普通の男子高校生ですが異世界転生したらイケメンに口説かれてますが誰を選べば良いですか?

サクラギ

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本編

21 王との謁見

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 とても広い部屋だった。
 中央の赤い絨毯に添って、白い柱が並んでいる。その奥に階段があって、その上部に王座がある。王座にはまだ人はいないが、そこに王が現れるのだろうと予想がつく。

 ブラッドが先頭、俺が後に続き、その後ろにクロードが続く。まるで罪人だと思い、その通りなのだと思った。裁かれる。この国に争いを生んだ元凶として。

 足がもつれて倒れても、誰も手を貸してくれない。立ち止まって振り返ったブラッドの視線の中、何でもないように立ち上がって、ブラッドに続いて壇上に近づく。ギャラリーが誰もいないことだけが救いだ。

 階段の数メートル手前で立ち止まり、ブラッドが自分の横に俺を置き、同じように膝を付かされる。クロードはどこにいるのかと思えば、俺よりもかなり後ろの柱の陰に座り、控えていた。

 静まり返った部屋内が緊張を呼ぶ。気が遠くなって倒れそうだけど、自分で自分を叱咤して気を張る。

 そのうち壇上に音がして、足音が聞こえて来る。数名の足音は左右から聞こえ、階段を降りたところで止まった。その次に中央の椅子に座る音が聞こえた。王が座ったのだろう。俺はずっと絨毯の模様を見ている。顔を上げるのも怖いし、見られていると思うのも怖い。

「顔を上げろ」

 階段を降りて来た者が声をかけて来る。
 思わずビクッと肩を揺らした。ブラッドを見て、同じように顔を上げる。
 段の下には兵が左右4名立っていて、その前に立つ進行役がシルヴィだった。思わず視線を向けてしまったけど、今はそんな状況じゃない。ブラッドの領で会った時とは立場が違う。

 視線を上げる。王座の方へ。
 目が合う。ずっと見られていた。背中がゾクッとした。

「おまえがシンか」

 手置きにひじを掛け、頬杖をつきながら、俺を見下している。
 獣人の王というから、どんな種族なのだろうと思っていたけど、耳も尾もない人型だった。でも雰囲気が違う。見た目は人だけど、オーラというか、気配というか、思わず逃げたくなるけど、逃げたら殺されるとわかるような、そんな感じだ。

「は、い」

 返事が遅れた。ブラッドが視線をよこして来たから、返事をするのだと気づいた。
 緊張で声が掠れた。息を付こうと、視線を下げたら、そこに足があった。足があると思った瞬間、蹴り飛ばされた。ほんとに一瞬で、何が起こったのかわからなかった。絨毯の上を滑り、柱に背をぶつけて止まった。横腹を蹴られたというのには、痛みで気づいた。

 激高した王を止めているのはブラッドだった。ブラッドがいなかったら、王は俺の方へ来て、もっと痛めつけて来ただろう。怒りが炎のように立ち上って見える気がした。荒い息遣いが獣を彷彿とさせる。

「おやめ下さい」

「うるさい!」

 俺は体勢を整え、飛ばされた柱の前で膝を付き、視線を下げた。どうして怒らせているのかわからない。でも怒りの矛先は俺に向いている。彼はこの国の王だ。彼のひとことで殺される。

「貴方の望み通りの結果が得られたのは、シンのおかげです。それなのになぜこのような……」

 ブラッドが王の足にしがみつきながら、行動を止めている。でも王は俺を睨みつけている。

「おまえを裏切るようなヤツをなぜかばう!」

「それは私とシンの問題です。王には関係ない」

 ブラッドがそう言うと、王は視線をブラッドへ向けた。

「お前が望むのなら、もう一度、新たな者を呼び寄せることもできるのだぞ! なぜあの者にこだわる!」

 召喚、という文字が頭に浮かぶ。
 そうか、また別の人を召喚することができるのだ。俺にこだわる必要はない。

「あなたもまた、前神殿長のように、彼らをもてあそぶと言うのですか?」

「はあ? まったく意味が違うだろ? 裏切ったのはあいつだ、かばう必要がどこにある?」

 今度はブラッドを蹴り飛ばす勢いだ。俺は痛む腹に手を置き、荒い息をつきながら、状況を見守っている。

「私の気持ちをお考えください」

 ブラッドが真摯な目で王を見上げる。王は怯えたような顔をして、言葉に詰まった。

「あなたは、あなたの望むものを手にしました。それは私の望むものでもあります。希望は叶えられ、世界は変わり、あなたが王になったのです。私の務めは終わり。違うのですか?」

「……それはそうだが」

 王の言葉の歯切れが悪くなる。
 立場は王の方が上なのに、関係性はブラッドの方が上に見える。

「でしたら、私の自由ではないのですか? 私にはシンが必要なのです。王は約束を違えるのですか?」

「おまえはそれで幸せになれるのか?」

 王の痛みに耐える表情が見える。ブラッドは王を見上げ、美しい顔に笑みを見せた。それはとても嬉しそうに見えて、俺は胸が痛む。

「はい」

 ブラッドが頷くと、王は見限るように視線を外し、壇上へとあがって行く。
 力任せに王座に座り、ふてぶてしく足を組む。

「シン、俺はお前を許す気はないが、ブラッドは頑固だからな、ブラッドの気が済むまでは自由にしてやる。だが覚えておけ、今後、また裏切るようなことがあれば、即座に蹴り殺してやる」

 俺は何も答えられず、痛む胸を押さえて、ただ下を向いていた。ブラッドを見ることもできない。
 ただ、何も言えなかったから、俺に本当の自由はない。それが罰だというのか。ブラッドという支配者の奴隷になって、逆らえず、生きながらえる。死を選べなかった臆病者だ。視界が歪む。蹴られた横腹と、打ち付けた背中が痛く、鼓動が耳に強く響いていた。
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