現実に獣人がいるって異世界転移して来たんだろ?だったら俺もいつか行ける?

サクラギ

文字の大きさ
6 / 66
1章

6 可愛いしかない

しおりを挟む
 真新しい衣服に着替えたニアは、膝をついた場所に再度、座っていた。

「おいで」

 部屋の中に声を掛けると、すぐに立ち上がったニアが歩いて来て志津木の前に立った。志津木は身長175センチ。ニアの方が高い。ガタイもニアの方が良い。肩幅が違うのかと観察しながら、ニアの黒くて重そうな首輪を外した。外しながらニアの顔を確認したのは、首輪を外す意味が獣人には自由に映る為だ。初対面だ。ニアが何を思い、どう行動するのか分からない。ただ戦闘経験のある志津木だから、武器を持たないニアに負ける気が無く、そこはクリスが安心してニアを置き去りにした理由でもある。

「なるべく軽くて見た目の良い、負担の少ないものにしたけど、アレルギーもあるしね、痒かったり、痛かったりしたら教えるんだよ」

 首輪というよりはチョーカーだ。覚悟を決める為にハイブランドを用意した。仕事柄、要人のパーティーへ連れて行く事も考えられる。細い革が二重に巻き、シルバーの輪が付いている。そこにタグを付けるのだが、志津木はタグ用の鎖も用意していた。

「よく似合うよ」

 ポンポンと鎖骨あたりを叩いて、笑んで見せる。自分専用の獣人、主従関係、なるほど、少し気が大きくなる気持ちも分かる。背中に傷を付けたいとは思わないが。

「座って」

 ソファよりもキッチンのテーブルに付かせた志津木は、様子を見ながら座るニアの前に、用意しておいた食事を温め直し、置いた。

「食べよう?」

 向かいの席に座った志津木は、自分だけのものだった部屋が、ニアの存在だけでこうも変わるのかと認識する。友人が飲みに来るから、キッチンのテーブルは四人用だ。でも家族を想定した事はない。家族関係になるのが志津木の理想だ。実際に弟がいる。高校を出てから会っていないが、連絡がないのは元気な証拠だと思っている。

「好き嫌いはある? 何が好き?」

 問いかけに答えない所か、箸を持とうともしない。じっと手元を見られて、ああ、と思う。席を立ってフォークとスプーンを用意した。箸を使うのはアジア人特有で、大陸にいたというニアには馴染みがないだろう。

「ありがとうございます」

 おずおずと礼を言われ、志津木はキュンとする。正直可愛い。自分の選んだ服を着て、行動の全てを志津木に委ね、しかも見た目がタイプと来れば、とりあえず内面を知らない今は可愛いしか思えない。人ではこうは行かない。獣人であればこそなんだろうと噛み締める。背に埋め込まれたチップには人を襲えない暗示機能がある。他にも幾つか掛けられている。興奮を抑えるとか人に逆らわないとか。完全な抑制にはならないらしいが、多少は抑制されているのだと思うと、この従順さが本来のニアではないと思うのだが、チップを外す事はないので、これがニアだと認識すれば良いのか、判断に困る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜

たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話 騎士団長とのじれったい不器用BL

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

処理中です...