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竜殱滅
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松明のひとつが近づいて来る。絶対に見つかる。木の根元に二人だ。隠れられる訳がない。仕方なく抵抗はしませんって感じで立ち上がると、軍人の松明に照らされた。
「すみません、逃げ遅れて」
ミコトがヘラヘラと笑っている。ミコトは青い目をしているが日本人だ。こういう態度を見るとより思う。そういうカレンも変わらない。軍人とまともにやり合おうなど思いもしない。
「この先の村の者か?」
「あーえっと怪我をしていまして、休ませてもらっていた旅の者です」
竜語が通じて幸いだ。でも微妙な発音の違いがあるようで、海外の人が話す日本語のようなニュアンスで聞こえているらしいことは、カレンが寝込んでいる間に、村人とやり取りしていたミコトはわかっていた。だから旅人。でも出身国を問われたらとても困る。
「ここは危険だ。避難所はここを下った先にある街の地下だ。だが定員が決まっている。海まで抜ければ空いた船があるかもしれない」
「ありがとうございます」
「夜明けまでは軍の野営地で匿おう。来なさい」
銀の甲冑を付けた軍人の後に着いて山を下る。竜に間違われて攻撃を受けるよりはマシだが、彼らが敵か味方かわからない。しかも野営地だ。余所者をどう扱うのかわからない。
カレンとミコトは顔を見合わせて頷き合う。とにかく今は着いていくという選択肢しかなかった。
野営地に着くと、ひとつのテントに連れて行かれた。テントの中には数人の村人がいる。カレンたちと同じ、逃げ遅れた人だろう。
「ここで朝を待つように。そこに食料がある。好きに食べてくれ」
「ありがとうございます」
軍人の顔を見ることが出来た。まだ若い。たぶんミコトと同じくらいだ。
テントの端に二人で座ると、先にいた子どもがパンと水を持ってきてくれた。ありがとうと言って受け取ると、恥ずかしそうにしてから母親の方へ逃げて行った。
テントの外は赤々と眩しい。竜を焼く炎の色だ。軍人の号令や怒鳴り声が聞こえて来る。子どもはもう寝る時間だと思うが、この環境では眠れないのだろう。
水を飲んでパンを食べる。みんな家族と身を寄せ合って座っている。
「俺さ、軍人って嫌いなんだよ。弱い者は好きにして良いって思ってる奴の集まりだろ?」
ミコトは大きく息を吐き出して身を抱えた。
「ミコトは軍隊にでもいたのか?」
ミコトは施設に就職という形で入って来たと言った。施設には警備員はいたが、軍はなかった筈だ。
「軍があったんだよ。竜人を一掃して地を奪う計画。知らない?」
「ああ」
カレンは頷いた。
黒曜が言っていた話だ。それが行動に移されていた。
「黒曜っていう研究者に聞いた。でも考えだけで実行されているとは思わなかった」
「訓練はされてたよ。各国の軍と共同計画でさ、日本人なんてクソよクソ。舐められてて、嫌がらせも暴力もいっぱい受けて来た。だから竜に見染められた時、助かったと思った。竜とヤルって聞いても相手が決まってるだけマシ。まぁ結局捨てられたけどさ」
ミコトはしらっと何でもないように話す。カレンは聞いたことを何度も頭の中で繰り返し、自分の考えが間違ってないことを試した。
「それって軍ではそういった暴力が? もしかしてさっきもそういうのを警戒していた?」
カレンはミコトをじっと見る。竜の相手をしていたことは知っている。竜と交わい、性を受けて体を作り変えているから、異世界でも生きていられる。
ミコトはカレンを見て笑った。
「カレンはスレてないよな。白銀の竜の為だけに生きて来たんだろ? 竜の勉強はたくさんしたけど、こういう生活はしたことないだろ」
「そうだね」
カレンは自分に一般の常識がないことを知っている。施設から出たことがないし、過去の記憶も消されている。
ミコトはカレンを抱きしめた。ミコトの肩にカレンのおでこが乗る。
「カレンの見た目が可愛いくなったから心配なんだよ。あんまり顔を見せない方が良い。襲われたら耐えられねえだろ?」
ミコトはカレンを抱きしめて、離して、布で顔を覆う。匂い避けで付けていた布だ。
「やっぱりそんなに変わった?」
「変わった。痩せて華奢になったし、肌もつるつるで白い。そこいらの娘よりも可愛いよ」
カレンは多大な息を吐き出し、額を押さえた。
「すみません、逃げ遅れて」
ミコトがヘラヘラと笑っている。ミコトは青い目をしているが日本人だ。こういう態度を見るとより思う。そういうカレンも変わらない。軍人とまともにやり合おうなど思いもしない。
「この先の村の者か?」
「あーえっと怪我をしていまして、休ませてもらっていた旅の者です」
竜語が通じて幸いだ。でも微妙な発音の違いがあるようで、海外の人が話す日本語のようなニュアンスで聞こえているらしいことは、カレンが寝込んでいる間に、村人とやり取りしていたミコトはわかっていた。だから旅人。でも出身国を問われたらとても困る。
「ここは危険だ。避難所はここを下った先にある街の地下だ。だが定員が決まっている。海まで抜ければ空いた船があるかもしれない」
「ありがとうございます」
「夜明けまでは軍の野営地で匿おう。来なさい」
銀の甲冑を付けた軍人の後に着いて山を下る。竜に間違われて攻撃を受けるよりはマシだが、彼らが敵か味方かわからない。しかも野営地だ。余所者をどう扱うのかわからない。
カレンとミコトは顔を見合わせて頷き合う。とにかく今は着いていくという選択肢しかなかった。
野営地に着くと、ひとつのテントに連れて行かれた。テントの中には数人の村人がいる。カレンたちと同じ、逃げ遅れた人だろう。
「ここで朝を待つように。そこに食料がある。好きに食べてくれ」
「ありがとうございます」
軍人の顔を見ることが出来た。まだ若い。たぶんミコトと同じくらいだ。
テントの端に二人で座ると、先にいた子どもがパンと水を持ってきてくれた。ありがとうと言って受け取ると、恥ずかしそうにしてから母親の方へ逃げて行った。
テントの外は赤々と眩しい。竜を焼く炎の色だ。軍人の号令や怒鳴り声が聞こえて来る。子どもはもう寝る時間だと思うが、この環境では眠れないのだろう。
水を飲んでパンを食べる。みんな家族と身を寄せ合って座っている。
「俺さ、軍人って嫌いなんだよ。弱い者は好きにして良いって思ってる奴の集まりだろ?」
ミコトは大きく息を吐き出して身を抱えた。
「ミコトは軍隊にでもいたのか?」
ミコトは施設に就職という形で入って来たと言った。施設には警備員はいたが、軍はなかった筈だ。
「軍があったんだよ。竜人を一掃して地を奪う計画。知らない?」
「ああ」
カレンは頷いた。
黒曜が言っていた話だ。それが行動に移されていた。
「黒曜っていう研究者に聞いた。でも考えだけで実行されているとは思わなかった」
「訓練はされてたよ。各国の軍と共同計画でさ、日本人なんてクソよクソ。舐められてて、嫌がらせも暴力もいっぱい受けて来た。だから竜に見染められた時、助かったと思った。竜とヤルって聞いても相手が決まってるだけマシ。まぁ結局捨てられたけどさ」
ミコトはしらっと何でもないように話す。カレンは聞いたことを何度も頭の中で繰り返し、自分の考えが間違ってないことを試した。
「それって軍ではそういった暴力が? もしかしてさっきもそういうのを警戒していた?」
カレンはミコトをじっと見る。竜の相手をしていたことは知っている。竜と交わい、性を受けて体を作り変えているから、異世界でも生きていられる。
ミコトはカレンを見て笑った。
「カレンはスレてないよな。白銀の竜の為だけに生きて来たんだろ? 竜の勉強はたくさんしたけど、こういう生活はしたことないだろ」
「そうだね」
カレンは自分に一般の常識がないことを知っている。施設から出たことがないし、過去の記憶も消されている。
ミコトはカレンを抱きしめた。ミコトの肩にカレンのおでこが乗る。
「カレンの見た目が可愛いくなったから心配なんだよ。あんまり顔を見せない方が良い。襲われたら耐えられねえだろ?」
ミコトはカレンを抱きしめて、離して、布で顔を覆う。匂い避けで付けていた布だ。
「やっぱりそんなに変わった?」
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カレンは多大な息を吐き出し、額を押さえた。
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