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双子島
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ナギに竜の渓谷へ行きたいと告げた。反対はされなかったが、アイとハクと一緒に行くことを勧められたが、カレンとミコトの間で、竜の手は借りないと決めていた。それはシアや黒竜に会いたいという思いで行くのにずるをしているようで、帰れる確率が少なくなるような気がしたからだ。どうせ挑戦するのなら、確実を求めたい。
「わかりました。ですがカレンさんの体が心配です。卵はまだ孵るのに二月ほどかかると見ていますので、もう少し安静にしてください。卵が孵ってからでも良いのではないかと……」
ナギは言葉を濁した。それはナギの希望だ。カレンとミコトが帰りたいというのなら、ナギに引き留める資格はないし、卵を連れて行くと言われても従うしかない。
「卵はお願いします。俺が産んだけど、俺では育てられない。本当は姿を見せた方が良いような気がするのだけど、見せない方が良いような気もする」
「ああ、そうだね。白銀の竜が生まれた時、カレンの姿を見て好みを決めるのかもしれないからな。カレンはどっちを望む? もし見せた方が良いと言うんなら、別に孵化を待ってからでも良いけど?」
ミコトはカレンの意志を尊重する。カレンは考える。でも出た答えは孵化を待たない方だ。白銀の竜が黒髪黒い瞳を相手としない未来が来るのなら、カレンは別の道を歩めた。普通に都内のどこかで学校に通い、普通に恋をして、生きて行けた。それが今では悔しくある。
「会わないで行く」
それにより、シアがカレンを望まないとしても。
「本当に良いのか? そうすると未来が変わって、白銀の竜と時空が繋がらなくなるかもしれない」
「ミコトには悪いけど、そうさせてくれ。シアと繋がらないとしても、元の次元とは繋がるかもしれないだろ? そうしたら、俺たちふたりで生きて行けば良い。どこかに抜け道くらい、あるよ」
ミコトは笑って見せる。精一杯、強がって。
「わかった、元の次元に戻る方が通常だもんな。カレンと一緒なら良い」
良い思い出のない現実だ。だがそれが本来いるべき場所だ。竜が関わらなければ普通の生活をしていた場所。もし白銀の竜が黒髪黒い瞳を望まなかったら、カレンが連れて行かれる未来も消えるのではないか。ミコトの未来も変わって行くのではないのか。少しだけ期待がある。体の中の竜の為の機能も消えてなくなれば良い。
「わかりました。こちらの山を下り、あちら側へ行くまでは同行させて頂きます。それからまだ数日、山を登らないといけません。人を襲うような獣はいませんが、毒を持った蛇や蜘蛛などはいます。虫よけの薬剤を用意します。それから数日暮らせるだけの食料と野宿できる用意を」
「ありがとうございます。お世話になりました」
「いいえ、それは私たちの方です。卵を授けてくださったことに感謝しています。必ず立派な成竜に育て上げ、命を継いで、未来へと繋ぐよう、努力します」
「竜戦争には参加しないでくれよ?」
カレンはそう言ってナギを抱きしめた。
「はい、わかっています。私の使命はそこにはありません。カレンさんの卵を育てて行くことを優先させます。約束します」
「うん、ありがとう。アイと仲良くね?」
カレンはそう言ってナギを離した。
「アイもありがとう」
カレンはアイに抱き着いたが、胸の辺りに頭が来る。そうしたらアイはカレンのつむじにキスをした。それがアイの言葉の代わりだった。
ミコトはカレンの行動を見守り、特に何の挨拶もなく踵を返した。ミコトはふたりの間に割り入る不安要素を残さない為にそうしたのだとカレンにはわかっていた。そしてアイの中にミコトに対する特別な何かが芽生えていることも気づいていたが触れなかった。ミコトはきっと、黒竜が黒い髪、青い瞳の相手を探す要素を残した。竜は長命だ。アイは静かにナギの傍にあり、ナギが寿命を全うするのを見守り、その死を見届けるのだろう。
「わかりました。ですがカレンさんの体が心配です。卵はまだ孵るのに二月ほどかかると見ていますので、もう少し安静にしてください。卵が孵ってからでも良いのではないかと……」
ナギは言葉を濁した。それはナギの希望だ。カレンとミコトが帰りたいというのなら、ナギに引き留める資格はないし、卵を連れて行くと言われても従うしかない。
「卵はお願いします。俺が産んだけど、俺では育てられない。本当は姿を見せた方が良いような気がするのだけど、見せない方が良いような気もする」
「ああ、そうだね。白銀の竜が生まれた時、カレンの姿を見て好みを決めるのかもしれないからな。カレンはどっちを望む? もし見せた方が良いと言うんなら、別に孵化を待ってからでも良いけど?」
ミコトはカレンの意志を尊重する。カレンは考える。でも出た答えは孵化を待たない方だ。白銀の竜が黒髪黒い瞳を相手としない未来が来るのなら、カレンは別の道を歩めた。普通に都内のどこかで学校に通い、普通に恋をして、生きて行けた。それが今では悔しくある。
「会わないで行く」
それにより、シアがカレンを望まないとしても。
「本当に良いのか? そうすると未来が変わって、白銀の竜と時空が繋がらなくなるかもしれない」
「ミコトには悪いけど、そうさせてくれ。シアと繋がらないとしても、元の次元とは繋がるかもしれないだろ? そうしたら、俺たちふたりで生きて行けば良い。どこかに抜け道くらい、あるよ」
ミコトは笑って見せる。精一杯、強がって。
「わかった、元の次元に戻る方が通常だもんな。カレンと一緒なら良い」
良い思い出のない現実だ。だがそれが本来いるべき場所だ。竜が関わらなければ普通の生活をしていた場所。もし白銀の竜が黒髪黒い瞳を望まなかったら、カレンが連れて行かれる未来も消えるのではないか。ミコトの未来も変わって行くのではないのか。少しだけ期待がある。体の中の竜の為の機能も消えてなくなれば良い。
「わかりました。こちらの山を下り、あちら側へ行くまでは同行させて頂きます。それからまだ数日、山を登らないといけません。人を襲うような獣はいませんが、毒を持った蛇や蜘蛛などはいます。虫よけの薬剤を用意します。それから数日暮らせるだけの食料と野宿できる用意を」
「ありがとうございます。お世話になりました」
「いいえ、それは私たちの方です。卵を授けてくださったことに感謝しています。必ず立派な成竜に育て上げ、命を継いで、未来へと繋ぐよう、努力します」
「竜戦争には参加しないでくれよ?」
カレンはそう言ってナギを抱きしめた。
「はい、わかっています。私の使命はそこにはありません。カレンさんの卵を育てて行くことを優先させます。約束します」
「うん、ありがとう。アイと仲良くね?」
カレンはそう言ってナギを離した。
「アイもありがとう」
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ミコトはカレンの行動を見守り、特に何の挨拶もなく踵を返した。ミコトはふたりの間に割り入る不安要素を残さない為にそうしたのだとカレンにはわかっていた。そしてアイの中にミコトに対する特別な何かが芽生えていることも気づいていたが触れなかった。ミコトはきっと、黒竜が黒い髪、青い瞳の相手を探す要素を残した。竜は長命だ。アイは静かにナギの傍にあり、ナギが寿命を全うするのを見守り、その死を見届けるのだろう。
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