現実に獣人がいるって異世界転移して来たんだろ?だったら俺もいつか行ける?

サクラギ

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3章

4 意図的な転移

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 船が着岸し、船内から乗客が降りると、クリスが志津木とニアを着替えさせ、船を降りる。降りた場所はよく分からない。降りるといっても着岸した客船から海側へ、小型のモーターボートへの乗り換えだった。乗っているのは志津木とニア、クリスと操縦士がひとり。アロハを思わせる派手なシャツと白いパンツ姿の操縦士は肌が日に焼けていて、会話は英語で行われている。クリスとその男は顔馴染みのようで、妙にリラックスした態度で天気の話や景気の話をしている。

「どこへ行くのか分かっているのか?」

 拘束もされず、監禁もされない。まるで客のように船に乗せられ、沖へ向かっている。太陽は昇ったばかりで、低い位置から海波を照らし、潮風が頬を打っている。

「ヨウが聖気を得たから行ける場所」

 未だに落ち込んで見えるニアは、志津木の横に座り、膝を抱えている。ニアに着せられた服がシンプルな白シャツとカーキの7部丈のパンツで、白くて細いふくらはぎが見えていて、志津木を困らせている。
 ニアを受け入れた当初は、ニアの過ごして来た運命から救い、ごく普通の生活の中で穏やかに暮らして行けたら良いと漠然と思っていた志津木だったが、自身の生活が普通で無かった事により、ニアを幸せに出来ていない今を、細くて栄養の足りないニアの足を見て、痛感させられている。

「ヨウの得た聖気はマティアスの恩恵だ。必要な事だって分かってる。あの国での僕は……思うような僕では居られなかった」

 落ち込むニアの肩を抱いた志津木は、ニアのこめかみにキスをする。細い体はこの世界のもので、向こうの世界のニアは体つきが良く程よい筋肉もあり、目標を持った前向きな姿勢があった。それが逃亡する辺りには欠けていて、こちら側と近い状況になっていた。監禁されるくらいだ。ニアの思っていた状況にはならなかったのだろうと志津木は推測しているが。

「裏切られた——でも、殺されてしまうとは考えもしなかった」

 ニアが志津木に抱きつく。
 ニアの言葉を聞き、クーデターと漠然と言っていたが、殺されたのはニアの父親だ。殺したのは無理矢理ではあるが婚約者で、共謀犯は兄だ。

「ごめん、ニアの気持ちに気づいてやれなかった」

 ニアは首を振る。

「もう遠い国の話になった。二度と帰れない。もう良い。父王のいなくなった世界に未練はないんだ」

「父親のこと、好きだったのか?」

 ニアは国を振る。悲しそうな笑みを浮かべて、視線を遠くに馳せている。

「父王と顔を合わせたのはたった二度だよ。小さい頃、初めて貴賓の間に呼び出されて、遠い王座にいる父王を見上げた。下された命は人族の抹消と異世界の同胞を守る事だった」

 ニアの言葉を聞き、志津木は驚いた。ニアはこちらへ偶然落ちて来たのではなく、意図があり越えて来たのかと。
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