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第八章(8)
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「毎日『おはようのキス』をしなければ発情する呪いですが、呪い事典にはゴル族の両片思いをくっつけるためのものだと書いてあったんです。それには間違いはないのですが……どうやら、時代を勘違いしていたようで」
「時代?」
「はい。千年近くの、ゴル族があそこで平和に生活していた頃というか、その時代の呪いだと思っていたんです。だけど、むしろゴル族が滅びる頃、セーナス王国に取り込まれる頃の呪いではないかと。ただ、その時代のセーナスは帝国の一部だったので、帝国に統合された頃の呪いですね」
そんなとき、愛する一組のじれじれ両片思いのカップルがいた。お互い好き合っているはずなのに、なぜか顔を合わせれば喧嘩ばかり。いずれは二人の関係も変化し、互いに素直になれる日がくるだろうと、周囲もあたたかく見守っていた。
ところが、帝国から彼女を後宮に入れるよう通達がきた。二人の落ち込みを見て胸を痛めた友人がかけたのが、「毎日『おはようのキス』をしないと発情する呪い」だった。彼女が後宮入りする前に二人が結ばれればいいと、単純に考えたのだ。
二人は結ばれたものの、帝国の逆鱗に触れた。帝国はゴル族の住居を焼き払った。
だが、ゴル族は黙ってはいなかった。ゴル族は呪術を得意とする民族。
愛し合う二人を引き裂こうとした帝国に呪いをかけ、それが「アレがもげる」呪いの起源となる。
リネットはそう結論づけた。
「まさか、ここでもげる呪いに繋がるとは思っていませんでした」
「なるほど……帝国はそんな昔から、人の気持ちを踏みにじってきたんだな……」
そう呟くラウルの声が、リネットの胸にずきりと響いた。
「それで、肝心の俺の呪いを解く方法は?」
「えっと……今の話を聞いて、わかりませんでしたか?」
「ん? 今、リネットは解呪方法を言っていたのか? 俺、聞き逃した?」
はっきり伝えたわけではない。どちらかといえば、察してほしいという意味合いだった。
「いえ、その……。両片思いをくっつけたかった呪いなので、二人がきちんと結ばれれば呪いは解けるんです」
「なるほど。俺とリネットの気持ちは結ばれていると、そう自負しているが……」
「そうですね。気持ちの面はばっちりです。その、気持ち以外にも結ばれる必要がありまして……」
そこまで口にしたとき、リネットの顔はぽっと赤くなる。
「リネット? どうした? やはり疲れが出たのか?」
ラウルがリネットを抱き寄せ、その顔をまじまじとのぞき込んできた。
「いえ……その……私を最後まで抱いていただけますか?」
「な、何を?」
「それが、ラウルさんの呪いを解く方法です。好き合っている二人が結ばれるための呪いだった。そんな単純な話だったんです」
単純だと言えるのは、答えを導けたからこそ。時代背景や当時の情勢を考慮して出された答えだった。
「呪いを解く方法はわかった……だが、今すぐ俺が君を抱くというのは、違うと思う」
「どうしてですか?」
「俺は、呪いを解くために君を抱きたいのではなく、君を愛したいから抱きたいと思っているからだ……」
「ラウルさん……」
リネットは目にいっぱいの涙をため、彼を見上げた。
「リネット……」
彼が熱っぽい眼差しを向ける。
「呪いが解けたらと言ったが……呪いを解く方法がわかったから、それは同義だ……だから、俺と結婚してほしい。君を心から愛している」
ラウルが力強くリネットを抱き寄せた。リネットもラウルの背に腕を回す。
「はい……私も、ラウルさんが好きです。一生、側にいてください」
リネットの告白が終わった瞬間、二人の間に光の玉がぽうっと現れた。
「へ? なんでしょう、これ……?」
慌てたリネットは、ラウルと距離を取った。
二人の間にふわふわと浮いている光の玉は、そのままラウルの下腹部に吸い込まれていく。
「あっ……」
リネットが声をあげる。
「あのぅ……多分ですが……ラウルさんの呪いが解けたかと……。あれ? なんで? やらなくてもいいってこと?」
これはリネットも予想外だった。てっきり、二人の身体を結びつけるための呪いだと思っていたのに。どちらかといえば、心を結びつけるための呪いだったのか。
「もしかして、解呪方法は求婚ってこと? でも、私、あのときラウルさんに……でも、あれは皇帝から逃れるためだったから、無効だった……? もう少し調べないと……」
ぶつぶつと独り言を口にするリネットを、ラウルはもう一度抱き寄せる。
「あれか……呪いが解けたら、これから毎日、『おはようのキス』をする必要はなくなるのか……」
ラウルのその声がどこか残念そうにも聞こえた。
「時代?」
「はい。千年近くの、ゴル族があそこで平和に生活していた頃というか、その時代の呪いだと思っていたんです。だけど、むしろゴル族が滅びる頃、セーナス王国に取り込まれる頃の呪いではないかと。ただ、その時代のセーナスは帝国の一部だったので、帝国に統合された頃の呪いですね」
そんなとき、愛する一組のじれじれ両片思いのカップルがいた。お互い好き合っているはずなのに、なぜか顔を合わせれば喧嘩ばかり。いずれは二人の関係も変化し、互いに素直になれる日がくるだろうと、周囲もあたたかく見守っていた。
ところが、帝国から彼女を後宮に入れるよう通達がきた。二人の落ち込みを見て胸を痛めた友人がかけたのが、「毎日『おはようのキス』をしないと発情する呪い」だった。彼女が後宮入りする前に二人が結ばれればいいと、単純に考えたのだ。
二人は結ばれたものの、帝国の逆鱗に触れた。帝国はゴル族の住居を焼き払った。
だが、ゴル族は黙ってはいなかった。ゴル族は呪術を得意とする民族。
愛し合う二人を引き裂こうとした帝国に呪いをかけ、それが「アレがもげる」呪いの起源となる。
リネットはそう結論づけた。
「まさか、ここでもげる呪いに繋がるとは思っていませんでした」
「なるほど……帝国はそんな昔から、人の気持ちを踏みにじってきたんだな……」
そう呟くラウルの声が、リネットの胸にずきりと響いた。
「それで、肝心の俺の呪いを解く方法は?」
「えっと……今の話を聞いて、わかりませんでしたか?」
「ん? 今、リネットは解呪方法を言っていたのか? 俺、聞き逃した?」
はっきり伝えたわけではない。どちらかといえば、察してほしいという意味合いだった。
「いえ、その……。両片思いをくっつけたかった呪いなので、二人がきちんと結ばれれば呪いは解けるんです」
「なるほど。俺とリネットの気持ちは結ばれていると、そう自負しているが……」
「そうですね。気持ちの面はばっちりです。その、気持ち以外にも結ばれる必要がありまして……」
そこまで口にしたとき、リネットの顔はぽっと赤くなる。
「リネット? どうした? やはり疲れが出たのか?」
ラウルがリネットを抱き寄せ、その顔をまじまじとのぞき込んできた。
「いえ……その……私を最後まで抱いていただけますか?」
「な、何を?」
「それが、ラウルさんの呪いを解く方法です。好き合っている二人が結ばれるための呪いだった。そんな単純な話だったんです」
単純だと言えるのは、答えを導けたからこそ。時代背景や当時の情勢を考慮して出された答えだった。
「呪いを解く方法はわかった……だが、今すぐ俺が君を抱くというのは、違うと思う」
「どうしてですか?」
「俺は、呪いを解くために君を抱きたいのではなく、君を愛したいから抱きたいと思っているからだ……」
「ラウルさん……」
リネットは目にいっぱいの涙をため、彼を見上げた。
「リネット……」
彼が熱っぽい眼差しを向ける。
「呪いが解けたらと言ったが……呪いを解く方法がわかったから、それは同義だ……だから、俺と結婚してほしい。君を心から愛している」
ラウルが力強くリネットを抱き寄せた。リネットもラウルの背に腕を回す。
「はい……私も、ラウルさんが好きです。一生、側にいてください」
リネットの告白が終わった瞬間、二人の間に光の玉がぽうっと現れた。
「へ? なんでしょう、これ……?」
慌てたリネットは、ラウルと距離を取った。
二人の間にふわふわと浮いている光の玉は、そのままラウルの下腹部に吸い込まれていく。
「あっ……」
リネットが声をあげる。
「あのぅ……多分ですが……ラウルさんの呪いが解けたかと……。あれ? なんで? やらなくてもいいってこと?」
これはリネットも予想外だった。てっきり、二人の身体を結びつけるための呪いだと思っていたのに。どちらかといえば、心を結びつけるための呪いだったのか。
「もしかして、解呪方法は求婚ってこと? でも、私、あのときラウルさんに……でも、あれは皇帝から逃れるためだったから、無効だった……? もう少し調べないと……」
ぶつぶつと独り言を口にするリネットを、ラウルはもう一度抱き寄せる。
「あれか……呪いが解けたら、これから毎日、『おはようのキス』をする必要はなくなるのか……」
ラウルのその声がどこか残念そうにも聞こえた。
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