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30 獣人国戦乱
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結局、思うのは、みんなそれぞれに魅力的だと言うことだ。
全ての身受け候補との面会を済ませて、あとの訪問は神の気分次第なのか、身受け候補の予定次第なのかわからない。
たとえばティアが会いたいと願えば会えるものなのか。そう考えて、それはないなと思う。
世界情勢は神殿にいてはわからない。たくさんの神託を下した。それだけの何かが動いているのだと思うのだけど、ティアは蚊帳の外だ。
本当に何も届いていないのだと知ったのは、アシュと三度目に会った時だ。
神子になって半年が経っていた。
「どうして? 獣人国は平和じゃないの?」
戦時中であろうとも、年に一度の参拝が義務付けられている世界だ。身受け候補は神の呼び出しに逆らえない。
アシュは肋骨を折る重傷で、傷は服の下だけど、なんとなくぎこちない動きだから白状させた。
「おまえが国にいる間、平和だったことが発端なんだろう。周辺国の妬みから戦乱に発展した」
神子が国にいたから守られていた。どうやらそうらしいと思ったのは、神子不在の影響が獣人国にだけ及ばなかったからだ。
「今も戦っているの?」
「国の北側が戦地だ。だがもう終わるだろう。心配はいらない」
神子に癒しの力があれば良いのにと思う。あの強力な塗り薬が手に入れば。
「痛いよね? アシュ」
抱きつきたいけど触れたら痛そうで、触れられない。
「まだ俺に触れようと思ってくれるのか?」
「どうして? アシュが好きだよ。傷ついて欲しくない。……王軍の隊長だから、戦場に行くの、嫌だって言えないけど、お願い、体を大事にして」
大きな手が頭を撫でてくれる。手を上げるのも痛そうなのに。
「アシュ、寝て? 僕がぜんぶしてあげる。ここにいる間は緊張を解いて欲しい」
アシュをベッドに寝かせて、服をくつろげる。肌にキスをして、下へ降りて行く。まだ昂りのない性器に舌を這わせると、大きな手が行為を止めた。
「ダメだよアシュ、ここへ呼ばれたら神子を抱くのが使命なんだよ。僕を満足させたら、戦乱も早く終わるかもしれない」
大きな手をどかし、性器を舐める。勃たなくても大きなそれは、口に入らないから、手で刺激をしながら舌先で愛撫した。
「興奮しない? 体が痛い?」
顔を上げれば、アシュが涙を流している。腕で隠された。男泣きは胸が傷む。
「大丈夫だよ、アシュ、ここには僕しかいない。ゆっくり休んで、また戻れば良いよ。戦場に立つ勇敢な姿、見たかったな」
強いアシュが負傷しているのだ。たくさんの獣人が傷ついているのかもしれない。亡くなった者も。そんな中、神に呼ばれて神殿にいるのは辛いだろう。しかもセックスを強要される。
かわいそうなアシュ。
「ごめんなさい、ぜんぶ僕のせいにして良いから」
まだ半分も勃ち上がっていないものを尻穴に入れる。香油の滑りでするんと中に収め、ゆるゆると腰を動かす。
これは自慰だ。
やりたいとも思っていないアシュの性器を勃たせ、上に乗っかり腰を振る。
「アシュ、アシュ……」
体格差があるからキスもできない。代わりにアシュの手を取り、ゴツゴツと硬い指先を舐める。
中で育って行く感覚が虚しい。生理的な排出を感じて、動きを止めた。
ゆっくり抜き、汚れをシーツで拭き取り、服を直す。ボタンまできっちり留めて、元通りにする。
「ありがとうアシュ。終結と無事を祈ってる」
アシュがキスをくれた。触れるだけの。背中を見送る。ドアが閉まる。
一度も視線が合わなかった。ティアがイっていないのにも気づいていない。後ろから精液が落ちて来る。その感覚に体が震える。
虚しくて泣ける。
でも体が快楽を求めてしまう。
中途半端な行為は火種を残したまま。自分で擦って吐き出しても、それは変わらなかった。
全ての身受け候補との面会を済ませて、あとの訪問は神の気分次第なのか、身受け候補の予定次第なのかわからない。
たとえばティアが会いたいと願えば会えるものなのか。そう考えて、それはないなと思う。
世界情勢は神殿にいてはわからない。たくさんの神託を下した。それだけの何かが動いているのだと思うのだけど、ティアは蚊帳の外だ。
本当に何も届いていないのだと知ったのは、アシュと三度目に会った時だ。
神子になって半年が経っていた。
「どうして? 獣人国は平和じゃないの?」
戦時中であろうとも、年に一度の参拝が義務付けられている世界だ。身受け候補は神の呼び出しに逆らえない。
アシュは肋骨を折る重傷で、傷は服の下だけど、なんとなくぎこちない動きだから白状させた。
「おまえが国にいる間、平和だったことが発端なんだろう。周辺国の妬みから戦乱に発展した」
神子が国にいたから守られていた。どうやらそうらしいと思ったのは、神子不在の影響が獣人国にだけ及ばなかったからだ。
「今も戦っているの?」
「国の北側が戦地だ。だがもう終わるだろう。心配はいらない」
神子に癒しの力があれば良いのにと思う。あの強力な塗り薬が手に入れば。
「痛いよね? アシュ」
抱きつきたいけど触れたら痛そうで、触れられない。
「まだ俺に触れようと思ってくれるのか?」
「どうして? アシュが好きだよ。傷ついて欲しくない。……王軍の隊長だから、戦場に行くの、嫌だって言えないけど、お願い、体を大事にして」
大きな手が頭を撫でてくれる。手を上げるのも痛そうなのに。
「アシュ、寝て? 僕がぜんぶしてあげる。ここにいる間は緊張を解いて欲しい」
アシュをベッドに寝かせて、服をくつろげる。肌にキスをして、下へ降りて行く。まだ昂りのない性器に舌を這わせると、大きな手が行為を止めた。
「ダメだよアシュ、ここへ呼ばれたら神子を抱くのが使命なんだよ。僕を満足させたら、戦乱も早く終わるかもしれない」
大きな手をどかし、性器を舐める。勃たなくても大きなそれは、口に入らないから、手で刺激をしながら舌先で愛撫した。
「興奮しない? 体が痛い?」
顔を上げれば、アシュが涙を流している。腕で隠された。男泣きは胸が傷む。
「大丈夫だよ、アシュ、ここには僕しかいない。ゆっくり休んで、また戻れば良いよ。戦場に立つ勇敢な姿、見たかったな」
強いアシュが負傷しているのだ。たくさんの獣人が傷ついているのかもしれない。亡くなった者も。そんな中、神に呼ばれて神殿にいるのは辛いだろう。しかもセックスを強要される。
かわいそうなアシュ。
「ごめんなさい、ぜんぶ僕のせいにして良いから」
まだ半分も勃ち上がっていないものを尻穴に入れる。香油の滑りでするんと中に収め、ゆるゆると腰を動かす。
これは自慰だ。
やりたいとも思っていないアシュの性器を勃たせ、上に乗っかり腰を振る。
「アシュ、アシュ……」
体格差があるからキスもできない。代わりにアシュの手を取り、ゴツゴツと硬い指先を舐める。
中で育って行く感覚が虚しい。生理的な排出を感じて、動きを止めた。
ゆっくり抜き、汚れをシーツで拭き取り、服を直す。ボタンまできっちり留めて、元通りにする。
「ありがとうアシュ。終結と無事を祈ってる」
アシュがキスをくれた。触れるだけの。背中を見送る。ドアが閉まる。
一度も視線が合わなかった。ティアがイっていないのにも気づいていない。後ろから精液が落ちて来る。その感覚に体が震える。
虚しくて泣ける。
でも体が快楽を求めてしまう。
中途半端な行為は火種を残したまま。自分で擦って吐き出しても、それは変わらなかった。
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