47 / 66
3章
3 離れがたい嫉妬
しおりを挟む
クリスは日本の特殊機関である組織の中の獣人保護課の役人だ。志津木とは大学の同期である。
志津木はクリスと出会った頃から学生と組織との二重生活をしていた。だからクリスの私生活までは知らない。志津木と同じように組織に属していたとしても、お互いの組織に関わりが無ければ発覚はしない。志津木の組織が個人行動優先だからもある。組織はクリスが特殊な人物と捉えていたかもしれないが、それを志津木に伝える義理はない。
「なぜお前がそんな事を言える? ただの政府の役人だろ?」
クリスの裏切りが蘇る。クリスの乗っていた船の仲間が志津木に向けて発砲してもクリスは止めなかった。しかも欲したのはニアだけ。
「俺を殺してでもニアを奪いたかった筈だ」
苦しい思いに奥歯が鳴る。
ニアが志津木の気持ちを察して、抱きついて来た。首に巻きつくニアの背を抱く。何もかも失った世界でニアだけが温かい。
「お前が不明だった三月半で事情が変わった。俺は良く分からないが、聖気を纏う者は保護対象という事らしいよ」
聖気という言葉に反応したのはニアだ。志津木の耳元で嫌だと呟いて抱きつく力を強くした。
「なぜおまえらがその言葉を知っている? ニアの世界の事情だろ?」
クリスを睨み、ニアの背を撫でる。
ニアが聖気という言葉に反応を見せるのは、ニアもまた向こうの出来事を覚えているからだ。
「ニア、俺たちは教会の瓦礫の向こうの湖に飛び込んで、こちら側に戻って来た?」
志津木の首筋に顔を埋めていたニアが顔を上げ、志津木を近い距離で見つめる。うんと頷き、キラキラの瞳に涙を浮かべる。軽い触れ合うだけのキスをされて驚いた。
見ていたクリスがため息を吐く。
「どんなスペクタクルで過激なショーを経験して来たか知らないが、日本人には赤面ものだ。いかに俺に外国の血が混じろうともね」
話はまた今度だとクリスは呆れた態度で部屋を出て行った。
「ニア?」
声を掛ければ深くキスをされて、ベッドに押し倒された。積極的なニアには馴染みがない。何を思ってこの行為なのか、志津木には分からない。
「ニア、待て、話が先だ。どうした? らしくない」
キスを拒めばニアは泣きそうな顔で抱きついて来る。肩に顔を埋めて擦り寄られ、仕方なく宥める様に背を撫でる。まさかチップによる新たな刷り込みではないかと疑った。ニアの背中の首下に触れる。そこにはチップの感触がある。やはりそうかと思う。チップの情報くらいはクリスに聞いておくんだったと後悔した。
「チップの影響か?」
せっかく本物のニアに会えたのに、チップの影響を受けているニアはニアではない。そんなニアに好かれても、受け入れる事はできない。
「違う。チップはクリスが無効化した。今の僕はただのニアだ。王子でもなく、奴隷でもない、ニアだ」
違うと首を振り、志津木の目を見つめて、泣きそうな表情で、信じてと。
「ニアは甘えただったのか?」
「違う。ヨウと離れたくないだけ。でも聖気がするヨウは嫌だ。でも必要だったから、怒れない。でも嫌だ」
ギュッと抱きつかれる。体は志津木の上から半分布団に落ちているけど、温もりに包まれているように錯覚する。
ニアが全身で離れたくないと言っているのは志津木にも分かる。聖気が何を示しているのか、ニアには分かっている。
マティアスに手を出すなと言ったニアを思い出した。
志津木はクリスと出会った頃から学生と組織との二重生活をしていた。だからクリスの私生活までは知らない。志津木と同じように組織に属していたとしても、お互いの組織に関わりが無ければ発覚はしない。志津木の組織が個人行動優先だからもある。組織はクリスが特殊な人物と捉えていたかもしれないが、それを志津木に伝える義理はない。
「なぜお前がそんな事を言える? ただの政府の役人だろ?」
クリスの裏切りが蘇る。クリスの乗っていた船の仲間が志津木に向けて発砲してもクリスは止めなかった。しかも欲したのはニアだけ。
「俺を殺してでもニアを奪いたかった筈だ」
苦しい思いに奥歯が鳴る。
ニアが志津木の気持ちを察して、抱きついて来た。首に巻きつくニアの背を抱く。何もかも失った世界でニアだけが温かい。
「お前が不明だった三月半で事情が変わった。俺は良く分からないが、聖気を纏う者は保護対象という事らしいよ」
聖気という言葉に反応したのはニアだ。志津木の耳元で嫌だと呟いて抱きつく力を強くした。
「なぜおまえらがその言葉を知っている? ニアの世界の事情だろ?」
クリスを睨み、ニアの背を撫でる。
ニアが聖気という言葉に反応を見せるのは、ニアもまた向こうの出来事を覚えているからだ。
「ニア、俺たちは教会の瓦礫の向こうの湖に飛び込んで、こちら側に戻って来た?」
志津木の首筋に顔を埋めていたニアが顔を上げ、志津木を近い距離で見つめる。うんと頷き、キラキラの瞳に涙を浮かべる。軽い触れ合うだけのキスをされて驚いた。
見ていたクリスがため息を吐く。
「どんなスペクタクルで過激なショーを経験して来たか知らないが、日本人には赤面ものだ。いかに俺に外国の血が混じろうともね」
話はまた今度だとクリスは呆れた態度で部屋を出て行った。
「ニア?」
声を掛ければ深くキスをされて、ベッドに押し倒された。積極的なニアには馴染みがない。何を思ってこの行為なのか、志津木には分からない。
「ニア、待て、話が先だ。どうした? らしくない」
キスを拒めばニアは泣きそうな顔で抱きついて来る。肩に顔を埋めて擦り寄られ、仕方なく宥める様に背を撫でる。まさかチップによる新たな刷り込みではないかと疑った。ニアの背中の首下に触れる。そこにはチップの感触がある。やはりそうかと思う。チップの情報くらいはクリスに聞いておくんだったと後悔した。
「チップの影響か?」
せっかく本物のニアに会えたのに、チップの影響を受けているニアはニアではない。そんなニアに好かれても、受け入れる事はできない。
「違う。チップはクリスが無効化した。今の僕はただのニアだ。王子でもなく、奴隷でもない、ニアだ」
違うと首を振り、志津木の目を見つめて、泣きそうな表情で、信じてと。
「ニアは甘えただったのか?」
「違う。ヨウと離れたくないだけ。でも聖気がするヨウは嫌だ。でも必要だったから、怒れない。でも嫌だ」
ギュッと抱きつかれる。体は志津木の上から半分布団に落ちているけど、温もりに包まれているように錯覚する。
ニアが全身で離れたくないと言っているのは志津木にも分かる。聖気が何を示しているのか、ニアには分かっている。
マティアスに手を出すなと言ったニアを思い出した。
1
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜
たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話
騎士団長とのじれったい不器用BL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる