【R18】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい

澤谷弥(さわたに わたる)

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第六章(11)

 ガラン、ガラン――。

 聖堂の鐘が、晴れ渡った青空に響きわたった。白い鳩の群れが輝く羽を広げ、空を舞う。
 聖堂のステンドグラスが陽光によって煌めき、祝福の光が二人を包んだ。

 ジェイラスがアリシアに結婚を申し込んで一年、いや四年が経ち、ようやく二人は結婚式を挙げた。

 その間、アリシアはケンジット公爵邸の別邸で、ヘリオスとジェイラスと共に暮らしていたが、領地に隠居したはずの公爵まで戻ってきたときには、ジェイラスもムッとしたものだ。

 それを宥めたのはアリシアで、仕事柄、家を空けることの多いジェイラスとアリシアに代わって、ヘリオスの世話を頼んでいる。いや、頼むまでもなく、公爵自らが引き受けてくれた。

 それもあってか、ヘリオスは公爵を「じいじ」と呼び、そのたびに公爵の顔がデレデレに崩れた。

「今日もヘリオスは、父にべったりだった……」

 ジェイラスが呟く声には、愛らしい嫉妬がにじむ。

「ですが……今日くらいはヘリオスのことを忘れても、罰は当たりませんよね?」

 結婚式の後は、別邸の大広間でパーティーが開かれた。今もまだ祝宴は続いているが、主役の二人は先に下がってきた。

 ヘリオスはさらに早く、公爵に抱かれて退席している。今頃二人は、仲良く夢の中だろう。

「そうだな。今日くらいは父に感謝しておくか」

 何よりも初夜と呼べるような記念すべき日なのだ。

 広間の喧騒から戻ってきた後、アリシアは侍女たちの手によって湯浴みをし、薔薇の香油で肌を磨き上げられ、透けるような薄絹の寝衣をまとった。そして寝台の柔らかなシーツに座り、ジェイラスを待っていたのだ。

「我が家の侍女たちは、腕がいいな」

 ジェイラスの視線が、アリシアの全身をゆっくりと愛でる。その目に宿る欲望に、アリシアの頬が熱くなった。

「シア……俺がこの日をどれだけ待ち望んでいたか……」

 ジェイラスの声は低く、抑えきれない情熱を帯びていた。まるで繊細なガラス細工に触れるように、彼の指がアリシアの頬をなぞる。その熱に、アリシアの身体が小さく震える。

 記憶が戻ってからというもの、毎日がめまぐるしく過ぎていった。それはもちろん二人の結婚式のためでもあるし、騎士団の仕事もあったからだ。

 ボブやコリンナには手紙を定期的に書いており、近況を伝えるのも忘れていない。
 コリンナは、アリシアの記憶が戻り、ジェイラスと結婚が決まったことを心から喜んでくれ、結婚式にも参列してくれた。

 それに今日のドレスだって、モンクトン商会が手がけたものだ。

「ラス……私も……」

 ヘリオスの母親として三年間、無我夢中で奔走していた。だけどジェイラスの前では、母ではなく女になれる。

「先に謝っておく。乱暴にするかもしれない」
「はい……」 

 彼はアリシアを求めている。劣情あふれる紫眼を見たら、アリシアの雌の部分がうずき出す。

「シア……」

 そのまま寝台に押し倒され、息もできぬほどの深い口づけに呑まれた。 

「……んっ」

 息苦しさに喘ぐと、甘い声が漏れた。

 ジェイラスの手は、アリシアの胸に触れていた。薄布越しに、乳房の柔らかさを確かめるように、ゆっくりと愛撫が始まった。彼の指先の熱に、アリシアの身体も火照り始める。お腹の奥もじわりと熱くなり、もどかしい疼きが広がる。

 彼は布地の上から乳首を口に含んだ。湿った唇の感触が、薄布を通して敏感な先端を刺激する。

「ラス……んっ……」

 ジェイラスと身体を重ねるのは初めてではない。それなのに胸の奥が高鳴り、緊張と期待に包まれる。

「はぁっ……あっ……ン」

 唾液で濡れた布のざらついた感触が、胸の先端を鋭く刺激する。もう片方の乳首をきゅっとつままれ、ぴくりと身体が跳ねた。

「やぁっ……」
「これが、感じるんだろう?」

 欲望を孕む彼の声を聴いただけで、期待と羞恥が交じり合う。

「あっ……ダメ……」

 こんなに濃厚な触れ合いは久しぶりだった。

「俺は、よく我慢ができたと思う」

 彼自身がそう口にするほど、恋人らしい濃厚な触れ合いはなかった。いつも寝るときは、ヘリオスが二人の間にいた。

 だが、公爵が気を利かせ、時折ヘリオスを自分の寝室に連れていってくれようになった。

 それでも結婚式が近づくにつれ、侍女たちからは「アリシア様の体形が変わりますから」とか、「キスマークをつけられると困りますから」とか、厳しく注意されるようになった。

 そのため結婚式の一か月前から、ジェイラスは気持ちを抑えなければならなかったのだ。それはもちろん、ジェイラスに前科があり、侍女長からこっぴどく叱られたことがあるため。

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