【R18】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私

澤谷弥(さわたに わたる)

文字の大きさ
85 / 88

第八章(10)

しおりを挟む
 ラウルがいなくても、毎朝同じ時間に起き、ヒースと彼女が猫に餌やりしている場所へと足を運ぶ。むしろ、その時間にリネットが朝の散歩をしていたかを、ラウルがヒースに確認するものだから誤魔化しようがないのだ。
 そこでラウルがどれだけ心配性でウザくて過保護なのかと、愚痴なのか惚気なのかわからない話をする。

 それはリネットがラウルに甘えたいからなのかもしれない。そうやって寂しい気持ちを紛らわせていた。

 今までのことをぼんやりと思い出していたリネットは、ラウルにぎゅっとしがみつく。

「どうした?」
「喉が渇いてます」

 だけど恥ずかしくてラウルの顔が見られない。ガウンの下のネグリジェは、キサレータ帝国で着ていたような、肌が透けるものだ。あのときはなんとも思わなかったのに、今は恥ずかしいという気持ちがある。

「ほら。水だ。自分で飲めるか? それとも俺が飲ませるか、口移しか……」

 そういうことをさらっと言ってしまうのがラウルなのだ。

 毎日「おはようのキス」をする必要もなくなったのに、それでも毎朝のようにしつこいキスをしてくる。さらに「おやすみのキス」と「いってらっしゃいのキス」と「おかえりなさいのキス」と、何かと理由をつけてキスを繰り返すから、呪われていたときよりも回数が確実に増えている。そのどれもが、しつこい。

「自分で飲めます」

 ラウルと顔を合わせないようにして、グラスを受け取った。ゴクリゴクリと水を飲んでも、心臓はトクトクと高鳴り続ける。

「ふぅ……」

 グラスの半分ほどの水を飲み干し、息を吐く。

「リネット……俺がこの日をどれだけ待ち望んでいたか、わかるか? これで君を堂々と『俺の妻だ』と言える」

 結婚する前までは「俺の婚約者だ」と声高らかに言っていたので、結婚したからといってもその本質は変わらない。

「では、私も堂々と『私の夫です』と言えばよろしいですか?」
「だから、そういうところだ。君は……無自覚に俺を煽ってくる……俺がどれだけ我慢を……」

 そこまで言ったラウルだが、やはり我慢の限界だったようで、リネットの唇を塞ぐ。

「んっ……」

 唇と唇を合わせるだけの、彼にとっては珍しいあっさりとしたキス。
 だが、それに気を取られていると、ガウンをするりと肩からずらされた。

「あぁ……くそっ……」

 リネットのガウンを脱がせたラウルは、まじまじと熱い視線をぶつけてくる。

「あいつに感謝したくないが……こういうところが、完全に憎めないところだ……くそっ」

 ラウルの言うあいつとは、もちろんセーナス王のことだ。二人にどんな確執があるのかリネットにはわからないが、ラウルと一緒に挨拶をしたときは、王妃と共に、始終ニコニコしていた。

 リネットの印象では、ラウルが言うほど嫌う理由はない。結婚を認め、スサ小国と友好条約を結び、法律を改正してリネットを魔法師として残してくれたことに、感謝しかない。
 それをラウルに伝えると、「くそっ、リネットを手懐けやがって」と返ってきたので、国王の話題は彼の前で控えている。

 悔しそうに顔を歪ませるラウルは、リネットを抱き上げ、ベッドへと連れていく。四柱式できらびやかな天蓋つきのベッドに、ぽふんとおろされた。

「リネット……」

 宝石のように輝く青い目に、情欲の炎が宿る。目が合っただけで、お腹の奥が熱く疼く。
 彼の呪いがすっかり解けてから今まで、何度も彼に抱かれてきた。それでも今日は特別だと、彼は言う。

 誰もが二人の関係を祝福してくれた、記念すべき日だからだ。

「さすがというか……君の魅力を最大限に引き出すような衣装で、俺は今までになく興奮している」

 リネットはちらりと彼の股間に視線を向けてしまった。そこはまるで、初めてソコを目にしたときのように盛り上がっている。

 幾度となく受け入れているわけだが、こうやって儀式のように改めて挑まれると、妙に緊張してしまう。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

『階段対策会議(※恋愛)――年上騎士団長の健康管理が過剰です』

星乃和花
恋愛
【完結済:全9話】 経理兼給仕のクラリスは、騎士団で働くただの事務員――のはずだった。 なのに、年上で情緒に欠ける騎士団長グラントにある日突然こう言われる。 「君は転倒する可能性がある。――健康管理対象にする」 階段対策会議、動線の変更、手をつなぐのは転倒防止、ストール支給は防寒対策。 全部合理的、全部正しい。……正しいはずなのに! 「頬が赤い。必要だ」 「君を、大事にしたい」 真顔で“強い言葉”を投下してくる団長に、乙女心を隠すクラリスの心拍数は業務超過。 さらに副団長ローレンは胃薬片手に「恋は会議にするな!!」と絶叫中!? これは健康管理?それとも恋愛? ――答え合わせの前に、まず“階段(概念)“をご確認ください。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される

めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」  ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!  テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。 『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。  新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。  アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。

勘違い妻は騎士隊長に愛される。

更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。 ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ―― あれ?何か怒ってる? 私が一体何をした…っ!?なお話。 有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。 ※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。

想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…

宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。 いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。 しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。 だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。 不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。 差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、 彼女は“自分のための人生”を選び初める。 これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。

狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。

汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。 元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。 与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。 本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。 人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。 そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。 「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」 戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。 誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。 やわらかな人肌と、眠れない心。 静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。 [こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]

王宮地味女官、只者じゃねぇ

宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。 しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!? 王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。 訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ―― さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。 「おら、案内させてもらいますけんの」 その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。 王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」 副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」 ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」 そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」 けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。 王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。 訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る―― これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。 ★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

処理中です...