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第一章:お仕事募集中です(11)
それに、求人票には性別は問わないと書いてあった。もしかしてイリヤが女性だから母親という表現をしたのだろうか。
「陛下は、聖女様を王子殿下の伴侶にと望まれている」
なるほど、とイリヤは手を打った。
「だから、聖女様が陛下のお子様であっては都合が悪いのですね」
「はじめは陛下が養女として引き取る案もあった。何よりも聖女様だからな。だが、娘であれば嫁に出さねばならないと陛下がおっしゃられ……。結婚した日のことを考えては、悲しみ始めた。血を分けた子ではないのだが、陛下にとって聖女様は娘同然だと……」
妄想が酷い。まだ一歳にも満たぬ赤ん坊の将来を想像して、悲しみに暮れるなど。しかもその赤ん坊は自身の子ではないというのに。
「だが、嫁にもらえばいいと考えたようだ。幸い、王子殿下は今年で三歳。聖女様は、見たところ生後半年程度。年齢差としても好ましい」
大人になれば二歳半の年齢差など気にもならないだろう。だが、今は赤ん坊と三歳の幼児。本人の意思が完全に無視されているようにも見える。
「さらに王子殿下は聖女様を気に入っている。聖女様も王子殿下が来られると機嫌がよいようだ……」
クライブの目が遠くを見つめた。何かを思い出したのだろう。だがそれは、けしていい思い出とはいえないやつだ。
イリヤは先を進めるために口を開く。
「とにかく。聖女様はまだ幼いため、力の制御ができない。その結果があれ、ということですね?」
「そうだ。だから、そのためにも聖女様の母親となるような者を探していた。そして、イリヤ・マーベル。お前が聖女様の母親に相応しいと、オレたちは判断した」
オレたち。そこにはクライブの他に国王であるエーヴァルトも含まれるのだろう。
イリヤは考えをめぐらす。
どちらにしろ、マーベル邸には戻れない。サブル侯爵家なんてもってのほか。
他に仕事を探したところで、見つかるとも思えない。となれば、この話はイリヤにとって願ってもいない、美味しい話なのではないだろうか。
「住み込み可と求人には書いてありましたが……」
やはり、仕事を引き受ける上で条件は大事だ。イリヤとしては衣食住の保証が欲しいところ。
「ああ。聖女様のために屋敷は準備する。だからお前もそこで一緒に暮らすようになる」
「あの……肝心のお給金は……私としては、やはり衣食住が気になりまして……」
「聖女様にかかる必要な資金は国から出る。お前にかかる金も、聖女様の必要経費としてまかなわれるはずだ」
「衣食住には困らない?」
「困るわけがない。この国が沈まぬかぎりな」
「……わかりました。是非ともこの仕事、引き受けさせてください。聖女様を立派な淑女に育て上げると約束いたします。年の離れた妹も三人おります。家庭教師の実績もあります」
自らを売り出し始めたイリヤが身を乗り出すと、クライブはやや引いた。
「ああ。お前の実績はこの紹介状を見て理解している。家のことも、わかっている……その、マーベル子爵の件は、残念だった。
申し訳ないことをした……」
「え?」
「いや、こちらの話だ……」
そこで、突然、第三者の声が割って入る。
「私が思うに」
エーヴァルトである。
「陛下。お目覚めになられたのですか?」
クライブもあきれて、顔を横に向けた。
「お前たちの話がうるさくて、寝られるわけがないだろう?」
どうやら狸寝入りをしていたようだ。
「私が思うにだな。マリアンヌが今は誰の子になっているのかを、きちんと説明すべきだと思うのだが?」
「安心してください。私一人でも、聖女様のお世話をする自信はあります」
ちっちっちっと言いながら、エーヴァルトは右手の人差し指を横に動かす。
「陛下は、聖女様を王子殿下の伴侶にと望まれている」
なるほど、とイリヤは手を打った。
「だから、聖女様が陛下のお子様であっては都合が悪いのですね」
「はじめは陛下が養女として引き取る案もあった。何よりも聖女様だからな。だが、娘であれば嫁に出さねばならないと陛下がおっしゃられ……。結婚した日のことを考えては、悲しみ始めた。血を分けた子ではないのだが、陛下にとって聖女様は娘同然だと……」
妄想が酷い。まだ一歳にも満たぬ赤ん坊の将来を想像して、悲しみに暮れるなど。しかもその赤ん坊は自身の子ではないというのに。
「だが、嫁にもらえばいいと考えたようだ。幸い、王子殿下は今年で三歳。聖女様は、見たところ生後半年程度。年齢差としても好ましい」
大人になれば二歳半の年齢差など気にもならないだろう。だが、今は赤ん坊と三歳の幼児。本人の意思が完全に無視されているようにも見える。
「さらに王子殿下は聖女様を気に入っている。聖女様も王子殿下が来られると機嫌がよいようだ……」
クライブの目が遠くを見つめた。何かを思い出したのだろう。だがそれは、けしていい思い出とはいえないやつだ。
イリヤは先を進めるために口を開く。
「とにかく。聖女様はまだ幼いため、力の制御ができない。その結果があれ、ということですね?」
「そうだ。だから、そのためにも聖女様の母親となるような者を探していた。そして、イリヤ・マーベル。お前が聖女様の母親に相応しいと、オレたちは判断した」
オレたち。そこにはクライブの他に国王であるエーヴァルトも含まれるのだろう。
イリヤは考えをめぐらす。
どちらにしろ、マーベル邸には戻れない。サブル侯爵家なんてもってのほか。
他に仕事を探したところで、見つかるとも思えない。となれば、この話はイリヤにとって願ってもいない、美味しい話なのではないだろうか。
「住み込み可と求人には書いてありましたが……」
やはり、仕事を引き受ける上で条件は大事だ。イリヤとしては衣食住の保証が欲しいところ。
「ああ。聖女様のために屋敷は準備する。だからお前もそこで一緒に暮らすようになる」
「あの……肝心のお給金は……私としては、やはり衣食住が気になりまして……」
「聖女様にかかる必要な資金は国から出る。お前にかかる金も、聖女様の必要経費としてまかなわれるはずだ」
「衣食住には困らない?」
「困るわけがない。この国が沈まぬかぎりな」
「……わかりました。是非ともこの仕事、引き受けさせてください。聖女様を立派な淑女に育て上げると約束いたします。年の離れた妹も三人おります。家庭教師の実績もあります」
自らを売り出し始めたイリヤが身を乗り出すと、クライブはやや引いた。
「ああ。お前の実績はこの紹介状を見て理解している。家のことも、わかっている……その、マーベル子爵の件は、残念だった。
申し訳ないことをした……」
「え?」
「いや、こちらの話だ……」
そこで、突然、第三者の声が割って入る。
「私が思うに」
エーヴァルトである。
「陛下。お目覚めになられたのですか?」
クライブもあきれて、顔を横に向けた。
「お前たちの話がうるさくて、寝られるわけがないだろう?」
どうやら狸寝入りをしていたようだ。
「私が思うにだな。マリアンヌが今は誰の子になっているのかを、きちんと説明すべきだと思うのだが?」
「安心してください。私一人でも、聖女様のお世話をする自信はあります」
ちっちっちっと言いながら、エーヴァルトは右手の人差し指を横に動かす。
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⚠︎この物語は全てフィクションです。
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