あの~、ちょっといいですか?

佐土原いづる

文字の大きさ
21 / 47
リコーン編

別れ

しおりを挟む
カスタに向かうとしてもこのまま突っ込んだら帝国兵が無差別に襲ってくる。あいつら、本当は災いをもたらす者なんてどうでもいいんじゃないだろうか。

アーヤは俺に抱き着いたまま、みんな終始無言だった。回り道をしてカスタから少し離れた所に船を着ける。

カスタに到着すると、多くの帝国兵が駐留していた。血は流れていない、さすがに災いをもたらす者が居るとされる場所以外は攻撃していないようだ。

ふぅ。深呼吸して近くの帝国兵に話しかける。リコーンにいた兵士と鎧が少し違う、ちょっと上の役職なのだろう。

「あの~、ちょっといいですか?」

「どうした?」

「俺、災いをもたらす者っぽいんですけど~」

「なんだと!? こっちに来い!」

俺は帝国兵に連れられて歩いている。でも、思ったより普通だ。
災いをもたらす者が出てきたって言ってるのに手すら縛らないなんて。

「あの~、思ったより何もないんですけど・・・」

「うん? 俺もよくわからんが、『もし、災いをもたらす者を捕らえることができた場合、丁重に私の所に連れてくるように』とハイウェル様から仰せつかっている。」

「そうなんですね」

どういうことだ?意味が分からない。たくさんの人を殺しておいて、目的の人間が見つかったというのに丁重になんて。

「お前たちはなんだ?」帝国兵が俺以外の3人に気づいたようだ

「私、リコーンで医者をやっているジャスミンと申します。この男、過去の記憶を失っており、自分が災いをもたらす者かもしれないと言うので、私たちで連れてきました。」

ジャスミンがすばやく応答する。

「そうか、君たちにも話を聞かせてもらおう」うまく一緒に話ができるようにするあたり、さすがジャスミンだ。

まもなくして、見た感じ確実に指揮官ぽい人の前に連れて行かれた。渋い顔の、まさに智将という顔立ちをしている。

「ハイウェル様、災いをもたらす者と自称する男を連れてまいりました」

「そうか。はぁ、見つかったか。 彼をこちらに」

俺含め女性陣もハイウェルさんの前に通される

「君が、災いをもたらす者だと?」何もかも見透かされそうな目だ

「まだわかりません。しかし、自分はつい最近、何もわからない状態でクルト付近で目を覚ましました。この世界の物ではない道具を持っており、行く所がことごとく帝国軍に攻撃されているので、もしかして自分が災いをもたらす者なんじゃないかと思った次第です。」

「この世の物ではない道具?」

「これです」スマホを取り出す

「これは何だね?」

「自分にもわかりません、記憶が無いもので。文字も読めないんです。何かを映し出す道具のようですが」説得力を持たせるにはこの手を使うのが良いだろうと判断した。調べられた所で大したことはわからないだろうし、電波も無いんじゃ使いどころもほとんどないからな。

「どうぞ」ハイウェルさんにスマホを渡す。

「ふむ。まさか自分から名乗り出るとはな、進んで汚名を被ろうとするなど普通は考えられん。怪しいと思っておったが、君が災いをもたらす者である可能性は十分考えられるだろう」スマホを見ながら話す。

「君には帝国の城に来てもらう。調査をした後、君が災いをもたらす者であるならば、おそらく公開処刑になるだろう。これだけの事をしてしまった。既に各地で帝国に対する暴動が起き始めている、民の怒りを鎮めるにはこの方法しかあるまい」

「その代わり、すぐにこの侵略行為を止めてもらえませんか? 災いをもたらす者が現れたのならもう必要ないはずです。自分が言うのもおこがましいですが、やり過ぎでしょう?そりゃ暴動も起きますよ」

「貴様!ハイウェル様に口答えする気か!!」周りの兵士が剣を抜く

「待たんか!!!!」ハイウェルさんの一言で一瞬で静かになる

「この者の言う事はもっともだ。私はこの作戦の指揮者、もとより地獄に落ちる覚悟はできておる。だが、私にはやらなければならない事があるのだ。災いをもたらす者を見つけ出す必要が、、」

何やら裏がありそうな発言をするなぁ

「災いをもたらす者は捕らえられた。すぐに軍を引き上げさせろ」

「は!」兵士の1人が駆けだしていった。

「これでいいだろう。ところで、そっちの君たちは。何か知っていることがあるのではないのか?」
ハイウェルさんがアーヤたちに話を振る。

「私はジャスミン、医者をやっている者です。この男は記憶もそうですが、現在肩に大きな傷を負っています。この薬で炎症を抑えなければまだ危険な状態です。持たせてください」ジャスミンが俺の服を少し脱がせて説明する。

「わかった。薬の所持を許可しよう。次はそなただ、目が泣き腫らしているようだが」ハイウェルさんがアーヤに話を振る。アーヤはずっとうつむいている、後ろからレーナさんが支えてくれている。

「この子はクルトの侵略に巻き込まれて声が出せなくなりました。災いをもたらす者と帝国軍の指揮官、並々ならぬ思いがあるはずです」

「そうであったか、、。辛かっただろうが、謝罪はしない。全てを背負うつもりだ。わかってもらおうとも思っていない。」ハイウェルさんが答える

「私は何も無いよ」レーナさんが先に言う

「そうか、詳しいことは城に戻らないとわからない。すぐに出発しよう」ハイウェルさんの一言で兵士が準備に入る

「ここでお別れだな」みんなの方を振り向く

「エンシ・・・、気をつけて。」ジャスミンが呟く

「しっかりな」レーナさん

「アーヤ、声、出るようにしてやれなくてごめんな」

そう言うとアーヤがおもむろに紙に何かを書いてこっちに来た

アーヤに優しく抱きしめられる。

「やめろよ・・・、つらく、なっちゃうだろ、、、」涙がこぼれそうになる

アーヤが紙を俺のぐるぐる巻きの包帯の間に挟んだ。

少しこっちを見つめた後、ジャスミンたちのところに戻っていく

俺も方向を変えて帝国軍の馬車に向かう。俺、これからどうなるんだろう・・・

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
エンシと別れてカスタを歩くアーヤ、ジャスミン、レーナ

「アーヤ、レーナ、わかってるわね?」ジャスミンが問う

「もちろんさ。あいつが災いをもたらす者だろうがなんだろうが、このまま終わったんじゃ私のプライドが許さないよ」

アーヤの顔も決意に満ちている

帝国軍の侵攻を止めるにはこうするしかなかった、でもエンシを見捨てるなんてこれっぽっちも思ってない。

「エンシを・・・助けるんだ!」




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた

今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。 レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。 不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。 レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。 それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し…… ※短め

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

《完結》悪役聖女

ヴァンドール
ファンタジー
聖女になり、王妃となるため十年間も教育を受けて来たのに蓋を開ければ妹が聖女の力を持っていて私はには聖女の力が無かった。そのため祖国を追放されて隣国へと旅立ったがそこで……

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

処理中です...