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おまけ
こうやって罠は仕組まれた(6)
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「……リディ、リディ……?」
カリッドは名を呼ばれてその目を開けた。
「どうしたの? うなされていたようだけれど。怖い夢でもみた?」
目の前には愛する妻の顔がある。驚いたようにカリッドの顔を覗き込んでいた。カリッドはゆっくりと身体を起こすと、それにつられてモニカも身体を起こす。
「すまない、起こしてしまったか?」
「ううん? そろそろ起きようと思っていたところだったから。……あ」
と声を挙げたモニカに視線をうつすカリッド。
「今、蹴られた」
そう言って微笑む姿は慈愛に満ちている。
「触れてもいいか?」
カリッドが尋ねると、もちろんと返事がくる。カリッドは恐る恐るそこに触れてみた。何やらぽこんと固いものが触れる。
「もしかして、これ、足の裏か?」
こんな小さなモニカのお腹の中に、一人の人間がいることが不思議で仕方なかった。
「そうよ。もう、動きが激しくて」
今ならあのとき母親の言っていた言葉の意味がわかるような気がした。
『そういう相手と出会ったときに、きっとそう思うようになるわ』
初めて彼女を見た時に、身体の中にびりりと落雷のような光が走った。男の子のような女の子ではなく、彼女はどこからどう見ても女の子で、それは今まで受けた衝撃とは違うものだった。触れたら壊れてしまうのではないか、と。
結局あの後、その縁談も流れてしまった。彼女の方があの長に泣きついた、とか。
カリッドが父親から聞いた話によると、彼女もカリッド同様、異性に対する嫌悪感が強い女性だったらしい。酷いことをしてしまったかもしれない、という気持ちがあると同時に、これでよかったのかもしれないとカリッドは思っていた。あのままでは自分は彼女を壊すかもしれないと思っていたから。触れたら壊れる、そんな可憐な少女だったのだ。
だから気付かなかった。十数年の時を経て、彼女が自分の目の前に現れたことに。身体は小柄なのに、弓の腕に長けている部下だった。リヴァージュの民だと言う。彼女の弓を射る姿は美しかった。そして、任務にも真面目に取り組む姿に心が奪われた。この気持ちを何と呼ぶのかはわからない。だけど、彼女が気になって仕方なかった。
部下であるイアンに何度相談しようかと思ったが、それもできなかった。
と、その時に両親からの手紙。内容は簡単、要約すれば「いい加減、見合いをして結婚をしろ」ということ。
想いを寄せる女性と結婚できないのであれば、一生結婚しなくてもいいと思っていた。特に、このような無理やりの結婚は絶対に嫌だった。心の奥でどこかにある女性に対する恐怖心。それが再燃しかけていた。
だから、思い切って彼女に頼んだのだ。
「モニカ、君には俺の恋人のフリをしてほしい」
そのときの彼女の様子は絶対に忘れることはできない。
「それは。新しいパワハラでしょうか?」
と尋ねながらも、少し頬を染めていた彼女のことを。恐らく本人は気付いていないだろう。いつも彼女を見つめていたカリッドだから気付くことができた。
恐らく。
全ては運命だったのだ。カリッドがモニカに導かれるように彼女と出会い、彼女と結婚をして、子を授かることが。
神が仕掛けた罠だったのだ、とカリッドは思っている。そしてこの罠に見事はまったカリッドは今、幸せであるとも思っていた。
カリッドは名を呼ばれてその目を開けた。
「どうしたの? うなされていたようだけれど。怖い夢でもみた?」
目の前には愛する妻の顔がある。驚いたようにカリッドの顔を覗き込んでいた。カリッドはゆっくりと身体を起こすと、それにつられてモニカも身体を起こす。
「すまない、起こしてしまったか?」
「ううん? そろそろ起きようと思っていたところだったから。……あ」
と声を挙げたモニカに視線をうつすカリッド。
「今、蹴られた」
そう言って微笑む姿は慈愛に満ちている。
「触れてもいいか?」
カリッドが尋ねると、もちろんと返事がくる。カリッドは恐る恐るそこに触れてみた。何やらぽこんと固いものが触れる。
「もしかして、これ、足の裏か?」
こんな小さなモニカのお腹の中に、一人の人間がいることが不思議で仕方なかった。
「そうよ。もう、動きが激しくて」
今ならあのとき母親の言っていた言葉の意味がわかるような気がした。
『そういう相手と出会ったときに、きっとそう思うようになるわ』
初めて彼女を見た時に、身体の中にびりりと落雷のような光が走った。男の子のような女の子ではなく、彼女はどこからどう見ても女の子で、それは今まで受けた衝撃とは違うものだった。触れたら壊れてしまうのではないか、と。
結局あの後、その縁談も流れてしまった。彼女の方があの長に泣きついた、とか。
カリッドが父親から聞いた話によると、彼女もカリッド同様、異性に対する嫌悪感が強い女性だったらしい。酷いことをしてしまったかもしれない、という気持ちがあると同時に、これでよかったのかもしれないとカリッドは思っていた。あのままでは自分は彼女を壊すかもしれないと思っていたから。触れたら壊れる、そんな可憐な少女だったのだ。
だから気付かなかった。十数年の時を経て、彼女が自分の目の前に現れたことに。身体は小柄なのに、弓の腕に長けている部下だった。リヴァージュの民だと言う。彼女の弓を射る姿は美しかった。そして、任務にも真面目に取り組む姿に心が奪われた。この気持ちを何と呼ぶのかはわからない。だけど、彼女が気になって仕方なかった。
部下であるイアンに何度相談しようかと思ったが、それもできなかった。
と、その時に両親からの手紙。内容は簡単、要約すれば「いい加減、見合いをして結婚をしろ」ということ。
想いを寄せる女性と結婚できないのであれば、一生結婚しなくてもいいと思っていた。特に、このような無理やりの結婚は絶対に嫌だった。心の奥でどこかにある女性に対する恐怖心。それが再燃しかけていた。
だから、思い切って彼女に頼んだのだ。
「モニカ、君には俺の恋人のフリをしてほしい」
そのときの彼女の様子は絶対に忘れることはできない。
「それは。新しいパワハラでしょうか?」
と尋ねながらも、少し頬を染めていた彼女のことを。恐らく本人は気付いていないだろう。いつも彼女を見つめていたカリッドだから気付くことができた。
恐らく。
全ては運命だったのだ。カリッドがモニカに導かれるように彼女と出会い、彼女と結婚をして、子を授かることが。
神が仕掛けた罠だったのだ、とカリッドは思っている。そしてこの罠に見事はまったカリッドは今、幸せであるとも思っていた。
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