竜の卵を宿すお仕事

サクラギ

文字の大きさ
63 / 68
蜜月

4

しおりを挟む
「こんなの無理! 死んじゃう!」

 次の日の朝、すっかり体を清められた状態で目覚めたミコトだったが、体が痺れて動けず、酒で頭痛を伴うという最悪な状態だった。

「わるかったな、だがミコトが望んだのだろう? 愛のあるセックスだったか?」

「そんなの最初だけだろ? いくら何でもヤリすぎだろっ? そりゃあヤリたいって言ったの俺だけど……でも限度があるだろ?」

「わかったが、嫉妬させたおまえが悪いのだろう? 俺から逃げて、別の黒竜となどと聞かされたら気が狂う。黒竜はどの竜よりも独占欲が強いんだ」

「それは! ツィが俺を捨てたせいだろ? 俺のこと、好きでもない態度だったじゃないか! それにあれは、別にそういうんじゃないし……」

「そういうのとは?」

 人用の頭痛薬をミコトの口に入れ、口移しで水を飲ませる。ツヴァイの甲斐甲斐しさはミコトにも発揮されている。

「ありがと、ってだから、あれはカレンの卵を産ませる為に協力したアイが可哀想だから相手をしてやっただけで、他意はないし。……そんなこと言うけどさ、俺の体、こんなんにしたの、ツィだろ? ……つらいの、わからないのか? ずっとひとりにされて、体だけ疼くの、もう嫌だって……」

 ツヴァイがキスをする。呼吸を奪うようなキスだが、誤魔化すつもりが見え見えだ。

「ん、んんんんん、もう、こんな時ばっかり! ホント、次はねえからな」

「わかった、これから一緒に暮らすんだろ? 体が疼いたらすぐに抱いてやる。だから浮気はするな、他の竜に触れるな、話しもするな」

「は? 厳しすぎねえ?」

 ミコトは飽きれる。最初の出会いからヤルだけの相手だった。話はするけどミコトがほとんど話していて、ツヴァイは興味もなさげだった。それなのにこの態度の違いは何だとミコトは思う。

「シャルとカレンは許してやる。だが他はいらないだろ? 違うか?」

「あーもう、極端だって! そんなんだと早く飽きるんじゃねえの?」

 ミコトが憤慨すると、ツヴァイは甘い表情で頬を撫でて来る。

「おまえは飽きるのか?」

 熱いまなざしで見られて、ミコトはテレてそっぽを向く。そっぽを向くと、許さないとツヴァイの手が頬に置かれ、引き寄せられて唇を撫でられた。

「……飽きねえけどさ」

「だったら良い」

 唇を寄せられて、観念したミコトは薄く唇を開く。それを合図にしたように、ツヴァイの舌が唇を割って中に入って来る。ずるいと思う。動けないくらい抱かれて、甘やかされて、なのにまだ甘やかそうとするツヴァイの愛は底なしだ。だけどミコトは満たされている。隙間だらけで穴あきだった心が、底なしに愛されてやっと満たされていることに気づいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした

エウラ
BL
どうしてこうなったのか。 僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。 なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい? 孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。 僕、頑張って大きくなって恩返しするからね! 天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。 突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。 不定期投稿です。 本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

処理中です...