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第三章(8)
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「いやいやいや、ちょっと待ってください。団長さん! その……ネグリジェも下着も、私、自分で準備できますし……その……今までは、必要性がなかったと言いますか、面倒くさかったと言いますか……別に、見せる人もいるわけでもないですし……」
顔を真っ赤にしたリネットだが、自分で何を言っているのかすら、わけがわからなくなった。
ただ、他人と一緒に寝泊まりするというのは、そういったところまで気を使わなければならないのだと、改めて感じただけ。
「お見苦しいものを見せて、申し訳ありません……」
リネットの頭にはその言葉しか思い浮かばない。
とりあえず逃げるようにして、浴室へと向かった。彼が言ったように籠にはリネットの着替えがきれいに畳まれている。スケスケのネグリジェの他に、透けない布地のネグリジェがあった。
ウザいと思っていたラウルだが、これはもはやウザいを通り越して、エドガーの言う保護者が適当なのかもしれない。
しかもバスタブには、花びらまで浮かんでいる。これは仕事のできる使用人の領域だ。
なんとも言えぬ感情が浮かんできたが、好意は素直に受け取っておく。
お湯に身体を沈めて、リネットはほぅと息を吐いた。
(そういえば……不自由なく暮らしてほしいって、言っていたっけ……)
朝からラウルはそんなことを口にしていたはず。呪いの緩和のためにリネットを巻き込んだことに罪悪感があるのだろう。だから何かとリネットを気にかけているに違いない。
(ウザいけど……)
朝昼晩と、見事にラウルに引っ張り回された。今までの平穏な生活に突如と訪れた、嵐のような存在。
でも、ウザいウザいとは言いつつ、リネットはそのウザさを楽しんでいた。いや、喜びなのかもしれない。
スサ小国を離れて五年。今では成人を迎え、大人の仲間入りをしたが、やはりあの年で親や家族と引き離された寂しさが、心のどこかに巣くっていた。それにアルヴィスはリネットを妃として扱っていなかった。ただの都合のいい駒。忠実な僕のようなもの。
だからラウルが帽子を送ってくれたり、何かと気にかけてくれるのは嬉しい。
だけど、今までと同じぐうたらとした生活を望みたいという気持ちもある。できるだけ他人と関係をもたない暮らし。
そしてこうやって彼の行動によって心掻き乱されるのが悔しい。
身体があたたまったところで、湯から出る。ほかほかと、腕から湯気が立ち上っていた。それと同時に、花の甘い香りがするのはバスタブに浮かんだ花びらのせいだ。
真新しいネグリジェは肌触りも滑らかで着心地がいい。
「お風呂とこれ、ありがとうございました」
部屋に戻ったところで、リネットは礼を口にした。
「ああ……」
頷いたラウルの視線は、リネットの全身をざっと見回したように見えた。
「どうかされました?」
「いや……サイズがわからなかったが……店員の言っていたことは正しかったと、そう思っただけだ」
「これって……団長さん、自ら買いにいったんですか?」
「そうだな。今日の見回りのついでに。だから気にするな」
気にするなと言われても、リネットとしてはやはりいろいろと気になってしまう。
「お店の人には、何か言われませんでしたか?」
「いや、特に? ヒースが言うには、恋人に寝間着を送るのは、最近の流行りだとも聞いた」
その話はリネットも初耳だ。いや、そもそもリネットはそういった流行に疎い。
「まぁ……だから、あれだ。俺と君は恋人同士と周囲には思われているわけだ。だから、最近の流行りに乗って、俺が君に寝間着を送るのは、何も問題ない」
そう言い切ったラウルは、浴室に消えていった。
顔を真っ赤にしたリネットだが、自分で何を言っているのかすら、わけがわからなくなった。
ただ、他人と一緒に寝泊まりするというのは、そういったところまで気を使わなければならないのだと、改めて感じただけ。
「お見苦しいものを見せて、申し訳ありません……」
リネットの頭にはその言葉しか思い浮かばない。
とりあえず逃げるようにして、浴室へと向かった。彼が言ったように籠にはリネットの着替えがきれいに畳まれている。スケスケのネグリジェの他に、透けない布地のネグリジェがあった。
ウザいと思っていたラウルだが、これはもはやウザいを通り越して、エドガーの言う保護者が適当なのかもしれない。
しかもバスタブには、花びらまで浮かんでいる。これは仕事のできる使用人の領域だ。
なんとも言えぬ感情が浮かんできたが、好意は素直に受け取っておく。
お湯に身体を沈めて、リネットはほぅと息を吐いた。
(そういえば……不自由なく暮らしてほしいって、言っていたっけ……)
朝からラウルはそんなことを口にしていたはず。呪いの緩和のためにリネットを巻き込んだことに罪悪感があるのだろう。だから何かとリネットを気にかけているに違いない。
(ウザいけど……)
朝昼晩と、見事にラウルに引っ張り回された。今までの平穏な生活に突如と訪れた、嵐のような存在。
でも、ウザいウザいとは言いつつ、リネットはそのウザさを楽しんでいた。いや、喜びなのかもしれない。
スサ小国を離れて五年。今では成人を迎え、大人の仲間入りをしたが、やはりあの年で親や家族と引き離された寂しさが、心のどこかに巣くっていた。それにアルヴィスはリネットを妃として扱っていなかった。ただの都合のいい駒。忠実な僕のようなもの。
だからラウルが帽子を送ってくれたり、何かと気にかけてくれるのは嬉しい。
だけど、今までと同じぐうたらとした生活を望みたいという気持ちもある。できるだけ他人と関係をもたない暮らし。
そしてこうやって彼の行動によって心掻き乱されるのが悔しい。
身体があたたまったところで、湯から出る。ほかほかと、腕から湯気が立ち上っていた。それと同時に、花の甘い香りがするのはバスタブに浮かんだ花びらのせいだ。
真新しいネグリジェは肌触りも滑らかで着心地がいい。
「お風呂とこれ、ありがとうございました」
部屋に戻ったところで、リネットは礼を口にした。
「ああ……」
頷いたラウルの視線は、リネットの全身をざっと見回したように見えた。
「どうかされました?」
「いや……サイズがわからなかったが……店員の言っていたことは正しかったと、そう思っただけだ」
「これって……団長さん、自ら買いにいったんですか?」
「そうだな。今日の見回りのついでに。だから気にするな」
気にするなと言われても、リネットとしてはやはりいろいろと気になってしまう。
「お店の人には、何か言われませんでしたか?」
「いや、特に? ヒースが言うには、恋人に寝間着を送るのは、最近の流行りだとも聞いた」
その話はリネットも初耳だ。いや、そもそもリネットはそういった流行に疎い。
「まぁ……だから、あれだ。俺と君は恋人同士と周囲には思われているわけだ。だから、最近の流行りに乗って、俺が君に寝間着を送るのは、何も問題ない」
そう言い切ったラウルは、浴室に消えていった。
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