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第二章(5)
王太子一行がサバドの街に入ったという話は、シアの耳にも届いた。沿道にはその姿を一目見ようとたくさんの人が集まり、街は熱気に満ちていたという。コリンナでさえ、シェリーとヘリオスを連れて、豪奢な馬車が通り過ぎる様子を見に出かけたほど。
その話をシアが聞いたのは、その日の夕方。彼女はいつも通り養護院で子どもたちに勉強と剣術を教え、ヘリオスを迎えにモンクトン家の屋敷を訪れたときのことだ。
「シアも見に行けばよかったのよ。ああいうのって、一種の行事みたいなものでしょう?」
まるで全員参加の催しもののように、コリンナがさらりと口にした。
「でも、行けない子もいますし。授業もあったので……」
人混みが苦手な子もいる。全員が全員、王太子が来たからといって、それを見たいとは思わないのだ。
それに養護院では慎ましい生活をしており、そこに刺激を与えてもいけないとシアは思っていて、華やかな催しものがあったとしても、行きたい人は行けばいいし、いつもの生活を望む者にはそれを与えてあげたい。
だから普段と同じ時間に養護院へ行き、いつもと同じように勉強を教えた。ただ、生徒の数はいつもより少なかったかもしれない。
「ひと、たくさんよ~、おうまさん、ぱかぱか」
豪勢な馬車を守るようにして、馬に乗って並走する護衛の騎士の姿なんて、滅多に見られるものでもない。ヘリオスも初めて見たため、興奮しているようだ。
「毎年、王家の使いだという人たちが監査には来るけど。今回のように、王家の方が直接来られるのは二年ぶりなのよ?」
二年前には国王夫妻が、訪れた。二年前といえば、ヘリオスを出産したばかりで、養護院での仕事も休んでいた。
「それに王太子殿下が結婚されてからこちらに来られるのは初めてだし。もしかしたら、妃殿下も同伴されるかもって思っていたけれど、今、第二子を授かったところのようだし」
ランドルフは三年前に結婚し、一年半前に第一子に恵まれた。そして今、王太子妃クラリッサのお腹の中には新しい命が宿っているため、今回の視察は王太子のみとなったらしい。
「詳しいですね」
「このくらい、みんな知っているわよ。大衆紙にも書いてあるし」
大衆紙とは娯楽や噂話を取り上げる新聞のことだ。労働層には好まれているのは知っているが、コリンナが読んでいるのは意外だった。
「私だって商会長夫人ですから」
商売をしていくうえでは必要な情報だと言いたげだ。
「シアも読んでみればいいのよ。ただの噂話だと思って侮ってはいけないわ。そこから商売のヒントになることだってあるのだから」
貴族令嬢だったコリンナだが、結婚して数年が経ちすっかりと商人気質になったらしい。こちらに嫁いですぐは、お嬢様気質が抜けなかったようで苦労したとも聞いている。
「そうですね。すべての情報を鵜呑みにしない。情報を見極める力も必要ですね。今度、大衆紙を使った授業でも……?」
「あら、それは面白そうね。そのときは私も生徒として教えていただくわね。よろしく、先生」
そんなやりとりをしていると、ヘリオスがシアの手をぎゅっと握りしめてきた。
「まま、おなか、ぺこぺこよ」
「そろそろ帰ります。今日もヘリオスを見てくれてありがとうございました。シェリーも一緒に遊んでくれてありがとう」
「シェリーはお姉さまだから、これくらいは当たり前なのよ」
腰に両手を当てて胸を張っているシェリーを見たコリンナは、ぷっと吹き出す。
「もう、最近はこればかりなのよ」
シアは穏やかな笑みを浮かべ、二人に別れを告げた。
その話をシアが聞いたのは、その日の夕方。彼女はいつも通り養護院で子どもたちに勉強と剣術を教え、ヘリオスを迎えにモンクトン家の屋敷を訪れたときのことだ。
「シアも見に行けばよかったのよ。ああいうのって、一種の行事みたいなものでしょう?」
まるで全員参加の催しもののように、コリンナがさらりと口にした。
「でも、行けない子もいますし。授業もあったので……」
人混みが苦手な子もいる。全員が全員、王太子が来たからといって、それを見たいとは思わないのだ。
それに養護院では慎ましい生活をしており、そこに刺激を与えてもいけないとシアは思っていて、華やかな催しものがあったとしても、行きたい人は行けばいいし、いつもの生活を望む者にはそれを与えてあげたい。
だから普段と同じ時間に養護院へ行き、いつもと同じように勉強を教えた。ただ、生徒の数はいつもより少なかったかもしれない。
「ひと、たくさんよ~、おうまさん、ぱかぱか」
豪勢な馬車を守るようにして、馬に乗って並走する護衛の騎士の姿なんて、滅多に見られるものでもない。ヘリオスも初めて見たため、興奮しているようだ。
「毎年、王家の使いだという人たちが監査には来るけど。今回のように、王家の方が直接来られるのは二年ぶりなのよ?」
二年前には国王夫妻が、訪れた。二年前といえば、ヘリオスを出産したばかりで、養護院での仕事も休んでいた。
「それに王太子殿下が結婚されてからこちらに来られるのは初めてだし。もしかしたら、妃殿下も同伴されるかもって思っていたけれど、今、第二子を授かったところのようだし」
ランドルフは三年前に結婚し、一年半前に第一子に恵まれた。そして今、王太子妃クラリッサのお腹の中には新しい命が宿っているため、今回の視察は王太子のみとなったらしい。
「詳しいですね」
「このくらい、みんな知っているわよ。大衆紙にも書いてあるし」
大衆紙とは娯楽や噂話を取り上げる新聞のことだ。労働層には好まれているのは知っているが、コリンナが読んでいるのは意外だった。
「私だって商会長夫人ですから」
商売をしていくうえでは必要な情報だと言いたげだ。
「シアも読んでみればいいのよ。ただの噂話だと思って侮ってはいけないわ。そこから商売のヒントになることだってあるのだから」
貴族令嬢だったコリンナだが、結婚して数年が経ちすっかりと商人気質になったらしい。こちらに嫁いですぐは、お嬢様気質が抜けなかったようで苦労したとも聞いている。
「そうですね。すべての情報を鵜呑みにしない。情報を見極める力も必要ですね。今度、大衆紙を使った授業でも……?」
「あら、それは面白そうね。そのときは私も生徒として教えていただくわね。よろしく、先生」
そんなやりとりをしていると、ヘリオスがシアの手をぎゅっと握りしめてきた。
「まま、おなか、ぺこぺこよ」
「そろそろ帰ります。今日もヘリオスを見てくれてありがとうございました。シェリーも一緒に遊んでくれてありがとう」
「シェリーはお姉さまだから、これくらいは当たり前なのよ」
腰に両手を当てて胸を張っているシェリーを見たコリンナは、ぷっと吹き出す。
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