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第三章(9)
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* * *
リネットを一日かまって、彼女という人となりがなんとなくつかめたような気がする。
とにかく覇気がない。流されて生きているような、むしろ生きることに投げやりになっているような、そんな印象を受けた。
まず人の目を気にしない寝間着。あれは駄目だろう。ラウルが同じ部屋にいるのだ。昨夜はできるだけ気にしないように視線を背けていたが、これが毎日となればいろいろ問題がある。呪いなのか本能なのか、わからなくなる。
彼女との昼食を終え、どうしたものかと書類片手に悩んでいたら、第七騎士団付きの侍女が遠慮がちに部屋に入ってきた。どうやら洗濯メイドから報告を受けたとのことで、リネットに関する内容だった。まして下着の話となれば、本当にどうすればよいのか。
「ハリー団長の恋人は、まともな下着を持っていないと、そんな噂が立ってしまいます……」
侍女が遠慮がちに口にする。
ヒースが言ったように、リネットとの仲は周知されつつあるようだ。
その結果、そんな弊害があるとは。
つまり恋人同士になったら、相手の身だしなみにも気を配る必要があると、侍女はそう言いたげだった。
寝間着の件といい、リネットに対して悩むことが多すぎて、あまりにも悩んでいたら、彼女の無頓着さに怒りがじわじわと込み上げてきた。
ラウルがやんわりと言ったところで彼女は「疲れました」「面倒くさいです」「動きたくありません」と言い出すに違いない。となれば、必要な物はこちらで準備してしまえばいい。
と、そこまで考えたのはよかった。問題があるとすれば、ラウルが男性でリネットが女性ということだろう。やはり異性の寝間着や下着を買うのはいかがなものかと、また悩み始める。あまりにも悩んでいたら、ヒースが見かねて声をかけてきた。
「団長。さっきから何を悩んでいるんですか? まぁ、悩んでしまうのもわかりますが……」
ヒースの視線は、ラウルの股間に向いていた。
「今のところ、そこは問題ない。むしろリネットが問題だ……」
「リネットさんですか? まぁ、団長の恋人という噂が広まっていますね」
そこでラウルは侍女から言われた内容をヒースにも伝えた。
「へぇ? 意外とずぼら……ではなく、面倒くさがり屋さんなんですね。ほわほわしているイメージはありましたが。あ、もしかしてあれですかね? 物を大事にする人」
ヒースのその発想はなかった。物を大事にする性格ならば、寝間着や下着も着られるうちは着ようと思うだろう。
「そうかもしれないが……あれは駄目だ。一緒にいるのに目のやり場に困るような格好をされるのは、いろいろと困る」
その言葉でヒースは再びラウルの股間に目を向ける。
「団長がリネットさんと一緒になりたいという気持ちがあるなら、止めませんが。後悔されるような行動は慎んでください」
いったい、ヒースはなんの心配をしているのだろう。
「とにかく、ヒース。リネットの服を揃えたい。彼女のことだから『面倒くさい』と言うのが目に見えている。となれば、俺が買って渡せばいいのではないかと思ったわけだ」
なるほど、とヒースはポンと手を叩く。
「最近、流行っているらしいですよ?」
「何がだ?」
「だから、恋人に寝間着を送るのが。自分が選んだものを着てもらいたいという欲求? そしてそれに包まれて眠っている彼女がかわいい、とか」
「なんだ、それは」
そんな話、ラウルは聞いたことがない。そもそも、婚約者も恋人もいないラウルであるため、そういった色恋沙汰の話が届かない。周囲がラウルに気を使っているのかなんなのか。
だからヒースの言う、恋人に寝間着を送るのが流行りだなんて知らなかった。
「わかった。では、寝間着は巡回のついでに買ってくる」
「あ、でしたらこの店が……」
ヒースがおすすめの店まで教えてきてくれたため、その好意に甘えることにした。
「ですが、下着は……妹にでも頼みます?」
ヒースには二歳年下の妹がいる。
「いやぁ、妹も、団長とリネットさんの噂を聞いて喜んでいましたからね。頼めば、楽しんで協力してくれるかと」
「では、頼む」
時計を確認すれば、街の見回りの時間になっていた。
リネットを一日かまって、彼女という人となりがなんとなくつかめたような気がする。
とにかく覇気がない。流されて生きているような、むしろ生きることに投げやりになっているような、そんな印象を受けた。
まず人の目を気にしない寝間着。あれは駄目だろう。ラウルが同じ部屋にいるのだ。昨夜はできるだけ気にしないように視線を背けていたが、これが毎日となればいろいろ問題がある。呪いなのか本能なのか、わからなくなる。
彼女との昼食を終え、どうしたものかと書類片手に悩んでいたら、第七騎士団付きの侍女が遠慮がちに部屋に入ってきた。どうやら洗濯メイドから報告を受けたとのことで、リネットに関する内容だった。まして下着の話となれば、本当にどうすればよいのか。
「ハリー団長の恋人は、まともな下着を持っていないと、そんな噂が立ってしまいます……」
侍女が遠慮がちに口にする。
ヒースが言ったように、リネットとの仲は周知されつつあるようだ。
その結果、そんな弊害があるとは。
つまり恋人同士になったら、相手の身だしなみにも気を配る必要があると、侍女はそう言いたげだった。
寝間着の件といい、リネットに対して悩むことが多すぎて、あまりにも悩んでいたら、彼女の無頓着さに怒りがじわじわと込み上げてきた。
ラウルがやんわりと言ったところで彼女は「疲れました」「面倒くさいです」「動きたくありません」と言い出すに違いない。となれば、必要な物はこちらで準備してしまえばいい。
と、そこまで考えたのはよかった。問題があるとすれば、ラウルが男性でリネットが女性ということだろう。やはり異性の寝間着や下着を買うのはいかがなものかと、また悩み始める。あまりにも悩んでいたら、ヒースが見かねて声をかけてきた。
「団長。さっきから何を悩んでいるんですか? まぁ、悩んでしまうのもわかりますが……」
ヒースの視線は、ラウルの股間に向いていた。
「今のところ、そこは問題ない。むしろリネットが問題だ……」
「リネットさんですか? まぁ、団長の恋人という噂が広まっていますね」
そこでラウルは侍女から言われた内容をヒースにも伝えた。
「へぇ? 意外とずぼら……ではなく、面倒くさがり屋さんなんですね。ほわほわしているイメージはありましたが。あ、もしかしてあれですかね? 物を大事にする人」
ヒースのその発想はなかった。物を大事にする性格ならば、寝間着や下着も着られるうちは着ようと思うだろう。
「そうかもしれないが……あれは駄目だ。一緒にいるのに目のやり場に困るような格好をされるのは、いろいろと困る」
その言葉でヒースは再びラウルの股間に目を向ける。
「団長がリネットさんと一緒になりたいという気持ちがあるなら、止めませんが。後悔されるような行動は慎んでください」
いったい、ヒースはなんの心配をしているのだろう。
「とにかく、ヒース。リネットの服を揃えたい。彼女のことだから『面倒くさい』と言うのが目に見えている。となれば、俺が買って渡せばいいのではないかと思ったわけだ」
なるほど、とヒースはポンと手を叩く。
「最近、流行っているらしいですよ?」
「何がだ?」
「だから、恋人に寝間着を送るのが。自分が選んだものを着てもらいたいという欲求? そしてそれに包まれて眠っている彼女がかわいい、とか」
「なんだ、それは」
そんな話、ラウルは聞いたことがない。そもそも、婚約者も恋人もいないラウルであるため、そういった色恋沙汰の話が届かない。周囲がラウルに気を使っているのかなんなのか。
だからヒースの言う、恋人に寝間着を送るのが流行りだなんて知らなかった。
「わかった。では、寝間着は巡回のついでに買ってくる」
「あ、でしたらこの店が……」
ヒースがおすすめの店まで教えてきてくれたため、その好意に甘えることにした。
「ですが、下着は……妹にでも頼みます?」
ヒースには二歳年下の妹がいる。
「いやぁ、妹も、団長とリネットさんの噂を聞いて喜んでいましたからね。頼めば、楽しんで協力してくれるかと」
「では、頼む」
時計を確認すれば、街の見回りの時間になっていた。
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