんに……?」
むしろそれが疑問である。
「ん? エドガー殿も俺と君の関係を認めてくれているからだろう? リネットを泣かせたら許さないとまで言われたが?」
これではラウルよりもエドガーのほうが保護者ではないだろうか。
「あ。左様ですか……」
抑揚のない声で返事をしたリネットは、防音魔法具をラウルに返した。
「では、おやすみなさい」
今までの恥ずかしい声も、外には聞こえていなかった。それだけでも安心だ。ささっと胸元をしまう。
「おい、待ちなさい」
「ひぃっ……」
「眠れないのではなかったのか……?」
目も慣れてきたから、ラウルの顔がはっきりとしてきた。
「リネット。俺は君を愛している……」
すべてを見透かすような真剣な眼差しを向けられ、リネットの心は弾む。
「は、はい……」
トクトクと心臓は忙しない。
「俺の呪いが解けたら、君に言いたいことがある……」
愛していると言ってくれただけで嬉しいのに、それ以上にどんな言葉があるのか。ラウルだからこそ、期待してしまう。
「わかりました。私も、早くラウルさんの呪いが解けるように、頑張ります」
苦笑しつつもそう言ったリネットは、寝る気満々だ。
むしろこのままラウルに流されてはならない。だが、そんな想いは容易く折れそうな自覚もある。だからさっさと寝てしまおうと、そう考えたのだ。
リネットが眠れないとき、ラウルはいつもそう言う。だが、彼の子守歌を一度も聴いたことがない。なぜなら、今までその提案を断っていたからだ。
「いえ、不要です。余計に眠れなくなりそうですから……」
「そうか、それは残念だな。俺の子守歌は、いつになったら披露できるのだろうか……」
「そうですね。赤ちゃんでも寝かしつけるときに歌ってはどうですか? って、なんで? え?」
リネットの臀部に硬いものが当たっている。確認しなくてもこれはラウルのアレだとわかる。
「なんで、元気になってるんですか! 私、何もしてないですよね?」
「すまない……君が、赤ちゃんなんて言うから……。俺と君の赤ん坊は絶対にかわいい……」
そこに反応するの? というのがリネットの率直な気持ちだった。
「それに……ここに移動するまでの二日間、俺は満足に君に触れることができなかった」
彼は護衛を兼ねて同じ馬車に乗っていたのだ。それに毎朝の「おはようのキス」はかかせない。
「触れ合いは十分だったと思いますが……」
「俺にとっては不十分だ。リネットが足りない。いや、飢えている」
かぷっと首元を甘噛みしてきた。
「ひゃっ……や、やめてください。外に声が聞こえるじゃないですか」
外の声がテントにまで聞こえてくるのだ。その理屈を考えれば、テントの声だって外に聞こえるはず。
「俺だって、君のかわいらしい声を、他の男に聞かせたくない」
「では、やめましょう。あ、わかりました」
そこでリネットはラウルの手を振りほどくようにして、身体の向きを無理やり変えた。
「こうやって一緒に寝ているからダメなんです。別々に寝ましょう」
リネットがラウルの腕から這い出ようとするが、すぐに囚われる。
「ダメだ。リネットが足りないと言っているのに、別々に寝るなんて言うな。俺は君に飢え死にする」
すんすんと匂いを嗅ぐようにして、首元に顔を埋め、先ほど噛んだ場所を舐め上げる。
「あっ……ダメ、触らないで……」
ラウルがプレゼントしてくれたネグリジェは、いとも容易く彼の手を受け入れてしまう作りだ。いつの間にか、胸元のリボンは解かれていた。
「あっ……ん、んっ……」
できるだけ声を出さないようにと、リネットは唇を噛みしめる。
「我慢しないで、そのかわいい声を聞かせなさい……」
リネットはぶんぶんと頭を振る。こんなはしたない声は、誰にも聞かせたくない。
「リネット。安心しろ」
するとラウルが手を伸ばして何かを取り、リネットに手渡した。
「エドガー殿が遠征の餞別にとくれた。防音魔法具らしい」
「あっ」
薄暗くてもそれが何かはよくわかった。ラウルが言うように防音効果のある魔法具だ。この魔法具があれば、室内の声を外に漏れるのを防ぐ。密談なんかによく使われるのだが。
「なんでエドガー先輩が、ラウルさんに……?」
むしろそれが疑問である。
「ん? エドガー殿も俺と君の関係を認めてくれているからだろう? リネットを泣かせたら許さないとまで言われたが?」
これではラウルよりもエドガーのほうが保護者ではないだろうか。
「あ。左様ですか……」
抑揚のない声で返事をしたリネットは、防音魔法具をラウルに返した。
「では、おやすみなさい」
今までの恥ずかしい声も、外には聞こえていなかった。それだけでも安心だ。ささっと胸元をしまう。
「おい、待ちなさい」
「ひぃっ……」
「眠れないのではなかったのか……?」
目も慣れてきたから、ラウルの顔がはっきりとしてきた。
「リネット。俺は君を愛している……」
すべてを見透かすような真剣な眼差しを向けられ、リネットの心は弾む。
「は、はい……」
トクトクと心臓は忙しない。
「俺の呪いが解けたら、君に言いたいことがある……」
愛していると言ってくれただけで嬉しいのに、それ以上にどんな言葉があるのか。ラウルだからこそ、期待してしまう。
「わかりました。私も、早くラウルさんの呪いが解けるように、頑張ります」
苦笑しつつもそう言ったリネットは、寝る気満々だ。
むしろこのままラウルに流されてはならない。だが、そんな想いは容易く折れそうな自覚もある。だからさっさと寝てしまおうと、そう考えたのだ。
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