レアロス国の神子 〜転生したら美形な神子の弟でした〜

サクラギ

文字の大きさ
30 / 43

30 獣人国戦乱

しおりを挟む
 結局、思うのは、みんなそれぞれに魅力的だと言うことだ。

 全ての身受け候補との面会を済ませて、あとの訪問は神の気分次第なのか、身受け候補の予定次第なのかわからない。

 たとえばティアが会いたいと願えば会えるものなのか。そう考えて、それはないなと思う。

 世界情勢は神殿にいてはわからない。たくさんの神託を下した。それだけの何かが動いているのだと思うのだけど、ティアは蚊帳の外だ。

 本当に何も届いていないのだと知ったのは、アシュと三度目に会った時だ。

 神子になって半年が経っていた。

「どうして? 獣人国は平和じゃないの?」

 戦時中であろうとも、年に一度の参拝が義務付けられている世界だ。身受け候補は神の呼び出しに逆らえない。

 アシュは肋骨を折る重傷で、傷は服の下だけど、なんとなくぎこちない動きだから白状させた。

「おまえが国にいる間、平和だったことが発端なんだろう。周辺国の妬みから戦乱に発展した」

 神子が国にいたから守られていた。どうやらそうらしいと思ったのは、神子不在の影響が獣人国にだけ及ばなかったからだ。

「今も戦っているの?」

「国の北側が戦地だ。だがもう終わるだろう。心配はいらない」

 神子に癒しの力があれば良いのにと思う。あの強力な塗り薬が手に入れば。

「痛いよね? アシュ」

 抱きつきたいけど触れたら痛そうで、触れられない。

「まだ俺に触れようと思ってくれるのか?」

「どうして? アシュが好きだよ。傷ついて欲しくない。……王軍の隊長だから、戦場に行くの、嫌だって言えないけど、お願い、体を大事にして」

 大きな手が頭を撫でてくれる。手を上げるのも痛そうなのに。

「アシュ、寝て? 僕がぜんぶしてあげる。ここにいる間は緊張を解いて欲しい」

 アシュをベッドに寝かせて、服をくつろげる。肌にキスをして、下へ降りて行く。まだ昂りのない性器に舌を這わせると、大きな手が行為を止めた。

「ダメだよアシュ、ここへ呼ばれたら神子を抱くのが使命なんだよ。僕を満足させたら、戦乱も早く終わるかもしれない」

 大きな手をどかし、性器を舐める。勃たなくても大きなそれは、口に入らないから、手で刺激をしながら舌先で愛撫した。

「興奮しない? 体が痛い?」

 顔を上げれば、アシュが涙を流している。腕で隠された。男泣きは胸が傷む。

「大丈夫だよ、アシュ、ここには僕しかいない。ゆっくり休んで、また戻れば良いよ。戦場に立つ勇敢な姿、見たかったな」

 強いアシュが負傷しているのだ。たくさんの獣人が傷ついているのかもしれない。亡くなった者も。そんな中、神に呼ばれて神殿にいるのは辛いだろう。しかもセックスを強要される。

 かわいそうなアシュ。

「ごめんなさい、ぜんぶ僕のせいにして良いから」

 まだ半分も勃ち上がっていないものを尻穴に入れる。香油の滑りでするんと中に収め、ゆるゆると腰を動かす。

 これは自慰だ。
 やりたいとも思っていないアシュの性器を勃たせ、上に乗っかり腰を振る。

「アシュ、アシュ……」

 体格差があるからキスもできない。代わりにアシュの手を取り、ゴツゴツと硬い指先を舐める。

 中で育って行く感覚が虚しい。生理的な排出を感じて、動きを止めた。

 ゆっくり抜き、汚れをシーツで拭き取り、服を直す。ボタンまできっちり留めて、元通りにする。

「ありがとうアシュ。終結と無事を祈ってる」

 アシュがキスをくれた。触れるだけの。背中を見送る。ドアが閉まる。

 一度も視線が合わなかった。ティアがイっていないのにも気づいていない。後ろから精液が落ちて来る。その感覚に体が震える。

 虚しくて泣ける。
 でも体が快楽を求めてしまう。
 中途半端な行為は火種を残したまま。自分で擦って吐き出しても、それは変わらなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。 ・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。 ・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。 ・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 透夜×ロロァのお話です。 本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけを更新するかもです。 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑) 大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑) 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...