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2章
2 アダマス
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深い森の中をニアの後ろに着いて歩いている。アスファルトはないが、固められた土の道が続いていて、轍が二本出来ている。こちらの乗り物は何だろうと考えるが、前を歩くニアの尾が気になって仕方がない。地面に付きそうな部分を上手に鍵に曲げて、左右にゆらゆらしているのだ。動画で見た親猫の尾で遊ぶ子猫が思い出されて、悪戯したいと思うが我慢している。
「あそこが王都です」
拓けた場所に出ると、志津木が立っている場所が高い位置だと分かる。折連なった崖の向こうに街が見えた。白い壁に囲われた王都は中央に王城を抱え、小高い丘から滑らかに下る斜面に街並みが見える。白い壁の周りにお堀があって、お堀の周りに道があり、王都を中心に街が広がり、大きな都市となっている。
「ニアの国?」
「そうです。アダマスと言います」
「アダマス」
ニアの言葉を繰り返した。ニアの耳が日を反射して光る。気になって見れば贈ったダイヤのピアスが付けられている。両耳にダイヤ、左にピンクの小花のピアスがあった。人型の耳がなくなっているから、ピアスもなくなったと思っていた。付けてくれているのはとても嬉しい。
「アダマスはダイヤモンドを意味します。これを贈られた時は過去を忘れていたから気づきませんでしたが、ヨウは良い物を贈ってくれました。ありがとう」
「いや、お礼は嬉しいけどさ、組織の金だからね」
「それでも嬉しいです」
ニアはこちらに来てからはっきり物を言う。向こうではチップの影響が大きかったのだろう。外れたからか、こちらへ戻り、記憶を取り戻したからか。どちらにしても対等に話せるのも嬉しい。
「言葉を覚えて下さい。私は今、ヨウの国の言葉を話しています。アダマス語はギリシャ語と同じ部分がある。アダマスは建国時に人が関わっていた、その名残です」
「ギリシャから転移? まぁ大陸にも獣人はいたからな」
「ひとまず都市とは離れた孤児院で暮らして貰います。先に言っておきますが、アダマスに人族は存在しません。全てを無に帰す事が本来の計画だったので」
ニアは不満そうに口を引き結ぶ。両手が握り込まれている。
「人族は消え去りました。血は多少混じり合いましたが、影響はほぼないです。ヨウの国とは勝手が違う。ヨウの国でいろいろ学びましたが、アダマスでは役立たない」
世界が違えば有りようも違う。あっちは化学が発達し、人の培養さえ出来る時代だった。倫理的に行わないだけで。
「だったら俺は残された人族に当たるのか? それとも新たな人族?」
「軽いですね」
またニアに呆れられた。ため息まで吐かれた。
「とにかく言葉を覚えて下さい。私たちは人より長命です。中でもさらに長命の者がいます。その者が孤児院にいます。その者を頼って下さい」
「ニアは? どこか行くのか?」
金に緑の目がじっと見つめて来る。相変わらず綺麗で可愛いが、こちらに来て男らしさが勝っている。凛とした雰囲気もある。
「ニア-レオパルダリ-アダマス、私の名です。アダマス王の妾腹の子。ヨウを連れ帰る事は出来ません」
「王子か、すごいな」
なるほど納得した。眩しいくらいに見違えた。所作が綺麗だったのも分かる。
「王子だったのに向こうでの扱いは酷くて悪かったな。傷が癒えて本当に良かった。俺の事は良い。適当にする。ニアはニアの思う通りに生きろ。笑って生きてくれたら俺はそれで良い」
ここは志津木にとって異世界でおとぎ話の中のようだ。まだ眠っていて夢だとしても納得できるくらいに現実味がない。本当に現実というのなら、とりあえずのんびり出来たら良いなと思うくらいだ。
「分かりました。そうさせて貰います。孤児院へ送ったら、もう会う事もないでしょう。救ってくれてありがとうヨウ。向こうの私はヨウを好きになっていました」
「光栄だ王子様」
右手を差し出したら握ってくれた。あちら式の挨拶もこれが最後かもしれない。ニアの幸せを願い、手を離した。
「あそこが王都です」
拓けた場所に出ると、志津木が立っている場所が高い位置だと分かる。折連なった崖の向こうに街が見えた。白い壁に囲われた王都は中央に王城を抱え、小高い丘から滑らかに下る斜面に街並みが見える。白い壁の周りにお堀があって、お堀の周りに道があり、王都を中心に街が広がり、大きな都市となっている。
「ニアの国?」
「そうです。アダマスと言います」
「アダマス」
ニアの言葉を繰り返した。ニアの耳が日を反射して光る。気になって見れば贈ったダイヤのピアスが付けられている。両耳にダイヤ、左にピンクの小花のピアスがあった。人型の耳がなくなっているから、ピアスもなくなったと思っていた。付けてくれているのはとても嬉しい。
「アダマスはダイヤモンドを意味します。これを贈られた時は過去を忘れていたから気づきませんでしたが、ヨウは良い物を贈ってくれました。ありがとう」
「いや、お礼は嬉しいけどさ、組織の金だからね」
「それでも嬉しいです」
ニアはこちらに来てからはっきり物を言う。向こうではチップの影響が大きかったのだろう。外れたからか、こちらへ戻り、記憶を取り戻したからか。どちらにしても対等に話せるのも嬉しい。
「言葉を覚えて下さい。私は今、ヨウの国の言葉を話しています。アダマス語はギリシャ語と同じ部分がある。アダマスは建国時に人が関わっていた、その名残です」
「ギリシャから転移? まぁ大陸にも獣人はいたからな」
「ひとまず都市とは離れた孤児院で暮らして貰います。先に言っておきますが、アダマスに人族は存在しません。全てを無に帰す事が本来の計画だったので」
ニアは不満そうに口を引き結ぶ。両手が握り込まれている。
「人族は消え去りました。血は多少混じり合いましたが、影響はほぼないです。ヨウの国とは勝手が違う。ヨウの国でいろいろ学びましたが、アダマスでは役立たない」
世界が違えば有りようも違う。あっちは化学が発達し、人の培養さえ出来る時代だった。倫理的に行わないだけで。
「だったら俺は残された人族に当たるのか? それとも新たな人族?」
「軽いですね」
またニアに呆れられた。ため息まで吐かれた。
「とにかく言葉を覚えて下さい。私たちは人より長命です。中でもさらに長命の者がいます。その者が孤児院にいます。その者を頼って下さい」
「ニアは? どこか行くのか?」
金に緑の目がじっと見つめて来る。相変わらず綺麗で可愛いが、こちらに来て男らしさが勝っている。凛とした雰囲気もある。
「ニア-レオパルダリ-アダマス、私の名です。アダマス王の妾腹の子。ヨウを連れ帰る事は出来ません」
「王子か、すごいな」
なるほど納得した。眩しいくらいに見違えた。所作が綺麗だったのも分かる。
「王子だったのに向こうでの扱いは酷くて悪かったな。傷が癒えて本当に良かった。俺の事は良い。適当にする。ニアはニアの思う通りに生きろ。笑って生きてくれたら俺はそれで良い」
ここは志津木にとって異世界でおとぎ話の中のようだ。まだ眠っていて夢だとしても納得できるくらいに現実味がない。本当に現実というのなら、とりあえずのんびり出来たら良いなと思うくらいだ。
「分かりました。そうさせて貰います。孤児院へ送ったら、もう会う事もないでしょう。救ってくれてありがとうヨウ。向こうの私はヨウを好きになっていました」
「光栄だ王子様」
右手を差し出したら握ってくれた。あちら式の挨拶もこれが最後かもしれない。ニアの幸せを願い、手を離した。
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