90 / 94
第六章(11)
ガラン、ガラン――。
聖堂の鐘が、晴れ渡った青空に響きわたった。白い鳩の群れが輝く羽を広げ、空を舞う。
聖堂のステンドグラスが陽光によって煌めき、祝福の光が二人を包んだ。
ジェイラスがアリシアに結婚を申し込んで一年、いや四年が経ち、ようやく二人は結婚式を挙げた。
その間、アリシアはケンジット公爵邸の別邸で、ヘリオスとジェイラスと共に暮らしていたが、領地に隠居したはずの公爵まで戻ってきたときには、ジェイラスもムッとしたものだ。
それを宥めたのはアリシアで、仕事柄、家を空けることの多いジェイラスとアリシアに代わって、ヘリオスの世話を頼んでいる。いや、頼むまでもなく、公爵自らが引き受けてくれた。
それもあってか、ヘリオスは公爵を「じいじ」と呼び、そのたびに公爵の顔がデレデレに崩れた。
「今日もヘリオスは、父にべったりだった……」
ジェイラスが呟く声には、愛らしい嫉妬がにじむ。
「ですが……今日くらいはヘリオスのことを忘れても、罰は当たりませんよね?」
結婚式の後は、別邸の大広間でパーティーが開かれた。今もまだ祝宴は続いているが、主役の二人は先に下がってきた。
ヘリオスはさらに早く、公爵に抱かれて退席している。今頃二人は、仲良く夢の中だろう。
「そうだな。今日くらいは父に感謝しておくか」
何よりも初夜と呼べるような記念すべき日なのだ。
広間の喧騒から戻ってきた後、アリシアは侍女たちの手によって湯浴みをし、薔薇の香油で肌を磨き上げられ、透けるような薄絹の寝衣をまとった。そして寝台の柔らかなシーツに座り、ジェイラスを待っていたのだ。
「我が家の侍女たちは、腕がいいな」
ジェイラスの視線が、アリシアの全身をゆっくりと愛でる。その目に宿る欲望に、アリシアの頬が熱くなった。
「シア……俺がこの日をどれだけ待ち望んでいたか……」
ジェイラスの声は低く、抑えきれない情熱を帯びていた。まるで繊細なガラス細工に触れるように、彼の指がアリシアの頬をなぞる。その熱に、アリシアの身体が小さく震える。
記憶が戻ってからというもの、毎日がめまぐるしく過ぎていった。それはもちろん二人の結婚式のためでもあるし、騎士団の仕事もあったからだ。
ボブやコリンナには手紙を定期的に書いており、近況を伝えるのも忘れていない。
コリンナは、アリシアの記憶が戻り、ジェイラスと結婚が決まったことを心から喜んでくれ、結婚式にも参列してくれた。
それに今日のドレスだって、モンクトン商会が手がけたものだ。
「ラス……私も……」
ヘリオスの母親として三年間、無我夢中で奔走していた。だけどジェイラスの前では、母ではなく女になれる。
「先に謝っておく。乱暴にするかもしれない」
「はい……」
彼はアリシアを求めている。劣情あふれる紫眼を見たら、アリシアの雌の部分がうずき出す。
「シア……」
そのまま寝台に押し倒され、息もできぬほどの深い口づけに呑まれた。
「……んっ」
息苦しさに喘ぐと、甘い声が漏れた。
ジェイラスの手は、アリシアの胸に触れていた。薄布越しに、乳房の柔らかさを確かめるように、ゆっくりと愛撫が始まった。彼の指先の熱に、アリシアの身体も火照り始める。お腹の奥もじわりと熱くなり、もどかしい疼きが広がる。
彼は布地の上から乳首を口に含んだ。湿った唇の感触が、薄布を通して敏感な先端を刺激する。
「ラス……んっ……」
ジェイラスと身体を重ねるのは初めてではない。それなのに胸の奥が高鳴り、緊張と期待に包まれる。
「はぁっ……あっ……ン」
唾液で濡れた布のざらついた感触が、胸の先端を鋭く刺激する。もう片方の乳首をきゅっとつままれ、ぴくりと身体が跳ねた。
「やぁっ……」
「これが、感じるんだろう?」
欲望を孕む彼の声を聴いただけで、期待と羞恥が交じり合う。
「あっ……ダメ……」
こんなに濃厚な触れ合いは久しぶりだった。
「俺は、よく我慢ができたと思う」
彼自身がそう口にするほど、恋人らしい濃厚な触れ合いはなかった。いつも寝るときは、ヘリオスが二人の間にいた。
だが、公爵が気を利かせ、時折ヘリオスを自分の寝室に連れていってくれようになった。
それでも結婚式が近づくにつれ、侍女たちからは「アリシア様の体形が変わりますから」とか、「キスマークをつけられると困りますから」とか、厳しく注意されるようになった。
そのため結婚式の一か月前から、ジェイラスは気持ちを抑えなければならなかったのだ。それはもちろん、ジェイラスに前科があり、侍女長からこっぴどく叱られたことがあるため。
聖堂の鐘が、晴れ渡った青空に響きわたった。白い鳩の群れが輝く羽を広げ、空を舞う。
聖堂のステンドグラスが陽光によって煌めき、祝福の光が二人を包んだ。
ジェイラスがアリシアに結婚を申し込んで一年、いや四年が経ち、ようやく二人は結婚式を挙げた。
その間、アリシアはケンジット公爵邸の別邸で、ヘリオスとジェイラスと共に暮らしていたが、領地に隠居したはずの公爵まで戻ってきたときには、ジェイラスもムッとしたものだ。
それを宥めたのはアリシアで、仕事柄、家を空けることの多いジェイラスとアリシアに代わって、ヘリオスの世話を頼んでいる。いや、頼むまでもなく、公爵自らが引き受けてくれた。
それもあってか、ヘリオスは公爵を「じいじ」と呼び、そのたびに公爵の顔がデレデレに崩れた。
「今日もヘリオスは、父にべったりだった……」
ジェイラスが呟く声には、愛らしい嫉妬がにじむ。
「ですが……今日くらいはヘリオスのことを忘れても、罰は当たりませんよね?」
結婚式の後は、別邸の大広間でパーティーが開かれた。今もまだ祝宴は続いているが、主役の二人は先に下がってきた。
ヘリオスはさらに早く、公爵に抱かれて退席している。今頃二人は、仲良く夢の中だろう。
「そうだな。今日くらいは父に感謝しておくか」
何よりも初夜と呼べるような記念すべき日なのだ。
広間の喧騒から戻ってきた後、アリシアは侍女たちの手によって湯浴みをし、薔薇の香油で肌を磨き上げられ、透けるような薄絹の寝衣をまとった。そして寝台の柔らかなシーツに座り、ジェイラスを待っていたのだ。
「我が家の侍女たちは、腕がいいな」
ジェイラスの視線が、アリシアの全身をゆっくりと愛でる。その目に宿る欲望に、アリシアの頬が熱くなった。
「シア……俺がこの日をどれだけ待ち望んでいたか……」
ジェイラスの声は低く、抑えきれない情熱を帯びていた。まるで繊細なガラス細工に触れるように、彼の指がアリシアの頬をなぞる。その熱に、アリシアの身体が小さく震える。
記憶が戻ってからというもの、毎日がめまぐるしく過ぎていった。それはもちろん二人の結婚式のためでもあるし、騎士団の仕事もあったからだ。
ボブやコリンナには手紙を定期的に書いており、近況を伝えるのも忘れていない。
コリンナは、アリシアの記憶が戻り、ジェイラスと結婚が決まったことを心から喜んでくれ、結婚式にも参列してくれた。
それに今日のドレスだって、モンクトン商会が手がけたものだ。
「ラス……私も……」
ヘリオスの母親として三年間、無我夢中で奔走していた。だけどジェイラスの前では、母ではなく女になれる。
「先に謝っておく。乱暴にするかもしれない」
「はい……」
彼はアリシアを求めている。劣情あふれる紫眼を見たら、アリシアの雌の部分がうずき出す。
「シア……」
そのまま寝台に押し倒され、息もできぬほどの深い口づけに呑まれた。
「……んっ」
息苦しさに喘ぐと、甘い声が漏れた。
ジェイラスの手は、アリシアの胸に触れていた。薄布越しに、乳房の柔らかさを確かめるように、ゆっくりと愛撫が始まった。彼の指先の熱に、アリシアの身体も火照り始める。お腹の奥もじわりと熱くなり、もどかしい疼きが広がる。
彼は布地の上から乳首を口に含んだ。湿った唇の感触が、薄布を通して敏感な先端を刺激する。
「ラス……んっ……」
ジェイラスと身体を重ねるのは初めてではない。それなのに胸の奥が高鳴り、緊張と期待に包まれる。
「はぁっ……あっ……ン」
唾液で濡れた布のざらついた感触が、胸の先端を鋭く刺激する。もう片方の乳首をきゅっとつままれ、ぴくりと身体が跳ねた。
「やぁっ……」
「これが、感じるんだろう?」
欲望を孕む彼の声を聴いただけで、期待と羞恥が交じり合う。
「あっ……ダメ……」
こんなに濃厚な触れ合いは久しぶりだった。
「俺は、よく我慢ができたと思う」
彼自身がそう口にするほど、恋人らしい濃厚な触れ合いはなかった。いつも寝るときは、ヘリオスが二人の間にいた。
だが、公爵が気を利かせ、時折ヘリオスを自分の寝室に連れていってくれようになった。
それでも結婚式が近づくにつれ、侍女たちからは「アリシア様の体形が変わりますから」とか、「キスマークをつけられると困りますから」とか、厳しく注意されるようになった。
そのため結婚式の一か月前から、ジェイラスは気持ちを抑えなければならなかったのだ。それはもちろん、ジェイラスに前科があり、侍女長からこっぴどく叱られたことがあるため。
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました
由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。
——皇子を産めるかどうか。
けれど私は、産めない。
ならば——
「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」
そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。
毒を盛られても、捨てられず。
皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。
「お前は、ここにいろ」
これは、子を産めない女が
ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。
そして——
その寵愛は、やがて狂気に変わる。
【R18】熱い夜の相手は王太子!? ~婚約者だと告げられましたが、記憶がございません~
世界のボボブラ汁(エロル)
恋愛
激しい夜を過ごしたあと、私は気づいてしまった。
──え……この方、誰?
相手は王太子で、しかも私の婚約者だという。
けれど私は、自分の名前すら思い出せない。
訳も分からず散った純潔、家族や自分の姿への違和感──混乱する私に追い打ちをかけるように、親友(?)が告げた。
「あなた、わたくしのお兄様と恋人同士だったのよ」
……え、私、恋人がいたのに王太子とベッドを共に!?
しかも王太子も恋人も、社交界を騒がすモテ男子。
もしかして、そのせいで私は命を狙われている?
公爵令嬢ベアトリス(?)が記憶を取り戻した先に待つのは── 愛か、陰謀か、それとも破滅か。
全米がハラハラする宮廷恋愛ストーリー……になっていてほしいですね!
※本作品はR18表現があります、ご注意ください。
夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。
MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。
記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。
旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。
屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。
旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。
記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ?
それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…?
小説家になろう様に掲載済みです。
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
【完結】記憶が戻ったら〜孤独な妻は英雄夫の変わらぬ溺愛に溶かされる〜
凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
【完全完結しました。ご愛読頂きありがとうございます!】
公爵令嬢カトリーナ・オールディスは、王太子デーヴィドの婚約者であった。
だが、カトリーナを良く思っていなかったデーヴィドは真実の愛を見つけたと言って婚約破棄した上、カトリーナが最も嫌う醜悪伯爵──ディートリヒ・ランゲの元へ嫁げと命令した。
ディートリヒは『救国の英雄』として知られる王国騎士団副団長。だが、顔には数年前の戦で負った大きな傷があった為社交界では『醜悪伯爵』と侮蔑されていた。
嫌がったカトリーナは逃げる途中階段で足を踏み外し転げ落ちる。
──目覚めたカトリーナは、一切の記憶を失っていた。
王太子命令による望まぬ婚姻ではあったが仲良くするカトリーナとディートリヒ。
カトリーナに想いを寄せていた彼にとってこの婚姻は一生に一度の奇跡だったのだ。
(記憶を取り戻したい)
(どうかこのままで……)
だが、それも長くは続かず──。
【HOTランキング1位頂きました。ありがとうございます!】
※このお話は、以前投稿したものを大幅に加筆修正したものです。
※中編版、短編版はpixivに移動させています。
※小説家になろう、ベリーズカフェでも掲載しています。
※ 魔法等は出てきませんが、作者独自の異世界のお話です。現実世界とは異なります。(異世界語を翻訳しているような感覚です)
死ぬまでに叶えたい十の願い
木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」
三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。
離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する——
二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。