【R18】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私

澤谷弥(さわたに わたる)

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第七章(10)

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「彼女は、この国の魔法師で居続けることを望んでいます。だから、スサには……」
「たわけ。そなたの彼女への想いは、そんなものなのか?」

 ラウルはむっとする。リネットへの想いはそんなものではない。だから、この国の魔法師でありたいリネットの考えを尊重したいのだ。

「先ほども言っただろう? この国の魔法師は、今は自国民しか認めていない。今はな。だが、懸念点がなくなれば、他国の者も受け入れたいと思っている」

 国王が言うことが実現できれば、リネットはスサ小国の王女でありながらも、このセーナス王国民の魔法師になれるということだ。

「懸念点……ですか。それは?」
「帝国だ。帝国に魔法師を引き抜かれること……いや、あそこは独身女性を側妃という名目で連れ去ることをする国だからな。その制度を使われて我が国の魔法師たちを引き抜かれたらたまったものではない」
「どういうことですか!」

 ラウルはつい声を荒らげていた。今の話が事実であれば、皇帝は再びリネットを手に入れることが可能となる。

「そうか……だったら、おまえの恋人に聞いてみるがいい。だが、ラウルよ。帝国の頭を入れ替えれば、そんなふざけた決まりなど、なくすことができるのではないのか?」

 何も言えないラウルは、国王を睨みつけることしかできない。

 しかし国王はそんな視線も意に介さず、白磁のカップに手を伸ばす。

「せっかく淹れてくれたお茶だ。飲んでから帰りなさい」

 先ほどまで立ち上がっていた湯気は、もう見えない。ラウルは一気に飲み干して、席を立つ。

「俺への話は以上でよろしいでしょうか?」

 返事がないのは肯定という意味だ。

「それでは、失礼します」

 ドスドスと足音を響かせ扉へ向かえば、侍従がぎょっとしながらも扉を開ける。本当は自分で開けて閉めて、扉に八つ当たりしたいくらいだ。

 扉が閉まり、向こうの空間と隔てられ、ラウルはふぅと息を吐いた。

「……終わったのか?」

 柱の陰からイアンが姿を見せる。

「終わった。そして、俺だけおいていくな。裏切り者め!」
「私があの場にいたらおかしいだろう?」

 また何も言い返せないラウルは、じとっとした視線を向けるだけ。

「それで、陛下の話はなんだったんだ? 君の結婚を認めてくれると?」
「そんなことを言うような相手ではないだろう?」

 来た道を戻るラウルの足取りは重い。

「帝国をなんとかしろと、そんな話だ」
「あぁ。例のヤゴル遺跡を荒らしたのも、帝国の人間だという話だったな」

 正確には、帝国の人間から依頼されたセーナス王国の人間である。貧しい彼らは、帝国が提示した多額の謝礼金に目がくらんで、遺物を盗んでいたのだ。

 セーナス王国民であれば、怪しまれずにヤゴル遺跡の臨時発掘調査員として採用されることができるから。

「あぁ……帝国で思い出した」

 わざとらしいくらいに、イアンがぽんと手を打った。

「皇帝が来るらしい」
「ん?」

 一瞬、なんのことか理解できず、ラウルは聞き返す。

「いや……ヤゴル遺跡の件だ。皇帝自ら謝罪のために足を運ぶとか、そんな話になっているらしい。律儀なことだな。まぁ、帝国としてもセーナスとは仲良くしておきたいんだろう?」

 ラウルにはピンとくるものがあった。それは先ほどの国王との話に繋がるもの。

 ――あそこは独身女性を側妃という名目で連れ去ることをする国だ。

 リネットがこのセーナス王国にいることを、皇帝が知っているかどうかはわからない。他の魔法師の女性を連れ去るのが目的だったとしても、そこにリネットがいたらどうなるのか。

 一度捨てたリネットをもう一度側妃とするか。それとも他の女性魔法師を選ぶか。

 そもそもキサレータ帝国に魔法師を奪われない制度というのであれば、キサレータ帝国は魔法師を欲しがっていると解釈していいだろう。

 どちらにしろ、セーナス王国にとっていい話ではないことだけは確かである。

「ところでイアン……独身女性魔法師は、どれだけいたか覚えているか?」
「あぁ。そもそも女性魔法師は少ない。だから魔法師として配属されたとたん、男性魔法師がこぞって狙うからな。独身なのは……君の恋人だけじゃなかったかな」

 ラウルの背に、嫌な汗が流れた。
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