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13 爽やかは生活水準に作られるものかも

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 出来る男っていうのは何も告げられないうちから先回りして察知して、当たり前の顔をして平然と手助けが出来る男のことなのだと思う。

 ハルは出来る男だ。一晩一緒に居ただけでもわかる。しかも余裕のある暮らしをしている。出会ってすぐに個人情報を根掘り葉掘り聞き出すのもどうかと思うから、極力質問を控えているんだけど。だいたい本名も知らない。そこら辺を探ればDMくらいありそうだし、ここの正確な住所とか本名とか探せるんだろうけど。ハルが俺の事をどう思っているのか分からないし、俺がどうしたいのかも分からないから、結果、穏便に流そうとしている。

「マスターに頼まれたんだろ?」

 明太子おにぎりを食べながら、カウンターの隣に座るハルを盗み見る。朝から爽やかってどういう事? 完全に熟睡していたから、隣に寝ていたらしいハルがどんなだったか知らないけど、普通はさ、息が臭くなったり、無精髭が生えたり、髪がぐしゃぐしゃになったり、涎とか、顔が浮腫むとか、無いの? っていうかこれ全部俺だからね。さっき顔洗うついでに髭剃らせてもらったからね、その前にハルは頬にキスしたんだ、考えられねえ。

「頼まれたっていうか、俺が頼んで教えて貰った感じ」

「なんで?」

「可愛いと思ったから?」

 いやいやそれは無いよ。元々が普通っていうか存在が薄いっていうか。確かに中高ん時はそれなりにモテたよ? 姉がいるから清潔にとか服はこれ着ろとか言って、買い物の荷物持ちに連れ回されたりしたし。そういう時に姉の友人に揶揄われて手出されたりしてたし。それも結構なトラウマになってて、姉みたいな強気な女が苦手になってるし。で、清楚系な可愛い子に惹かれて付き合ったんだけど。女って中身は同じなの? そりゃヤるからには気持ちよくなりたいとかあると思うけど。でもさ、夢は持ちたい男心。

「1回目の時、すれ違ったの知らないよね。あの時から狙ってたよ」

 視線合わせられて輝くような笑顔を見せられた。ハル、テレてる? ちょっと顔赤いかも。可愛いとか思うとか。毒されてる気がする。

「狙って貰えるほどとは思えないけど」

「普通が好きなんだよね」

 ってハルが笑う。

「普通にその変にいる普通の男が好き。一緒にスポーツしたり映画見たりカフェ行ったりしたい。で、俺の前でだけ乱れてくれたら最高だと思ってる」

 ドキッとする。ハルの目が真剣になった。でも笑って隠している。

「ユウキはまだわからないでしょ? だから良いよ。もし溜まって、自分じゃどうにも出来ないって思ったら、連絡して? 遊びに誘ってくれたら嬉しい。まずはそれくらいの関係なら許してくれる?」

 付き合おうとか、体だけの関係を求められるとか、そういうのよりは気安いけど。俺なんかで良いのっていう思いの方が強い。

「俺、面倒だっただろ?」

 あんなのセックスじゃない。介護に等しいと思うのだけど。
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