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第四章(2)
「それよりも、彼女の家族に連絡は入れたのか? シア嬢の伝書鳩を借りるか? あれだって、騎士団の鳩じゃないのか?」
やはりランドルフは鋭い。
「はぁ、まぁ……三年前、伝書鳩が一羽いなくなったという報告は受けています」
「いったい、彼女からはいくつ罪が出てくるんだ? 騎士団の伝書鳩を無断で持ち出したわけだな?」
「それは、違うかと? 殿下も見ましたよね? 鳥が彼女に向かう様子を」
昨日、視察のために港を訪れたとき。ウミネコたちが一斉にアリシアに向かってきたのだ。
「あぁ、そうだな。あれは圧巻だった」
「しかも昨夜の侵入者の動きを止めたのも、アリシアの鳩です。侵入者の顔に向かって、くちばしでつついていました」
ランドルフもなんて言葉にしたらいいのかがわからないようだ。困ったように眉間に力を込めていた。
「鳩は帰巣本能が強い生き物です。あの鳩の帰る場所がアリシアの側なのでは?」
「おまえは、シア嬢はアリシア・ガネルであると信じて疑わないのだな?」
「えぇ。そしてあの子は俺の子で間違いありません。瞳の色もそうでしたが、あの子の名前が……」
ジェイラスが言い淀むと、ランドルフが身を乗り出してきた。
「名前、だと?」
「はい。あの子の名前はヘリオスというそうです。聞いてください、殿下!」
そこでまた、ジェイラスがランドルフの手をガシッと両手で掴む。不意打ちすぎて、ランドルフも逃げる暇がなかった。
「な、なんだ! ジェイ、顔、近い。少し、離れろ!」
必死にジェイラスと距離をとろうとしているランドルフだが、残念ながらそれは叶わない。ジェイラスは、離れろと言われるたびに顔を近づけてくる。
「ヘリオス。俺の名前と似ていませんか?」
「あ? まぁ。そう言われれば、そうかもしれないか? 最後に『ス』がつくところは同じだな?」
「そうです。名前の響きが似ている。その名前は、アリシアが俺との間に子どもが生まれたらつけたい名前だと言っていたんです。彼女はそれだけは覚えていたに違いありません」
うっとりとするジェイラスは、知らぬうちに手に力を込めていたようで、ランドルフが「痛い、離せ、この馬鹿力」と言うまで気づかなかった。
「だから彼女がアリシアであることに間違いはありません!」
「だが、彼女自身、自分を証明するものを持ち合わせていない。おまえが、彼女がアリシア・ガネルだと信じたい気持ちがわかる。そのために客観的判断ができていないとも言える。だから、彼女がアリシア・ガネルと証明するためには、やはり彼女の家族の証言が必要だ。もしくは、彼女自身がその記憶を取り戻すかだな」
うぅっとジェイラスはうなだれる。
「ただ私も彼女がアリシア・ガネルで間違いないと九割方は思っている。だから、失われた記憶が利用されることを懸念している。それは理解してくれるな?」
「はい……」
ぶんぶんと尻尾を振って喜んでいたのに、叱られて萎えた大型犬のようなジェイラスの表情に、ランドルフは鼻で笑う。
「ところでジェイ。彼女の記憶が魔法で奪われたのだとしたら、犯人に心当たりはあるか?」
「はぁ、まあ、そうですね。魔法といえば、魔法師。我が国の国家魔法師が、アリシアを狙う理由はわかりません」
「となれば、やはり国外だろうな。どの国でも魔法師は貴重な存在。だからこそ、どの国でも魔法師を囲っているはずだが……」
他国がアリシアの知っている機密情報を狙っていると考えるのが無難かもしれない。
ただ、三年もの間、彼女が無事だった事実に、ジェイラスは安堵するしかない。
「だから、おまえをここに残す理由がもう一つある」
ランドルフの声色が変わった。
やはりランドルフは鋭い。
「はぁ、まぁ……三年前、伝書鳩が一羽いなくなったという報告は受けています」
「いったい、彼女からはいくつ罪が出てくるんだ? 騎士団の伝書鳩を無断で持ち出したわけだな?」
「それは、違うかと? 殿下も見ましたよね? 鳥が彼女に向かう様子を」
昨日、視察のために港を訪れたとき。ウミネコたちが一斉にアリシアに向かってきたのだ。
「あぁ、そうだな。あれは圧巻だった」
「しかも昨夜の侵入者の動きを止めたのも、アリシアの鳩です。侵入者の顔に向かって、くちばしでつついていました」
ランドルフもなんて言葉にしたらいいのかがわからないようだ。困ったように眉間に力を込めていた。
「鳩は帰巣本能が強い生き物です。あの鳩の帰る場所がアリシアの側なのでは?」
「おまえは、シア嬢はアリシア・ガネルであると信じて疑わないのだな?」
「えぇ。そしてあの子は俺の子で間違いありません。瞳の色もそうでしたが、あの子の名前が……」
ジェイラスが言い淀むと、ランドルフが身を乗り出してきた。
「名前、だと?」
「はい。あの子の名前はヘリオスというそうです。聞いてください、殿下!」
そこでまた、ジェイラスがランドルフの手をガシッと両手で掴む。不意打ちすぎて、ランドルフも逃げる暇がなかった。
「な、なんだ! ジェイ、顔、近い。少し、離れろ!」
必死にジェイラスと距離をとろうとしているランドルフだが、残念ながらそれは叶わない。ジェイラスは、離れろと言われるたびに顔を近づけてくる。
「ヘリオス。俺の名前と似ていませんか?」
「あ? まぁ。そう言われれば、そうかもしれないか? 最後に『ス』がつくところは同じだな?」
「そうです。名前の響きが似ている。その名前は、アリシアが俺との間に子どもが生まれたらつけたい名前だと言っていたんです。彼女はそれだけは覚えていたに違いありません」
うっとりとするジェイラスは、知らぬうちに手に力を込めていたようで、ランドルフが「痛い、離せ、この馬鹿力」と言うまで気づかなかった。
「だから彼女がアリシアであることに間違いはありません!」
「だが、彼女自身、自分を証明するものを持ち合わせていない。おまえが、彼女がアリシア・ガネルだと信じたい気持ちがわかる。そのために客観的判断ができていないとも言える。だから、彼女がアリシア・ガネルと証明するためには、やはり彼女の家族の証言が必要だ。もしくは、彼女自身がその記憶を取り戻すかだな」
うぅっとジェイラスはうなだれる。
「ただ私も彼女がアリシア・ガネルで間違いないと九割方は思っている。だから、失われた記憶が利用されることを懸念している。それは理解してくれるな?」
「はい……」
ぶんぶんと尻尾を振って喜んでいたのに、叱られて萎えた大型犬のようなジェイラスの表情に、ランドルフは鼻で笑う。
「ところでジェイ。彼女の記憶が魔法で奪われたのだとしたら、犯人に心当たりはあるか?」
「はぁ、まあ、そうですね。魔法といえば、魔法師。我が国の国家魔法師が、アリシアを狙う理由はわかりません」
「となれば、やはり国外だろうな。どの国でも魔法師は貴重な存在。だからこそ、どの国でも魔法師を囲っているはずだが……」
他国がアリシアの知っている機密情報を狙っていると考えるのが無難かもしれない。
ただ、三年もの間、彼女が無事だった事実に、ジェイラスは安堵するしかない。
「だから、おまえをここに残す理由がもう一つある」
ランドルフの声色が変わった。
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