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第三章(2)
「団長さんは、私と恋人同士と思われてもいいんですか?」
「まぁ、ヒースが言っていたように、俺も独身、婚約者、恋人なし。絶賛彼女募集中だ」
今度は逆にリネットが眉間にしわを刻む。
「彼女募集中なんですか? だって団長さんって、見目もそこそこいいですよね。エドガー先輩も褒めてましたし。自分と同じくらい顔がいいって」
「それは、褒めているのか?」とラウルが首をひねったようだが、リネットはその言葉を無視する。
「それにハリー伯爵家の血筋の方とお見受けしますが」
リネットがそれを知っているのが意外だとでも言うかのように、ラウルは小さく息を吐く。
「そうだな。君が言うように、ハリー伯爵は血のつながらない義父だ」
「なるほど。でしたら、余計に団長さんの相手が私のような人間ではダメでしょう? ご家族が許さないのでは?」
「それは問題ない。俺はただの名ばかりの伯爵子息だ。伯爵家を継ぐわけでもないし、俺に問題があれば、伯爵はすぐに俺を切る」
「左様ですか」
本棚ドンのまま、ラウルはびくともしない。つまりリネットとしては逃げ場がない。
「つまり、今までのことをひっくるめて、団長さんはもてますよね?」
「む?」
もしかして触れてはいけない内容に触れてしまったのかもしれない。
「女性から言い寄られたりしませんか? もしくは、団長さんが『付き合って』と言ったら、『はい、よろこんで』みたいな感じで」
「自慢じゃないが、いい感じになった女性は一人二人じゃない」
「ですよね?」
「だが、正式に恋人関係になる前に振られる」
今までの話の流れからしても、ラウルが振られる要素がまったくわからない。
顔がいい、身分もそれなりにしっかりしている。伯爵家は継がないかもしれないが、騎士団長だ。任期を全うすれば、叙爵の可能性だってあるだろう。
「振られるんですか? 団長さんが?」
「あぁ、どうやら俺はウザいらしい」
そこでリネットは思わず噴き出した。
ウザい。ラウルを表現するのにぴったりの言葉だ。見目もよく地位があっても、ウザい男は嫌がられるようだ。
昨夜からのラウルの行動を振り返っても、ウザいというのはよくわかる。
今だって、放っておいてほしいのに、昼ご飯を食べろとわざわざこんなところまでやって来たのだ。
「私が言いたかったのは、私のような人間が、団長さんの相手としてふさわしくないということだったんです。私と団長さんは事故のようなもので、キスをする関係になってしまいましたが、何も無理して恋人関係を演じる必要はないと。それによって、団長さんに不利益が生じるのでは、というのを懸念しておりました」
「むしろ俺にとっては利益しかない。さっきも言ったように、特定の女性と特定の関係になったことはないからな」
ラウル本人がこう言っているのであれば、リネットの心配事など杞憂なのだろう。
「そうですか。団長さんが問題ないのであれば、私としても問題ありません。呪いが解けるまでは、私たちの関係は恋人同士ということにしておきましょう。そのほうが、周囲からも変な詮索をされずに済みそうですしね」
ラウルがふっと口元をゆるめた。
「ご協力感謝する」
「いえ。歴代の言い寄った女性たちの『ウザい』という気持ちに共感しただけです」
リネットがはっきりとそう口にすれば、ラウルからは「うぐぅ」と変な声が漏れ出た。
「……俺は、そんなにウザいのか?」
「もしかして、団長さんのウザさは無自覚。無自覚ウザ男。えぇ、そうですね。ウザいかウザくないかと問われれば、たった一日しか時間を共にしていない私からみてもウザいです」
「どのようなところがウザいんだ?」
まさかさらに食いついてくるとは思ってもいなかった。ここは忖度のない率直な意見を言うべきか。
「朝から、私を起こして着替えさせ、散歩に連れ出し、無理やりご飯を食べさせようとするところ。今だって、昼ご飯を誘いに来てるじゃないですか」
リネットが一気にまくしたてると、ラウルも黙り込む。何か考え込んでいるようだが、「いや……」と静かに言葉を吐き出した。
「いくらウザがられようが、君の生活は改善しなければダメだ。もはや、人として生活していない」
「なっ……失礼な人ですね!」
それでもラウルは勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「だからって、先ほどの関係を撤回したいと言っても無駄だ。俺と君は恋人同士。だから俺もウザがられようが、君の世話を焼く! ほら、ご飯を食べに行くぞ」
ラウルがしっかりとリネットの手を握り、半強制的に食堂へ連れていこうとする。
「何もがっつり食べなくてもいい。果物とかスープとか、食べやすい物を少しでも腹にためておけ」
リネットは抵抗もむなしく、地下書庫から引きずり出された。
「まぁ、ヒースが言っていたように、俺も独身、婚約者、恋人なし。絶賛彼女募集中だ」
今度は逆にリネットが眉間にしわを刻む。
「彼女募集中なんですか? だって団長さんって、見目もそこそこいいですよね。エドガー先輩も褒めてましたし。自分と同じくらい顔がいいって」
「それは、褒めているのか?」とラウルが首をひねったようだが、リネットはその言葉を無視する。
「それにハリー伯爵家の血筋の方とお見受けしますが」
リネットがそれを知っているのが意外だとでも言うかのように、ラウルは小さく息を吐く。
「そうだな。君が言うように、ハリー伯爵は血のつながらない義父だ」
「なるほど。でしたら、余計に団長さんの相手が私のような人間ではダメでしょう? ご家族が許さないのでは?」
「それは問題ない。俺はただの名ばかりの伯爵子息だ。伯爵家を継ぐわけでもないし、俺に問題があれば、伯爵はすぐに俺を切る」
「左様ですか」
本棚ドンのまま、ラウルはびくともしない。つまりリネットとしては逃げ場がない。
「つまり、今までのことをひっくるめて、団長さんはもてますよね?」
「む?」
もしかして触れてはいけない内容に触れてしまったのかもしれない。
「女性から言い寄られたりしませんか? もしくは、団長さんが『付き合って』と言ったら、『はい、よろこんで』みたいな感じで」
「自慢じゃないが、いい感じになった女性は一人二人じゃない」
「ですよね?」
「だが、正式に恋人関係になる前に振られる」
今までの話の流れからしても、ラウルが振られる要素がまったくわからない。
顔がいい、身分もそれなりにしっかりしている。伯爵家は継がないかもしれないが、騎士団長だ。任期を全うすれば、叙爵の可能性だってあるだろう。
「振られるんですか? 団長さんが?」
「あぁ、どうやら俺はウザいらしい」
そこでリネットは思わず噴き出した。
ウザい。ラウルを表現するのにぴったりの言葉だ。見目もよく地位があっても、ウザい男は嫌がられるようだ。
昨夜からのラウルの行動を振り返っても、ウザいというのはよくわかる。
今だって、放っておいてほしいのに、昼ご飯を食べろとわざわざこんなところまでやって来たのだ。
「私が言いたかったのは、私のような人間が、団長さんの相手としてふさわしくないということだったんです。私と団長さんは事故のようなもので、キスをする関係になってしまいましたが、何も無理して恋人関係を演じる必要はないと。それによって、団長さんに不利益が生じるのでは、というのを懸念しておりました」
「むしろ俺にとっては利益しかない。さっきも言ったように、特定の女性と特定の関係になったことはないからな」
ラウル本人がこう言っているのであれば、リネットの心配事など杞憂なのだろう。
「そうですか。団長さんが問題ないのであれば、私としても問題ありません。呪いが解けるまでは、私たちの関係は恋人同士ということにしておきましょう。そのほうが、周囲からも変な詮索をされずに済みそうですしね」
ラウルがふっと口元をゆるめた。
「ご協力感謝する」
「いえ。歴代の言い寄った女性たちの『ウザい』という気持ちに共感しただけです」
リネットがはっきりとそう口にすれば、ラウルからは「うぐぅ」と変な声が漏れ出た。
「……俺は、そんなにウザいのか?」
「もしかして、団長さんのウザさは無自覚。無自覚ウザ男。えぇ、そうですね。ウザいかウザくないかと問われれば、たった一日しか時間を共にしていない私からみてもウザいです」
「どのようなところがウザいんだ?」
まさかさらに食いついてくるとは思ってもいなかった。ここは忖度のない率直な意見を言うべきか。
「朝から、私を起こして着替えさせ、散歩に連れ出し、無理やりご飯を食べさせようとするところ。今だって、昼ご飯を誘いに来てるじゃないですか」
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「なっ……失礼な人ですね!」
それでもラウルは勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「だからって、先ほどの関係を撤回したいと言っても無駄だ。俺と君は恋人同士。だから俺もウザがられようが、君の世話を焼く! ほら、ご飯を食べに行くぞ」
ラウルがしっかりとリネットの手を握り、半強制的に食堂へ連れていこうとする。
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