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番外編 Lillyでの実証 2
しおりを挟む※ユウキ視点
◇◇◇
ハルが神経質になってる。俺がモテる? そんな訳がない。そう言ったら、そんな事はないと言い張るから、じゃあLillyでどれだけ声を掛けられるか試そうって事になった。なんていうか、ハルは心配性すぎる。っていうか、ハルがいるのにゲイバーなんて行かない。別に男が好きって訳じゃない。性的なあれこれがダメで、ハルだけが例外なんだから、そういう点では安心しかないのに。最近、ハル以外の距離が近いと言われたけど、それもハルがいるから、他はジャガイモくらいに思えるようになったから。誰かに好かれようとか思わないし、性的あれこれも解消してるし、ハル以外に必要ないイコール他はみんな同じ方式なのに。
「ここ、初めて?」
Lillyに来て、カレンに挨拶して、ハルと離れた。店の奥、でも階段付近は何となく怖いから、反対側の壁際に行った。手にはライムのお酒。知らない人に声を掛けられて驚く。
「何度か来たことあるよ」
サラリーマンかな? スーツを着ている。30前後くらいかな。
「じゃあ、たまたま会わなかったんだね」
「うん、そうかもね」
「相手はいる?」
えっと、全然タイプじゃない時はどうしたら良い? ノウハウくらい聞いておけば良かった。
「うん、いるよ」
これでOK?
「今日は? 息抜きに来た? それとも楽しみに?」
ダメみたい。会話が続く。やっぱり以前のハルみたいに、態度全部で拒絶しないとダメ? そういうの苦手だから、やっぱり俺にはこういう場なんて無理だ。
「違うよ。彼氏、店内にいるから」
もう面倒。これって一応声掛けられたって事? なんか違う気がする。俺がモテるって思うのは、本気の告白を何人からも言われる事で、こんな下心しか見えない相手にモテたとは言わないよ。
「ユウキ?」
名前を呼ばれて視線を移すと、ハルとは違うイケメンが近づいて来る。
「俺、リュウ、ハルの友達な」
「あーうん、初めまして」
内心で助かったと思った。リュウは俺の手を引いてくれるついでに、サラリーマンを視線で牽制してくれた。ボックス席に連れて行かれて、座らされる。
「ハルの彼氏なんだろ? さっき聞いた」
「ここに来た理由も?」
そう言ったらリュウはクックッと笑う。ハルが爽やかイケメンなら、リュウは陰のあるイケメンだ。黒中心の服にゴツいアクセいっぱい付けてる。
「聞いたぜ? ユウキがモテるかどうか検証してんだろ? モテてよかったな?」
「えーどこが? さっきの人の事なら、一回遊ぼう? って誘いでしょ? そういうのモテたとは言わないよ」
お酒を飲み干したら、リュウが手を挙げて、一緒で良い? って聞いてくれて、グラス奪われて、新しいの注文してくれた。手慣れている。さすがハルの友達。
「一回遊ぶのも誘われない子、いっぱいいるのに贅沢じゃねえ?」
「贅沢って。ハルが彼氏ってだけでもう贅沢だよ。他はいらないし、どうでも良いって、ハルには伝わらなくて」
はあってため息ついたらリュウに笑われた。
「ハルがおまえみたいなタイプに落ち着くとは思わなかった」
「やっぱり? 俺って平凡すぎるよね? なんで俺が良いのか、ずっと疑問のままだよ」
テーブルに腕を置いて、横向きで話して来るリュウもまた、距離が近い。これはあれだ。前にここで以前のハルを演じて貰った時のハルの距離と同じだ。
「ハルが落ち着くとかねえって思ってたけど、ユウキが相手ならわかる気もするぜ?」
横からじっと見られてる。観察されてるがあってるかも。
「えー怖いな。ハルは普通が良いって言ってくれるけど、そんな人いっぱいいるから」
黒いエプロンの店員がお酒を運んでくれた。ライムのお酒、爽やかで美味しい。
「確かに普通のヤツはいっぱいいるけど、普通のヤツがゲイでネコで、自分の好みで? それで自分を好きになってくれる確率って低いと思わねえ?」
リュウの言った事をうーんって考える。お酒のせいで思考が緩い。
「そうなんだけど、それで言うと、自分の好みっていう部分が当てはまらないって思うんだよ。ハルって狙った相手にフラれた事ないでしょ? ハルを断るなんて考えられないし」
そう言ったらリュウに髪をくしゃくしゃに撫でられた。これもハルと似てる。友達って行動も似るのかな?
「ユウキがそう思うのは、ユウキがハルを好きだからだ。ハルはそんな好かれるタイプじゃねえよ。一夜限りの相手には困らねえ程度だって」
「それは以前の話しでしょ?」
「以前のハル知ってんの?」
「うん、ここで再現してもらった事あるよ」
そう言ったらリュウが腹を抱えて笑った。そんなにおかしい? ちょっとした好奇心だったんだけど。
「マジで? サイテーだったろ? ハルのやり方は俺でもヒクし。でもさ、ハルが変わったのはユウキがいるからだろ? ユウキがいるから落ち着いていられるんだと思うぜ? 俺にあった対抗心も消え去ってたし。ホント、おまえで良かった」
おまえすげえよって、また頭を撫でられた。
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