竜の卵を宿すお仕事

サクラギ

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双子島

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「当初の話だと、もう一度、腹を裂くのは止めた方が良いということだが、竜の卵を取り出すには、決まった手順がある。それを行うには竜の助けがいる」

 カレンの言葉を受けて、ナギが真剣な表情になる。

「俺は正式な形で竜の精を受けて卵を宿した訳じゃない。そうなると人のいう産道が出来ていない状態だ。その産道を付ける役割がいる。本来の産卵方法も実際は竜が付き添う。付き添ってうまく卵を導く役割を果たす」

 カレンはとてもデリケートな話をしている。本来ならば相手の竜とふたりで秘密のようにする話だ。ただカレンは竜人との付き合い方の勉強をしていた。カレンの中にあるのは実戦ではなく知識だ。だから言葉ではすんなり出る。それを想像する方の現実身を考慮していない。

「それは手助けする竜人が必要だということでしょうか?」

「本来はそういうものだと言うことだ」

 カレンにはテレも何もない。ただの知識を言葉にしただけだということを、ナギも理解はしていた。

「カレン、それって相手以外の竜人とシながら卵を産むって聞こえるんだけど? 大丈夫か?」

 ミコトの方が照れている。いったい誰を想像して話しているのかと思うのだが、カレンはそこまで気が回っていない。ただ安全に卵を産む方法を伝えただけだ。だけどミコトの疑問を聞き、やっとカレンも話の現実に頭が追いついたようだった。

「あっと、そうか、そうなると誰かに相手をしてもらわないとダメだ。生殖能力とか聞いて、俺、馬鹿だな」

 カレンは動揺を隠せない。ミコトは宥めるように肩に手を置いたが、顔が赤くなっている。カレンには珍しい反応だが、見た目が可愛くなったせいで似合っているとミコトは思う。

「俺が手助けをしよう」

 アイが立候補をする。カレンに対して跪こうとしているところをカレンが仕草で止めた。

「でもそれではナギさんが……」

 カレンは必至でアイを止め、ナギを見て申し訳なさそうにする。ナギはいたって普通だ。ふたりのやり取りを見て楽しそうに笑っている。

「私は本当にアイの相手ではないよ。私は元々、竜を守り敬う民族の末裔なんだ。竜の未来が幸せなものになって行くのなら、何だって協力するよ」

「ああ、でも俺はシアが……」

「協力するだけだ。卵が無事に生まれて来ること、その手助け以外の意図はない」

「仕方ないよ、カレン、ここにあの人がいないのが悪い。こんなことになったのはさ、ぜんぶあいつらのせいだろ? ちゃんと竜が未来に生まれる歴史を創って、堂々と元の世界に戻って、カレンの子が未来を創ったって、教えてやろうぜ?」

 ミコトがニカッと笑う。
 カレンが本当に産みたかったのはシアの卵だ。でももう叶わないかもしれない。ミコトは帰れると言うが、それが現実に思えない。ならばせめて竜人の未来を創ってあげたいと思う。
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