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1章
21 逃げるが勝ち
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人生最高潮だと思ったのは一瞬で、呼び掛けに応えるように振り向いて、後方にいる同じくらいの船舶に乗っている人に目を向けて、時が止まったんじゃないかと思った。ついでに過去の記憶が流れて行く。
「ニアを守ってくれてありがとう。でもどうやら書類に不備があったようだ。引き取るから、こちらに寄越してくれ」
クリスだった。同じ大学に通っていて、たまたま同じ講義を受けて隣に座り、たわいもない話から仲良くなって、休みがちな志津木に講義内容を教えてくれて……いつか獣人を助ける仕事に就きたいと言っていて、目標通り、お役所の試験に受かって、獣人を斡旋する部署に就いた。誰よりも頑張り屋で人当たりが良くて、人と獣人の命の違いを同じだと熱弁したあの過去の記憶は嘘だった?
「なんでおまえがここにいる?」
纐纈が管理する情報を元に動いて来た。組織の者が志津木を追えるのは当然で、志津木を追うあの女の組織の者だったら、この場に来られただろう。でもクリスはただの役所勤めの一般人だ。銃撃戦の渦中に現れる人物ではない。志津木は額を抑えた。組織の仲間であれば立場は同じ。味方が敵になる瞬間なんて山ほど見て来た。ゴードンが来るのは想定内だ。でもクリスは少しも考えなかった。しかも志津木の過去の名前を知っている。大学の時はすでに組織の一員で、大学に行きながら組織の仕事をバイト感覚で熟していた。
「なんでって? ニアを取られたら困るからだよ」
「ニアに何の価値がある? そんなに必要だったら俺に預けなくても良かっただろう? なんで今さら——」
「仕方ないよ、おまえに預けてから価値がわかったのさ。幾つもの組織がニアを狙ってる。そうしたら何かある? って思うだろう?」
銃声。そう思った時には体が振れ、肩が熱い。撃たれたと遠くで思う。クリスに? なぜ? 船底からニアの声がする。開かないように蓋に乗る。
「大丈夫だよ、ニア。何でもないから大人しくしてて」
くそッ何もしてやれない。船、しかも小型船では逃げる場所も隠れる場所もない。なにせ前にクリス、後ろに纐纈とあの女の組織がいる。詰んだなって思いながら銃を抜いてクリスを撃つ。撃ちながら操縦しに動く。一気に速度を上げてクリスの船を掠めて行く。銃声が轟く。持っている銃弾を全部使った。肩と背に一発ずつ。でもまだマシ。内蔵に達する場所ではない。なんだろうな、これ。人生最後の山場だろうか。とりあえずクリスの船も旋回が必要な分遅れてるし、組織の大型船は陸地に近づけない。シェンエンが来るんだろうなとは思う。どうにか買収出来ないかと邪な考えがよぎる。
「ニアを守ってくれてありがとう。でもどうやら書類に不備があったようだ。引き取るから、こちらに寄越してくれ」
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「なんでおまえがここにいる?」
纐纈が管理する情報を元に動いて来た。組織の者が志津木を追えるのは当然で、志津木を追うあの女の組織の者だったら、この場に来られただろう。でもクリスはただの役所勤めの一般人だ。銃撃戦の渦中に現れる人物ではない。志津木は額を抑えた。組織の仲間であれば立場は同じ。味方が敵になる瞬間なんて山ほど見て来た。ゴードンが来るのは想定内だ。でもクリスは少しも考えなかった。しかも志津木の過去の名前を知っている。大学の時はすでに組織の一員で、大学に行きながら組織の仕事をバイト感覚で熟していた。
「なんでって? ニアを取られたら困るからだよ」
「ニアに何の価値がある? そんなに必要だったら俺に預けなくても良かっただろう? なんで今さら——」
「仕方ないよ、おまえに預けてから価値がわかったのさ。幾つもの組織がニアを狙ってる。そうしたら何かある? って思うだろう?」
銃声。そう思った時には体が振れ、肩が熱い。撃たれたと遠くで思う。クリスに? なぜ? 船底からニアの声がする。開かないように蓋に乗る。
「大丈夫だよ、ニア。何でもないから大人しくしてて」
くそッ何もしてやれない。船、しかも小型船では逃げる場所も隠れる場所もない。なにせ前にクリス、後ろに纐纈とあの女の組織がいる。詰んだなって思いながら銃を抜いてクリスを撃つ。撃ちながら操縦しに動く。一気に速度を上げてクリスの船を掠めて行く。銃声が轟く。持っている銃弾を全部使った。肩と背に一発ずつ。でもまだマシ。内蔵に達する場所ではない。なんだろうな、これ。人生最後の山場だろうか。とりあえずクリスの船も旋回が必要な分遅れてるし、組織の大型船は陸地に近づけない。シェンエンが来るんだろうなとは思う。どうにか買収出来ないかと邪な考えがよぎる。
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