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7.最後の強がり
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「証拠? あるよ。当時の彼をおかしいと思った私が、王宮医師に診てもらったからね。それで、これが薬物によるものであるとわかった」
そんな優秀な医師がいただろうか。
あの薬は、体内から検出されないため証拠も残らないということで、カーラ商会が隣国から手に入れ流していたはずなのに。
「だったら。婚姻が無効であるなら、私とラッシュが関係を持ったとしても、姦通罪にはならないわよね? だって、私とラッシュは愛し合っていた関係ですもの」
マレリは、ちっちっちっと舌打ちをしながら、右手の人差し指を小刻みに揺らしている。
「今はまだ、その婚姻が無効であると判断されていない。だから、現時点での婚姻状態は認められている。つまり、君たち二人は立派に姦通罪を犯したということだ。知っているか? 姦通罪は生殖器切断による身体刑が科せられる」
「ひっ……」
悲鳴のような小さな声をあげたのは、ラッシュである。
「兄さん……」
マレリの後ろから、小柄な男性が姿を現した。赤茶の髪はラッシュによく似ているし、その顔かたちも彼の面影がある。そして彼は、白衣姿でもあった。
「兄さん。なぜ、カーラ商会の悪事に手を貸したのですか?」
「なぜ? なぜって、そんなの。ケイトを愛しているからだろう? 協力すれば結婚してやるって言われたんだ」
「ボクは忠告しましたよね? 兄さんのやっていることは犯罪だと。イアンさんに違法薬物を飲ませ、心神喪失の状態とさせて無理矢理関係を結んだかのように見せた。それを脅しの材料として、ケイトさんがイアンさんと婚姻関係を結ぶ。二年間、男女の交わりがなければ離縁が認められるから、イアンさんに原因があるという理由をでっちあげて、離縁するつもりだったのでしょう? そうすれば、イアンさんの資産がケイトさんに転がり込むわけですから。もしかしたらその後、結婚してあげるとかなんとか、言われたのですか?」
「そ、そうだよ。だってケイトは僕を愛してくれているからね」
先ほどからラッシュは震えたままである。
「兄さん……。兄さんは今、マレリさんが言ったように姦通罪に問われている。となれば、廃嫡となるでしょう。それでも、ケイトさんは兄さんを愛していると言ってくれますかね?」
不安げな様子でラッシュはケイトを見つめる。
ケイトはふんと鼻から息を吐く。
「はぁ……。ラッシュ、あなたの弟がこれほど優秀だなんて聞いていないわ。もしかして、優秀な王宮医師ってあなたの弟のことかしら?」
「うわ、優秀だなんて。嬉しいですね。あらためて自己紹介させていただきます。王宮医師のロイ・ベネターと申します」
誤算も誤算、大誤算である。
「兄さん。これ以上、ボクにできることはありません。そうですね、切断後の処置くらいなら、うまくやってあげますけども」
「ひぇっ」
ラッシュはあそこを両手でおさえた。
「はい、騎士団のみなさ~ん。この犯罪者二人を連れて行ってくださ~い」
ロイの明るい声で、騎士服に身を包む男たちがぞろぞろと部屋に入ってきた。
「ちょっと、服ぐらい着せなさいよ」
それがケイトなりの最後の強がりだった。
そんな優秀な医師がいただろうか。
あの薬は、体内から検出されないため証拠も残らないということで、カーラ商会が隣国から手に入れ流していたはずなのに。
「だったら。婚姻が無効であるなら、私とラッシュが関係を持ったとしても、姦通罪にはならないわよね? だって、私とラッシュは愛し合っていた関係ですもの」
マレリは、ちっちっちっと舌打ちをしながら、右手の人差し指を小刻みに揺らしている。
「今はまだ、その婚姻が無効であると判断されていない。だから、現時点での婚姻状態は認められている。つまり、君たち二人は立派に姦通罪を犯したということだ。知っているか? 姦通罪は生殖器切断による身体刑が科せられる」
「ひっ……」
悲鳴のような小さな声をあげたのは、ラッシュである。
「兄さん……」
マレリの後ろから、小柄な男性が姿を現した。赤茶の髪はラッシュによく似ているし、その顔かたちも彼の面影がある。そして彼は、白衣姿でもあった。
「兄さん。なぜ、カーラ商会の悪事に手を貸したのですか?」
「なぜ? なぜって、そんなの。ケイトを愛しているからだろう? 協力すれば結婚してやるって言われたんだ」
「ボクは忠告しましたよね? 兄さんのやっていることは犯罪だと。イアンさんに違法薬物を飲ませ、心神喪失の状態とさせて無理矢理関係を結んだかのように見せた。それを脅しの材料として、ケイトさんがイアンさんと婚姻関係を結ぶ。二年間、男女の交わりがなければ離縁が認められるから、イアンさんに原因があるという理由をでっちあげて、離縁するつもりだったのでしょう? そうすれば、イアンさんの資産がケイトさんに転がり込むわけですから。もしかしたらその後、結婚してあげるとかなんとか、言われたのですか?」
「そ、そうだよ。だってケイトは僕を愛してくれているからね」
先ほどからラッシュは震えたままである。
「兄さん……。兄さんは今、マレリさんが言ったように姦通罪に問われている。となれば、廃嫡となるでしょう。それでも、ケイトさんは兄さんを愛していると言ってくれますかね?」
不安げな様子でラッシュはケイトを見つめる。
ケイトはふんと鼻から息を吐く。
「はぁ……。ラッシュ、あなたの弟がこれほど優秀だなんて聞いていないわ。もしかして、優秀な王宮医師ってあなたの弟のことかしら?」
「うわ、優秀だなんて。嬉しいですね。あらためて自己紹介させていただきます。王宮医師のロイ・ベネターと申します」
誤算も誤算、大誤算である。
「兄さん。これ以上、ボクにできることはありません。そうですね、切断後の処置くらいなら、うまくやってあげますけども」
「ひぇっ」
ラッシュはあそこを両手でおさえた。
「はい、騎士団のみなさ~ん。この犯罪者二人を連れて行ってくださ~い」
ロイの明るい声で、騎士服に身を包む男たちがぞろぞろと部屋に入ってきた。
「ちょっと、服ぐらい着せなさいよ」
それがケイトなりの最後の強がりだった。
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