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31 寂しさの埋め合わせ

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「兄さま」

 アシュとの行為の7日後、ユリウスが来た。泣きながらが抱きつくと、抱きしめ返してくれた。

「寂しかったのですか?」

「うん」

 兄は神子の寂しさを理解している。それを知らずに去ろうとしたティアの残酷さを学んだ。兄もまた、そうしてティアの前から姿を消すのかもと不安だったけど、ちゃんと二度目があった。

 ベッドに横になり、背中側から抱き込まれる。温もりが懐かしい。

「兄さまから甘い香りがしています。硫黄? 温泉の匂いもします」

「温泉なんてよくわかりましたね」

 兄の言葉にしまったと思う。
 ただの庶民が温泉なんて知らない。しかも大陸に温泉があるのかも知らないのに。

「鬼人の国の火山が噴火した後、温泉が噴き出しました。今では観光地になっています」

「えっと、観光地って鬼人の国は暗くてジメジメしてるって聞いたけど」

 兄の手が髪を撫でてくれている。それが幸せに感じる。

「噴火によってずいぶん地形もかわって、気候の変化もあったのですよ。それに国主がかわりましたので」

 元神子を得たことで幸運を掴んだ。そんな感じだろうか。

「国主って兄さまでしょう?」

 エインが国の二番手にいる。それはなぜか。そしてエインは兄について来ている。それはきっと兄を国主に据えたからだ。

 兄の手が止まる。押し倒され、乗り上げられた。

「よく気づきました、ティアは聡いですね」

 兄が自死で神の意から外れたというのは嘘だ。神は最初から兄を囮にしてティアを神子にする計画を立てていた。兄が鬼人の気を纏っているのは、エインが関係しているのだと思う。

「兄さまは神子の意味を良く知っているでしょう? 酷く抱くことで繋がるものがあることも」

 神を喜ばせる。それが国の発展に繋がる。

「鬼人の国が豊かになるのは僕も嬉しい。僕のこと、兄さまの好きにしてください」

 腰紐を解けば、下は何も付けていない。自ら腰紐を解き、目を瞑った。

 後ろ向きにされ、腰を上げさせられる。前回の反省で、すでに後ろの準備をした。香油もたっぷり塗り込んである。最初のような裂傷にはならないだろう。

 一気に突き入れられ、揺すぶられる。
 気持ち良すぎて泣きそうになる。

「兄弟でこんなこと、嫌だと思わないのですか?」

「う、ふうっ、や、じゃないっ……兄さま、きもち、いい……」

 涙がシーツに落ちる。

「泣いているのに?」

 体を返されて、上から見られた。腰の動きは止まっていない。遠慮のない深い繋がりのまま、大きく引き抜かれ、突かれている。

「ちがう、さみしい、さみしいから……ごめ、ごめんなさい……」

 キスされる。深く唇を合わせ、角度を変えて、舌を絡ませた。

「ティアは甘えたですね」

 奥に吐き出され、膝に抱え込まれる。泣き顔を見られながら、奥を攻められる。

「にい、さま……あ、あっ、うれし、い……」

 誰もいない、誰とも話さない、神の啓示を受けるだけの生活は虚しい。

 その間に知っている者が傷ついている。一方では発展して行く。それをティアはゲームのようにしか感じられない。

 生きている実感は、こうして抱かれている時だけ。だから相手は誰だって良い。それが兄であれば安心して甘えられる。これはセックスではなく、甘えだ。生きている実感を兄に示して貰える喜び。

 狂う。
 狂って行く。
 神子は哀しく、虚しい。
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