現実に獣人がいるって異世界転移して来たんだろ?だったら俺もいつか行ける?

サクラギ

文字の大きさ
22 / 66
1章

22 最終判断

しおりを挟む
 海岸へ着ければ何とか逃げられる。そう思いながら気持ちが疲弊している。本名がバレているという事は、実家が人質という事だ。どうやって調べた? 過去の一切を捨てた。写真も手紙も残っていない。可能性があるとすれば、実家側から志津木を探したのか。顔は変えていない。写真を持って探していたとすれば、見つかる可能性はある。でも死んだという連絡が入ったはずだ。遺体も偽装されたはず。考えても答えに辿り着かない。こうなってしまうと大事なものが多すぎる。過去の精算だろうか。罪を犯したぶんの償いをさせられている。組織の言う通りに動いただけなんだけどな。そうしないと生きられなかった。そういう言い訳だ。

「なぜ怪我をしているのですか?」

 後ろにニアが立ってた。血を失って軽く記憶が飛んでいたのかもしれない。

「かすり傷だよ、ニア。もう少し隠れてて? 追手が来てる。俺が飼い主の責任を持って逃してあげるからね、ごめんね」

「ばかですか? 僕を突き出せば良かったんだ。どこへ行っても同じなのに。どうして怪我をしてまで庇うんです? そうしなければ、僕は……僕は……」

「ごめんね。格好良く守ってやりたかったんだけど、ちょーっと想定外が多すぎて、参るよ、だからさ、せめてニアを守って死なせてくれない? 人生最高潮だって思えるから」

 息が苦しい。マジで死が目前だ。いったい何を信じれば良い? このまま生き残った所で、組織に追われて、親友に裏切られて、ニアが側にいない。なんて生きる意味のない日々か。

「ヨウは格好良いです。でも死んだらダメです。一緒に……一緒にいたいです。まだ4日です。査定の7日にも満たないのに。もう捨てるんですか?」

 船に水上バイクが近づく。陸側から来られたから沖へ逃げる。大型船の停泊する位置より離れているが、沖へ行けば大型船も追って来る。逃げ場がない。どうする。

「ニアはわかる? せめて身の安全が確保される所に」

「ヨウも一緒です」

 銃声がする。こっちは弾切れだと言うのに、容赦がない。視界が霞む。

「逃げらんねえよ、船停めろ」

 水上バイクが船尾に衝突し、スクリューが止まる。その衝撃を利用してシェンエンが乗り込んで来た。その後ろにはクリスの乗る船がある。数々の銃口が志津木を向いている。ニアが守るように立ってくれている。震えながら、泣きながら。

「撃たないで下さい。僕はどこへでも行きます。どこへ行けば良いですか?」

「俺の事守ってくれてありがとうな。ごめん、一緒にいられなくて、ごめん」

「一緒にいたいですか?」

 ニアが志津木の手を握る。血がニアの手を汚している。

「好きだ、ニア、笑った顔、見ていたかった」

 ニアの前で死ぬのは嫌で、さらには海に落ちて生還したニアの話も脳裏にあった。一瞬を突いてニアを抱え、デッキから海へ一緒に身を投げた。


◇◇◇

1章 完
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

処理中です...