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第七章:告白 x 告白(3)
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ハリエッタを眠らせてどこかへ連れ去ろうと考えている人間がいる。
誰かを呼びに行きたいが、その隙にハリエッタだけ連れていかれたらと考えると、迂闊にこの場を離れられない。
(ハリエッタ様。よりによって、人払いをされていたのよね……)
となれば、ここはクラリスがハリエッタを守らねばならないだろう。
できるだけ椅子をハリエッタに近づけて座り直した。
カタカタと外から物音が聞こえる。誰かがやってきたのかもしれない。テーブルの下で彼女の手首をがっしりと掴んで、クラリスは眠っている振りをした。
どこに連れていかれるのか。
もしかしてクラリスだけ置いて行かれるかもしれない。狙いがハリエッタであるなら、その可能性は大いにある。そのときは、絶対にこの手を離してはならない。
そんなことを考えながら、誰かが来るのを今か今かと待っていた。
「……おい。女が二人いるぞ。どっちだ?」
「青い髪の女だ」
(え?)
クラリスの心臓は大きく跳ねた。
ハリエッタの髪の色は金色。そして青い髪というのは、クラリスの空色の髪を言っているにちがいない。
(わたくし? 彼らの狙いはハリエッタ様ではなく、わたくしなの?)
狙われる理由に心当たりはまったくない。嫌われ役を買っていたけれども、恨まれるようなことはしていない。
だけどここで彼らに抵抗したとしても、ハリエッタを危険に晒すだけ。声から察するに男が二人いるのはわかるが、それだって最低二人であって、他にも仲間がいるかもしれない。
となれば、ここはおとなしくクラリス一人が彼らに捕まるのが、無難なのではないだろうか。
ハリエッタの手首をそっと離した。
「……んっ」
顔に何やら布を押し当てられた。
(これは、睡眠薬? このにおいからすると、だいたい効果は一時間、二時間くらいかしら)
つまり、この場所から一時間くらいで移動できる場所に連れ去られるわけだ。
クラリスは全身の力を抜いて、四肢をダラリと垂らす。
男たちによって両手両足を縛られ、頭からは何かをすっぽりとかぶせられた。恐らく、麻袋だろう。そして荷物のように、男の肩に担ぎ上げられた。
王太子宮でここまでやるとは、絶対に手引きをした者がいる。
クラリスはしっかりと意識を保ち、どこをどう移動しているかを推測する。
(きっと、裏口ね……馬車に乗せられたわ。本当に、荷物のような扱いね)
荷台に転がされているようだ。
ふと、ハリエッタのことが思い出される。彼女はどうしただろうか。
気になっているものの、きっとあのサロンで眠っているだけにちがいない。だれかがハリエッタを探しに来て、異変に気づいてくれればいいのだが。
とりあえずクラリスは、その場でじっとしていた。
馬車が止まると、また荷物のように担ぎ上げられておろされた。馬車に揺られていたのは三十分程度だろうか。
建物の中に入ったが、手入れが行き届いているところのようだ。
乱暴に転がされるかと思ったが、ふかふかのソファにおろされた。そこで麻袋をとられたのか、瞼の向こう側が明るくなった。だけどまだ、寝たふりを続ける。
(ここは、どこのお屋敷かしら?)
肌に触れるまろやかな外気、ほのかに香る甘い香り、そして座らせられている場所から判断すると、薄汚れた小屋ではないだろう。しっかりと掃除が行き届いている屋敷の一室。
目を開けて周囲を確認したいが、まだ人の気配がする。
「じゃ、俺たちはこれで。約束はきっかりと守ったからな」
サロンで聞いた男の声だ。話の内容から察するに、彼らは誰かに頼まれてクラリスをさらってきたようだ。
問題は、その誰かである。
静かにソファが沈んだ。隣に誰かがやってきた。体温が近づき、息づかいを頬に感じる。
「あぁ……クラリス様……。今まで、どちらに隠れていたのですか……」
男の声だった。しかし、この声には聞き覚えがある。
(もしかして、メンディー侯爵子息のファンケ様? でも、ファンケ様はハリエッタ様を執拗に狙っていて、だからあの婚約披露パーティーの日にも……)
アルバートとハリエッタの婚約披露パーティーでは、ハリエッタの飲み物に睡眠薬が仕込まれていて、その犯人ではないかと疑っていたのがファンケなのだ。
それに気づいたクラリスは、睡眠薬入りの飲み物を乱暴にはね除け、ハリエッタを退場にまで追い込んだ。
(だから、わたくしを恨んで……?)
なんとなく状況が読めてきた。できるだけファンケを挑発させないようにしなければ。
「あぁ……クラリス様。お美しくなられて……」
誰かを呼びに行きたいが、その隙にハリエッタだけ連れていかれたらと考えると、迂闊にこの場を離れられない。
(ハリエッタ様。よりによって、人払いをされていたのよね……)
となれば、ここはクラリスがハリエッタを守らねばならないだろう。
できるだけ椅子をハリエッタに近づけて座り直した。
カタカタと外から物音が聞こえる。誰かがやってきたのかもしれない。テーブルの下で彼女の手首をがっしりと掴んで、クラリスは眠っている振りをした。
どこに連れていかれるのか。
もしかしてクラリスだけ置いて行かれるかもしれない。狙いがハリエッタであるなら、その可能性は大いにある。そのときは、絶対にこの手を離してはならない。
そんなことを考えながら、誰かが来るのを今か今かと待っていた。
「……おい。女が二人いるぞ。どっちだ?」
「青い髪の女だ」
(え?)
クラリスの心臓は大きく跳ねた。
ハリエッタの髪の色は金色。そして青い髪というのは、クラリスの空色の髪を言っているにちがいない。
(わたくし? 彼らの狙いはハリエッタ様ではなく、わたくしなの?)
狙われる理由に心当たりはまったくない。嫌われ役を買っていたけれども、恨まれるようなことはしていない。
だけどここで彼らに抵抗したとしても、ハリエッタを危険に晒すだけ。声から察するに男が二人いるのはわかるが、それだって最低二人であって、他にも仲間がいるかもしれない。
となれば、ここはおとなしくクラリス一人が彼らに捕まるのが、無難なのではないだろうか。
ハリエッタの手首をそっと離した。
「……んっ」
顔に何やら布を押し当てられた。
(これは、睡眠薬? このにおいからすると、だいたい効果は一時間、二時間くらいかしら)
つまり、この場所から一時間くらいで移動できる場所に連れ去られるわけだ。
クラリスは全身の力を抜いて、四肢をダラリと垂らす。
男たちによって両手両足を縛られ、頭からは何かをすっぽりとかぶせられた。恐らく、麻袋だろう。そして荷物のように、男の肩に担ぎ上げられた。
王太子宮でここまでやるとは、絶対に手引きをした者がいる。
クラリスはしっかりと意識を保ち、どこをどう移動しているかを推測する。
(きっと、裏口ね……馬車に乗せられたわ。本当に、荷物のような扱いね)
荷台に転がされているようだ。
ふと、ハリエッタのことが思い出される。彼女はどうしただろうか。
気になっているものの、きっとあのサロンで眠っているだけにちがいない。だれかがハリエッタを探しに来て、異変に気づいてくれればいいのだが。
とりあえずクラリスは、その場でじっとしていた。
馬車が止まると、また荷物のように担ぎ上げられておろされた。馬車に揺られていたのは三十分程度だろうか。
建物の中に入ったが、手入れが行き届いているところのようだ。
乱暴に転がされるかと思ったが、ふかふかのソファにおろされた。そこで麻袋をとられたのか、瞼の向こう側が明るくなった。だけどまだ、寝たふりを続ける。
(ここは、どこのお屋敷かしら?)
肌に触れるまろやかな外気、ほのかに香る甘い香り、そして座らせられている場所から判断すると、薄汚れた小屋ではないだろう。しっかりと掃除が行き届いている屋敷の一室。
目を開けて周囲を確認したいが、まだ人の気配がする。
「じゃ、俺たちはこれで。約束はきっかりと守ったからな」
サロンで聞いた男の声だ。話の内容から察するに、彼らは誰かに頼まれてクラリスをさらってきたようだ。
問題は、その誰かである。
静かにソファが沈んだ。隣に誰かがやってきた。体温が近づき、息づかいを頬に感じる。
「あぁ……クラリス様……。今まで、どちらに隠れていたのですか……」
男の声だった。しかし、この声には聞き覚えがある。
(もしかして、メンディー侯爵子息のファンケ様? でも、ファンケ様はハリエッタ様を執拗に狙っていて、だからあの婚約披露パーティーの日にも……)
アルバートとハリエッタの婚約披露パーティーでは、ハリエッタの飲み物に睡眠薬が仕込まれていて、その犯人ではないかと疑っていたのがファンケなのだ。
それに気づいたクラリスは、睡眠薬入りの飲み物を乱暴にはね除け、ハリエッタを退場にまで追い込んだ。
(だから、わたくしを恨んで……?)
なんとなく状況が読めてきた。できるだけファンケを挑発させないようにしなければ。
「あぁ……クラリス様。お美しくなられて……」
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