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第六章(5)
「忘却の呪詛には呪具が必要で、その呪具が私の中にあると。フランクはそう言っているのですか?」
「ええ、そういうことです」
そしてその呪具を取り返すために、シアをヘバーリアへ連れていきたいようだ。
「だったら、私をここまで連れてきたように、気を失わせて、無理やりヘバーリアに連れていけばいいのでは?」
それが疑問だった。わざわざ王都内の宿を中継点にする理由がわからない。シアの中に呪具があるというのであれば、命を奪ってでも、何をしてでも取り出せばいいものを。
「僕もそうしたいとは思ったのですが。シアは呪具に守られているんです。三年前、コリンナにかけようとした忘却の呪詛が、たまたま近くにいたシアにかかってしまった……」
またコリンナだ。フランクはコリンナに忘却の呪詛をかけようとしていた。だが、なんのために? その理由がわからない。
「呪具は繊細なんですよ。あなたを殺して呪具を奪い返すことも考えたけれど、宿主が死ねば呪具も消滅する。呪具は貴重なものだから、そのために呪詛を解除して呪具を回収する方法しかないんです」
「だったら、三年前に何も知らなかった私を、そのままヘバーリアへ連れて行ったほうがよかったのではありませんか?」
「呪具の回収方法がまだ確立されていなかったのです。それがわかったのが三か月ほど前」
それはフランクが二人の関係をぐっと縮めてこようとし始めた、その時期と重なる。
「宿主を殺してはならない。宿主に魔法は効かない。そして宿主を弱らせてはならない」
だからシアが呪具に守られていると、フランクは言ったのだろう。
「あのときは焦りましたよ? まさか王太子をかばって、シアが毒矢をうけるとは……」
まさかあれにもフランクが関係していたとは。
だが、怪しい商人に裏口を教えたのはフランクで、ボブのサインが本物だと口にしたのもフランクだ。
シアはフランクの言葉を頭の中でかみ砕き、状況を整理する。
「私を王城から、誰にも気づかれずにここまで連れてきましたよね? 王城内では私にも人がつけられていたはずです。よく彼らに気づかれずに……」
ヘリオスと外に出ると視線を感じた。その視線の主をはっきりと確認はしなかったが、恐らくジェイラスがつけた護衛なのだろうと、勝手に思っていた。
「だから、呪具には呪具で対抗します。王城にいた人間が、シアを認識しないよう呪具を使いました」
「今もその呪具を?」
呪具の効果でシアの存在が認識されないのであれば、誰かが助けに来たとしても気づかれない。
「呪具だからって万能ではありません。特に、認識阻害の呪具は、効果時間と回数に制限がありますから」
シアが逃げることはないと確信しているのか、フランクはべらべらと教えてくれる。
だがシアはこういう人間を知っている。自分の知識をひけらかしたい人物。もっと注目を浴びたいという人間。
モンクトン商会では目立たず控えめなフランクだが、本来の彼の性格はこちらではないのだろうか。
となれば、彼の機嫌の良いうちに、いろいろ情報を聞き出してしまえばいい。
「もしかして、忘却の呪具も?」
「恐らくそうだろうとは言われています。ただ、シアに使ったのが初めてなので、詳しくは向こうに戻って調べないと」
「フランクは、魔法師ではないのですね?」
その質問に答えないところをみれば、彼は魔法師ではない。彼自身は魔法が使えない。
「ヘバーリアには魔法師だけでなく呪具師もいるのです」
そこでフランクがにたりと笑った。
おそらくフランクは呪具師だ。しかし、シアが記憶している限り、今ではヘバーリアでも呪具師は存在しない。呪具が禁忌に指定されてから、呪具師という呼び名も禁止されているはず。
それでも彼が呪具に精通しているのは確かである。むしろ、呪具を使っていた民族の一人ではないだろうか。
魔法師でもないシアが、呪具を扱うフランクに対抗できるわけがない。シアだって、彼がどんな呪具を持っているのかわからない。
ただ呪具の貴重性と制限を考えれば、やたらめったら使わず、ここぞというときに使う。だから、逆に脅しの材料になるのだ。
「ええ、そういうことです」
そしてその呪具を取り返すために、シアをヘバーリアへ連れていきたいようだ。
「だったら、私をここまで連れてきたように、気を失わせて、無理やりヘバーリアに連れていけばいいのでは?」
それが疑問だった。わざわざ王都内の宿を中継点にする理由がわからない。シアの中に呪具があるというのであれば、命を奪ってでも、何をしてでも取り出せばいいものを。
「僕もそうしたいとは思ったのですが。シアは呪具に守られているんです。三年前、コリンナにかけようとした忘却の呪詛が、たまたま近くにいたシアにかかってしまった……」
またコリンナだ。フランクはコリンナに忘却の呪詛をかけようとしていた。だが、なんのために? その理由がわからない。
「呪具は繊細なんですよ。あなたを殺して呪具を奪い返すことも考えたけれど、宿主が死ねば呪具も消滅する。呪具は貴重なものだから、そのために呪詛を解除して呪具を回収する方法しかないんです」
「だったら、三年前に何も知らなかった私を、そのままヘバーリアへ連れて行ったほうがよかったのではありませんか?」
「呪具の回収方法がまだ確立されていなかったのです。それがわかったのが三か月ほど前」
それはフランクが二人の関係をぐっと縮めてこようとし始めた、その時期と重なる。
「宿主を殺してはならない。宿主に魔法は効かない。そして宿主を弱らせてはならない」
だからシアが呪具に守られていると、フランクは言ったのだろう。
「あのときは焦りましたよ? まさか王太子をかばって、シアが毒矢をうけるとは……」
まさかあれにもフランクが関係していたとは。
だが、怪しい商人に裏口を教えたのはフランクで、ボブのサインが本物だと口にしたのもフランクだ。
シアはフランクの言葉を頭の中でかみ砕き、状況を整理する。
「私を王城から、誰にも気づかれずにここまで連れてきましたよね? 王城内では私にも人がつけられていたはずです。よく彼らに気づかれずに……」
ヘリオスと外に出ると視線を感じた。その視線の主をはっきりと確認はしなかったが、恐らくジェイラスがつけた護衛なのだろうと、勝手に思っていた。
「だから、呪具には呪具で対抗します。王城にいた人間が、シアを認識しないよう呪具を使いました」
「今もその呪具を?」
呪具の効果でシアの存在が認識されないのであれば、誰かが助けに来たとしても気づかれない。
「呪具だからって万能ではありません。特に、認識阻害の呪具は、効果時間と回数に制限がありますから」
シアが逃げることはないと確信しているのか、フランクはべらべらと教えてくれる。
だがシアはこういう人間を知っている。自分の知識をひけらかしたい人物。もっと注目を浴びたいという人間。
モンクトン商会では目立たず控えめなフランクだが、本来の彼の性格はこちらではないのだろうか。
となれば、彼の機嫌の良いうちに、いろいろ情報を聞き出してしまえばいい。
「もしかして、忘却の呪具も?」
「恐らくそうだろうとは言われています。ただ、シアに使ったのが初めてなので、詳しくは向こうに戻って調べないと」
「フランクは、魔法師ではないのですね?」
その質問に答えないところをみれば、彼は魔法師ではない。彼自身は魔法が使えない。
「ヘバーリアには魔法師だけでなく呪具師もいるのです」
そこでフランクがにたりと笑った。
おそらくフランクは呪具師だ。しかし、シアが記憶している限り、今ではヘバーリアでも呪具師は存在しない。呪具が禁忌に指定されてから、呪具師という呼び名も禁止されているはず。
それでも彼が呪具に精通しているのは確かである。むしろ、呪具を使っていた民族の一人ではないだろうか。
魔法師でもないシアが、呪具を扱うフランクに対抗できるわけがない。シアだって、彼がどんな呪具を持っているのかわからない。
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