現実に獣人がいるって異世界転移して来たんだろ?だったら俺もいつか行ける?

サクラギ

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3章

3 離れがたい嫉妬

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 クリスは日本の特殊機関である組織の中の獣人保護課の役人だ。志津木とは大学の同期である。
 志津木はクリスと出会った頃から学生と組織との二重生活をしていた。だからクリスの私生活までは知らない。志津木と同じように組織に属していたとしても、お互いの組織に関わりが無ければ発覚はしない。志津木の組織が個人行動優先だからもある。組織はクリスが特殊な人物と捉えていたかもしれないが、それを志津木に伝える義理はない。

「なぜお前がそんな事を言える? ただの政府の役人だろ?」

 クリスの裏切りが蘇る。クリスの乗っていた船の仲間が志津木に向けて発砲してもクリスは止めなかった。しかも欲したのはニアだけ。

「俺を殺してでもニアを奪いたかった筈だ」

 苦しい思いに奥歯が鳴る。
 ニアが志津木の気持ちを察して、抱きついて来た。首に巻きつくニアの背を抱く。何もかも失った世界でニアだけが温かい。

「お前が不明だった三月半で事情が変わった。俺は良く分からないが、聖気を纏う者は保護対象という事らしいよ」

 聖気という言葉に反応したのはニアだ。志津木の耳元で嫌だと呟いて抱きつく力を強くした。

「なぜおまえらがその言葉を知っている? ニアの世界の事情だろ?」

 クリスを睨み、ニアの背を撫でる。
 ニアが聖気という言葉に反応を見せるのは、ニアもまた向こうの出来事を覚えているからだ。

「ニア、俺たちは教会の瓦礫の向こうの湖に飛び込んで、こちら側に戻って来た?」

 志津木の首筋に顔を埋めていたニアが顔を上げ、志津木を近い距離で見つめる。うんと頷き、キラキラの瞳に涙を浮かべる。軽い触れ合うだけのキスをされて驚いた。
 見ていたクリスがため息を吐く。

「どんなスペクタクルで過激なショーを経験して来たか知らないが、日本人には赤面ものだ。いかに俺に外国の血が混じろうともね」

 話はまた今度だとクリスは呆れた態度で部屋を出て行った。

「ニア?」

 声を掛ければ深くキスをされて、ベッドに押し倒された。積極的なニアには馴染みがない。何を思ってこの行為なのか、志津木には分からない。

「ニア、待て、話が先だ。どうした? らしくない」

 キスを拒めばニアは泣きそうな顔で抱きついて来る。肩に顔を埋めて擦り寄られ、仕方なく宥める様に背を撫でる。まさかチップによる新たな刷り込みではないかと疑った。ニアの背中の首下に触れる。そこにはチップの感触がある。やはりそうかと思う。チップの情報くらいはクリスに聞いておくんだったと後悔した。

「チップの影響か?」

 せっかく本物のニアに会えたのに、チップの影響を受けているニアはニアではない。そんなニアに好かれても、受け入れる事はできない。

「違う。チップはクリスが無効化した。今の僕はただのニアだ。王子でもなく、奴隷でもない、ニアだ」

 違うと首を振り、志津木の目を見つめて、泣きそうな表情で、信じてと。

「ニアは甘えただったのか?」

「違う。ヨウと離れたくないだけ。でも聖気がするヨウは嫌だ。でも必要だったから、怒れない。でも嫌だ」

 ギュッと抱きつかれる。体は志津木の上から半分布団に落ちているけど、温もりに包まれているように錯覚する。
 ニアが全身で離れたくないと言っているのは志津木にも分かる。聖気が何を示しているのか、ニアには分かっている。
 マティアスに手を出すなと言ったニアを思い出した。
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