30 / 114
MMM(トリプルエム)の心霊騒動
幽霊と一緒にいるって実感って中々湧かないね
しおりを挟む
空間魔法を解除された時から俺には秋那の姿が見えないのでどうしようかとキョロキョロしていると、立花が俺の顔をじっと見た。
「心配いらない。秋那さんが見えるように私が処置を施す」
そういうがはやく立花は俺に思いっ切り(なのかどうか知らんが)顔面にパンチした。
「いってぇ! 何すんだよ立花っ?」
鼻がへし折れそうな痛みだ。
これほどの痛みのパンチは、小さい頃近所の子を泣かせてくらった親父の鉄拳制裁並だ。
「あなたに処置を施した」
立花に謝罪の言葉を期待した俺が馬鹿だったようだ。立花が俺に謝ってきた時なんて初めて会った時以来1度もない。
「どんな処置なんだ? 」
「簡易滞留式視覚的魔力確認型保持エネルギー増強性持続眼球接続形魔力カバーを取り付けた。これでしばらくは死者召喚型現地弊害形電磁波的現地干渉性魔人の視認が可能になる」
文字にしてみると中国語にしか見えない。会話の中に平仮名が少なすぎるなんて普通ないだろう。立花が普通じゃないってのもあるんだが。
まあ話はよく分からんが秋那が見えるようになったってことだ。それさえ分かれば別にいいだろう。俺のリスニング力の無さと理解力の無さでは早瀬がいくら簡単に説明してくれたって分からんかもしれんのだ。
ようやく見えるようになった秋那の存在を確認した俺は、このクソ寒い中クソ夜中の道を歩かなければならないらしい。
「ねぇみんな。今日はもうかなりおそいからお開きにしましょ? 明日は土曜日だから秋那さんの調査は明日からっていうか今日か……今日の昼くらいにするってことにして」
「……わかしました。今日はありがとうございました」
残念そうな顔をした秋那は学校に戻ろうとトボトボと歩いていった。それを凄い勢いで望月が止める。
「どこに行く気なの? 秋那ちゃん! 」
「どこって……学校の中庭に……」
「家に来て! 私が招待するよ! 」
家主の俺は招待なんざした覚えないんだが。
「記憶を取り戻すまで私の家で居候したらいいじゃん! そっちの方が絶対楽しいよ!」
居候してるやつが同居人を増やそうとするな。せめて最終的な決定権を俺に譲ってくれないのだろうか。ほとんど望月の家になってきてるじゃないか。
そんな俺の心の声を望月は知る由もないだろう。
「ねぇマスター! どう? 」
しょうがねえな……。
望月の超新星爆発のようなはじける笑顔には勝てなかった。
「わかったよ……一時的なら俺ん家もなんとかなるだろうしな。どうする? 秋那」
「じゃあ……よろしく」
照れるように顔を赤らめて何故か俺に握手を求めた。俺は釣られるように握手して、新たな同居人を家に連れて帰った。
翌日。というかその日の正午過ぎ。
帰ってきて早々眠ってしまった望月をなんとか叩き起こして、俺たちは秋那の記憶をリバース大作戦(望月命名)を実行するべく出発したのだった。
それにしても自分で言うのもなんだが、俺って相当お人好しだと思う。特に恩を受けたわけでもないのに初対面の幽霊の記憶を取り戻すためにあれこれするなんて魔法少女以外しないだろう。
「なぁ立花」
「なに」
「俺たちが今からやろうとしていることってなんか意味あるのか? 」
「今からやろうとしていることとは? 」
「いやぁーえっとあれだ。秋那の記憶巡りだよ」
立花が聞き返してきたので俺はちょっと動揺した。
今からやろうとしていることを本当に知らなかったわけじゃないのに。
「有意義ではある」
「そうなのか? 」
「そう」
「どんな感じで? 」
「死者召喚型現地弊害形電磁波的現地干渉性魔人は死者のマイナスエネルギーを元にして召喚されたもの」
それは何回も聞いた。
「死者の記憶を保持した死者召喚型現地弊害形電磁波的現地干渉性魔人は死者に成り代わって死者が生前にやりたかったことをやろうとする場合が多い。ただしそれを行うと、死者が残したマイナスエネルギーが消滅するので死者召喚型現地弊害形電磁波的現地干渉性魔人はこの世界に残留することが出来なくなる。マイナスエネルギーを失った死者召喚型現地弊害形電磁波的現地干渉性魔人は魔界へと帰る。つまりこの世界から消滅する」
久しぶりに難しい単語が少なかったので俺でもある程度理解出来た。なるほどなるほど……。
「それってつまり成仏するってことか? 」
「宗教的な言葉を使うなら成仏すると言える」
それなら有意義ではあるな。秋那の成仏に尽力しようとするか。
最初に俺たちがやって来たのは秋那が生前事故の後居候してたのいう家だった。だがそこは既に秋那の知る家ではなくなっていた。長い年月が経ってしまったせいで家主が変わり、新たな家主がリフォームをしてしまったようだ。
新築されたばかりの家みたいに見える家は、秋那が居候していた頃の姿ではなくなっていた。
当然秋那の記憶が蘇るわけでもなく、俺たちは路頭に迷うこととなった。
「どうしよう……? 」
「そうだな……事故にあった場所を覚えているか? 」
「えっと……ついてきて! 」
困ってたと言うよりけっこう楽しそうな秋那は俺たちの遥か前を走っていった。
やって来たのは来た道を引き返して着いた駅だった。俺たちは定期を使って上り列車に乗り込み、港町の駅で降りた。
「こっちよ」
秋那が指さした方向は、憎むべきアホ西田と立花が勘違いデートをした場所だった。
早瀬も俺も望月も一瞬ビクッとしたが、当の立花は相変わらず無表情だ。
そして秋那は絶句した。
「…………変わってる…………」
どうやら長い年月が経ってしまったせいでここも変わってしまったようだ。
これではもう他に秋那の記憶がない限り打つ手がない。
「ねぇ。この近くで秋那ちゃんが事故に巻き込まれたってことは、秋那ちゃんはこの近くに住んでいた可能性が高くない? 」
「そっか! 私が覚えている頃の景色はこんな観光できるような場所じゃなかったもんね! 」
一体秋那っていつの時代に生きてたんだろうか。この辺が観光できるようなとこじゃなかった頃って相当前のはずだぞ。
その頃だと今から何年前だ……?
「とりあえずこの辺をうろついたらいいんじゃない? そうしたら記憶もきっと蘇ると思うわ」
何故かキラキラした目で工藤が秋那に言った。
「ショッピングもいいですね~」
白鳥までもが目を輝かせている。遊びたいだけだっていうのが丸わかりだ。
「ダメよ弥生。秋那の記憶を取り戻すためにここまで来たんだから。まぁでも……もしかしたらショッピングしてる所に記憶を取り戻すための鍵がないとも限らないからね……ショッピングしましょう」
「やった~! 」
「言っとくけど仕方なくなんだからね! 秋那のためなんだからね! 私は……行きたくていくんじゃないんだからね! 」
素直に行きたいと言えばいいのに……。
俺と早瀬はすっかり呆れ顔だ。望月は白鳥と一緒にはしゃぎ始めた。
工藤は顔を赤らめながらもテンションが滝上りだ。メダカが滝を登って伝説の麒麟になったくらいのテンションの高さになっている。
「秋那ちゃんも一緒に行こうよ! 」
「ふにゃあぁっ! 」
白鳥の歩幅と工藤の歩幅では工藤の歩幅の方が2.5倍くらい大きいので、引っ張られた白鳥の足がもつれてこけるのは当然だろう。
それにしてもなんで工藤の方が歩幅が大きいのだろうか。秋那だって小走りになっている。望月くらいしかまともに追いついていないようだ。
秋那の記憶はどうなるのかすっかり忘れていった3人は同時に足をもつらせて大コケした。
これ以上変なことで目立つことは勘弁だ。
秋那の記憶めぐりの旅が終了していないことを案じながら俺は小走りに工藤たちのあとを追った。
「心配いらない。秋那さんが見えるように私が処置を施す」
そういうがはやく立花は俺に思いっ切り(なのかどうか知らんが)顔面にパンチした。
「いってぇ! 何すんだよ立花っ?」
鼻がへし折れそうな痛みだ。
これほどの痛みのパンチは、小さい頃近所の子を泣かせてくらった親父の鉄拳制裁並だ。
「あなたに処置を施した」
立花に謝罪の言葉を期待した俺が馬鹿だったようだ。立花が俺に謝ってきた時なんて初めて会った時以来1度もない。
「どんな処置なんだ? 」
「簡易滞留式視覚的魔力確認型保持エネルギー増強性持続眼球接続形魔力カバーを取り付けた。これでしばらくは死者召喚型現地弊害形電磁波的現地干渉性魔人の視認が可能になる」
文字にしてみると中国語にしか見えない。会話の中に平仮名が少なすぎるなんて普通ないだろう。立花が普通じゃないってのもあるんだが。
まあ話はよく分からんが秋那が見えるようになったってことだ。それさえ分かれば別にいいだろう。俺のリスニング力の無さと理解力の無さでは早瀬がいくら簡単に説明してくれたって分からんかもしれんのだ。
ようやく見えるようになった秋那の存在を確認した俺は、このクソ寒い中クソ夜中の道を歩かなければならないらしい。
「ねぇみんな。今日はもうかなりおそいからお開きにしましょ? 明日は土曜日だから秋那さんの調査は明日からっていうか今日か……今日の昼くらいにするってことにして」
「……わかしました。今日はありがとうございました」
残念そうな顔をした秋那は学校に戻ろうとトボトボと歩いていった。それを凄い勢いで望月が止める。
「どこに行く気なの? 秋那ちゃん! 」
「どこって……学校の中庭に……」
「家に来て! 私が招待するよ! 」
家主の俺は招待なんざした覚えないんだが。
「記憶を取り戻すまで私の家で居候したらいいじゃん! そっちの方が絶対楽しいよ!」
居候してるやつが同居人を増やそうとするな。せめて最終的な決定権を俺に譲ってくれないのだろうか。ほとんど望月の家になってきてるじゃないか。
そんな俺の心の声を望月は知る由もないだろう。
「ねぇマスター! どう? 」
しょうがねえな……。
望月の超新星爆発のようなはじける笑顔には勝てなかった。
「わかったよ……一時的なら俺ん家もなんとかなるだろうしな。どうする? 秋那」
「じゃあ……よろしく」
照れるように顔を赤らめて何故か俺に握手を求めた。俺は釣られるように握手して、新たな同居人を家に連れて帰った。
翌日。というかその日の正午過ぎ。
帰ってきて早々眠ってしまった望月をなんとか叩き起こして、俺たちは秋那の記憶をリバース大作戦(望月命名)を実行するべく出発したのだった。
それにしても自分で言うのもなんだが、俺って相当お人好しだと思う。特に恩を受けたわけでもないのに初対面の幽霊の記憶を取り戻すためにあれこれするなんて魔法少女以外しないだろう。
「なぁ立花」
「なに」
「俺たちが今からやろうとしていることってなんか意味あるのか? 」
「今からやろうとしていることとは? 」
「いやぁーえっとあれだ。秋那の記憶巡りだよ」
立花が聞き返してきたので俺はちょっと動揺した。
今からやろうとしていることを本当に知らなかったわけじゃないのに。
「有意義ではある」
「そうなのか? 」
「そう」
「どんな感じで? 」
「死者召喚型現地弊害形電磁波的現地干渉性魔人は死者のマイナスエネルギーを元にして召喚されたもの」
それは何回も聞いた。
「死者の記憶を保持した死者召喚型現地弊害形電磁波的現地干渉性魔人は死者に成り代わって死者が生前にやりたかったことをやろうとする場合が多い。ただしそれを行うと、死者が残したマイナスエネルギーが消滅するので死者召喚型現地弊害形電磁波的現地干渉性魔人はこの世界に残留することが出来なくなる。マイナスエネルギーを失った死者召喚型現地弊害形電磁波的現地干渉性魔人は魔界へと帰る。つまりこの世界から消滅する」
久しぶりに難しい単語が少なかったので俺でもある程度理解出来た。なるほどなるほど……。
「それってつまり成仏するってことか? 」
「宗教的な言葉を使うなら成仏すると言える」
それなら有意義ではあるな。秋那の成仏に尽力しようとするか。
最初に俺たちがやって来たのは秋那が生前事故の後居候してたのいう家だった。だがそこは既に秋那の知る家ではなくなっていた。長い年月が経ってしまったせいで家主が変わり、新たな家主がリフォームをしてしまったようだ。
新築されたばかりの家みたいに見える家は、秋那が居候していた頃の姿ではなくなっていた。
当然秋那の記憶が蘇るわけでもなく、俺たちは路頭に迷うこととなった。
「どうしよう……? 」
「そうだな……事故にあった場所を覚えているか? 」
「えっと……ついてきて! 」
困ってたと言うよりけっこう楽しそうな秋那は俺たちの遥か前を走っていった。
やって来たのは来た道を引き返して着いた駅だった。俺たちは定期を使って上り列車に乗り込み、港町の駅で降りた。
「こっちよ」
秋那が指さした方向は、憎むべきアホ西田と立花が勘違いデートをした場所だった。
早瀬も俺も望月も一瞬ビクッとしたが、当の立花は相変わらず無表情だ。
そして秋那は絶句した。
「…………変わってる…………」
どうやら長い年月が経ってしまったせいでここも変わってしまったようだ。
これではもう他に秋那の記憶がない限り打つ手がない。
「ねぇ。この近くで秋那ちゃんが事故に巻き込まれたってことは、秋那ちゃんはこの近くに住んでいた可能性が高くない? 」
「そっか! 私が覚えている頃の景色はこんな観光できるような場所じゃなかったもんね! 」
一体秋那っていつの時代に生きてたんだろうか。この辺が観光できるようなとこじゃなかった頃って相当前のはずだぞ。
その頃だと今から何年前だ……?
「とりあえずこの辺をうろついたらいいんじゃない? そうしたら記憶もきっと蘇ると思うわ」
何故かキラキラした目で工藤が秋那に言った。
「ショッピングもいいですね~」
白鳥までもが目を輝かせている。遊びたいだけだっていうのが丸わかりだ。
「ダメよ弥生。秋那の記憶を取り戻すためにここまで来たんだから。まぁでも……もしかしたらショッピングしてる所に記憶を取り戻すための鍵がないとも限らないからね……ショッピングしましょう」
「やった~! 」
「言っとくけど仕方なくなんだからね! 秋那のためなんだからね! 私は……行きたくていくんじゃないんだからね! 」
素直に行きたいと言えばいいのに……。
俺と早瀬はすっかり呆れ顔だ。望月は白鳥と一緒にはしゃぎ始めた。
工藤は顔を赤らめながらもテンションが滝上りだ。メダカが滝を登って伝説の麒麟になったくらいのテンションの高さになっている。
「秋那ちゃんも一緒に行こうよ! 」
「ふにゃあぁっ! 」
白鳥の歩幅と工藤の歩幅では工藤の歩幅の方が2.5倍くらい大きいので、引っ張られた白鳥の足がもつれてこけるのは当然だろう。
それにしてもなんで工藤の方が歩幅が大きいのだろうか。秋那だって小走りになっている。望月くらいしかまともに追いついていないようだ。
秋那の記憶はどうなるのかすっかり忘れていった3人は同時に足をもつらせて大コケした。
これ以上変なことで目立つことは勘弁だ。
秋那の記憶めぐりの旅が終了していないことを案じながら俺は小走りに工藤たちのあとを追った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
18
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる