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竜殱滅
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海辺の道は白い砂に覆われていて、丸くなった石や貝殻が落ちている。風に混じる潮の香りは現代と変らない。見え始めた海の青さも変わらなかった。
「お兄ちゃんたちも船で避難か?」
すでに山の方では戦いが始まっている。地を揺らす爆撃と爆音が轟いて来るが、海辺は至って静かな時を刻んでいる。不思議だ。海辺には竜が来ないらしい。仲間を殺された竜が怒り任せに襲って来てもおかしくない状況なのに、まわりを歩く人たちには焦りのひとつも見られない。
俺たちと一緒だな、頑張れよ、無事に逃げられると良いな、など、人々は気軽に声を掛けて通り過ぎて行く。それにミコトは笑顔を見せて返事をし、カレンは視線を下げて顔を隠している。ミコトに指摘されてから、女性にも間違えられかねない見た目を隠すようにしている。戦えるだけの体力がカレンにあれば、そんなことはしなくて済んだのだが、なにせ病み上がりだ。歩くだけで精一杯だった。
海岸には船着き場がある。海岸から沖へまっすぐに浮き道ができていて、そこを十字に二本左右に道を作っている。その道に船が停泊しているのだが、浮き道の手前で検問がされていて、腰に剣を佩いた国の兵らしき人が並ぶ人たちを監視するように見ている。
「止められるだろうな」
カレンがそう言うと、ミコトも頷く。
「乗船券があるのかな? 何か紙を渡して見せてる」
「一般の船には乗れそうにもないが、あれはどうだろう?」
カレンが見る方向に大型船が泊まっている。明らかに軍用の船だ。それも巨大。黒くて受信アンテナらしきものが出ていて、砲台が等間隔にある。その腹部分が大きく開けられていて、そこに荷物が積み込まれて行くところだ。
「荷物に紛れて乗る?」
ミコトがそう言うと、カレンが頷く。
「でも荷物を運んでいるのって軍人だよな? 周りに隠れられるものがない。軍用車から直接運び込んでいるみたいだし、無理じゃないか?」
「だがあれしか方法がないだろ? 運び込んでいるのは軍人だが、受け入れているのはどう見ても悪いヤツだろ」
「時代的に海賊?」
「漁師ではなさそうだ。それに漁師に聞いたら良いって言ったのミコトだろ? 漁師よりも適任だろ」
カレンはにんまり笑う。以前のカレンだったらおやじくさい表情になるのだろうが、今のカレンがするとオテンバな可愛い子にしか見えない。ミコトは心の中でため息を吐く。カレンはわかっていない。そんな可愛い顔で海賊のところに行く? どんな扱いを受けるか想像にたやすい。だけど軍人相手でもさして変わらない。ここは以前のカレンの容姿だった方が良かったのにと思う。貞操の心配を最優先に考えなくても済むからだ。
「早く行くぞ」
カレンはもう行く気だ。すでに荷物を運びこむ軍人に見られている。カレンとミコトを見ながら何か話をする様子が伺える。見逃しては貰えないのだろうな、とミコトは思う。
「すみませーん、お仕事お手伝いしましょうかー」
え? とミコトは固まる。えっとカレン、それはないよね? と思わずカレンの口を塞ぎたくなる。その可愛い容姿を丸出しで、手を振って軍人に近づいて行くってどういうこと? 聞いてないよ? ミコトは忘れていた。カレンが現実社会に疎いということを。危険察知能力が極端に低い。生きている場所がすでに騙された状況にあったのだ。騙されていても騙されていないようにする思考が最初から根付いている。カレンは身の危険に疎い。痛いことや怖いことの耐性が強い。傍にいるミコトは気が気ではない。カレンが白銀の竜の最愛の相手だということも、ミコトがカレンを守る理由になっている。黒竜が白銀の竜を守っているから、黒竜の相手をしていたミコトもそうすることが当たり前のように思えている。
「お兄ちゃんたちも船で避難か?」
すでに山の方では戦いが始まっている。地を揺らす爆撃と爆音が轟いて来るが、海辺は至って静かな時を刻んでいる。不思議だ。海辺には竜が来ないらしい。仲間を殺された竜が怒り任せに襲って来てもおかしくない状況なのに、まわりを歩く人たちには焦りのひとつも見られない。
俺たちと一緒だな、頑張れよ、無事に逃げられると良いな、など、人々は気軽に声を掛けて通り過ぎて行く。それにミコトは笑顔を見せて返事をし、カレンは視線を下げて顔を隠している。ミコトに指摘されてから、女性にも間違えられかねない見た目を隠すようにしている。戦えるだけの体力がカレンにあれば、そんなことはしなくて済んだのだが、なにせ病み上がりだ。歩くだけで精一杯だった。
海岸には船着き場がある。海岸から沖へまっすぐに浮き道ができていて、そこを十字に二本左右に道を作っている。その道に船が停泊しているのだが、浮き道の手前で検問がされていて、腰に剣を佩いた国の兵らしき人が並ぶ人たちを監視するように見ている。
「止められるだろうな」
カレンがそう言うと、ミコトも頷く。
「乗船券があるのかな? 何か紙を渡して見せてる」
「一般の船には乗れそうにもないが、あれはどうだろう?」
カレンが見る方向に大型船が泊まっている。明らかに軍用の船だ。それも巨大。黒くて受信アンテナらしきものが出ていて、砲台が等間隔にある。その腹部分が大きく開けられていて、そこに荷物が積み込まれて行くところだ。
「荷物に紛れて乗る?」
ミコトがそう言うと、カレンが頷く。
「でも荷物を運んでいるのって軍人だよな? 周りに隠れられるものがない。軍用車から直接運び込んでいるみたいだし、無理じゃないか?」
「だがあれしか方法がないだろ? 運び込んでいるのは軍人だが、受け入れているのはどう見ても悪いヤツだろ」
「時代的に海賊?」
「漁師ではなさそうだ。それに漁師に聞いたら良いって言ったのミコトだろ? 漁師よりも適任だろ」
カレンはにんまり笑う。以前のカレンだったらおやじくさい表情になるのだろうが、今のカレンがするとオテンバな可愛い子にしか見えない。ミコトは心の中でため息を吐く。カレンはわかっていない。そんな可愛い顔で海賊のところに行く? どんな扱いを受けるか想像にたやすい。だけど軍人相手でもさして変わらない。ここは以前のカレンの容姿だった方が良かったのにと思う。貞操の心配を最優先に考えなくても済むからだ。
「早く行くぞ」
カレンはもう行く気だ。すでに荷物を運びこむ軍人に見られている。カレンとミコトを見ながら何か話をする様子が伺える。見逃しては貰えないのだろうな、とミコトは思う。
「すみませーん、お仕事お手伝いしましょうかー」
え? とミコトは固まる。えっとカレン、それはないよね? と思わずカレンの口を塞ぎたくなる。その可愛い容姿を丸出しで、手を振って軍人に近づいて行くってどういうこと? 聞いてないよ? ミコトは忘れていた。カレンが現実社会に疎いということを。危険察知能力が極端に低い。生きている場所がすでに騙された状況にあったのだ。騙されていても騙されていないようにする思考が最初から根付いている。カレンは身の危険に疎い。痛いことや怖いことの耐性が強い。傍にいるミコトは気が気ではない。カレンが白銀の竜の最愛の相手だということも、ミコトがカレンを守る理由になっている。黒竜が白銀の竜を守っているから、黒竜の相手をしていたミコトもそうすることが当たり前のように思えている。
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