魔法少女の魔法少女による魔法少女のためのご主人様幸せ化計画

円田時雨

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MMM(トリプルエム)のリアルローリングプレイゲームタイム

エピソード5

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 6つ目の遺跡をクリアした俺たちは新たに工藤と早瀬を仲間に加えようと道端で口論を続けていた。
 早瀬は俺たちの提案に快諾してくれたのだが、工藤は時間がかかりそうだ。どうやら工藤の様子を見る限り、仲間になるのはいいがあの暗い遺跡の小部屋に行くくらいなら仲間にならない方がマシだという。そんな感じの様子だ。
 ただ工藤の言ってることはまるっきり正反対なのだが。
「なんであんた達の仲間にならないといけないの? 私は単独プレイが好きなの! いちいち私の邪魔されずに済むからね! だからあんた達の仲間になる意味がないわ! 私は私の好きなようにプレイしたいだけなのよ? なんでそれをあんた達は邪魔するのよ。私は1人でプレイするわ! 分かったっ? 遺跡なんかちっとも怖くないからね! 」
 最後の一言は余計だっただろう。それさえ無ければ工藤はただの単独プレイ大好きさんになって俺たちも納得いったかもしれんのに。
 その場合でも望月は納得いかずに工藤と2人で永遠に勧誘という名の口論を続けていただろうとは思うが。
「まぁそんなにビビるなよ工藤。『赤信号みんなで渡れば怖くない』って言うだろ? 」
「マスター……多分それ使い方間違ってる……。もっと別の言い方なかったの……? 」
「早瀬……そこは1回黙ってて後で言ってくれたら良かったんだが……。すいませんでした。とにかく工藤、そんなに遺跡なんて怖くないって」
「遺跡なんて怖くないわよ! 暗いとこなんて怖くないわよ! ちっとも怖くないからね! そんなことより、私は1人でプレイするわ! いい? 分かった? 」
 何回も同じような言い回しでそんなに言わなくてもいいだろ。工藤の顔を見ると明らかに俺の指摘を受けて動揺している。
 遺跡の小部屋が怖いんだったら隠さなくてもいいぞ。白鳥だって同じようなもんだったし、1人でプレイすると言っておきながら未だにここに留まっているということはついて行きたいのだろう。
 素直になった方がそんなことスグに実現してやるってのに。
 俺はそんなことを思いながらある1つのアイデアが頭の中で閃いた。
 さてと工藤さんよ。ここまで手を焼かせたんだからある程度素直になってくれよ。
 変に早瀬や望月に教えるとバレるかもしれんので1人で実行することにしよう。
「ったく……。分かったよ工藤。お前の言いたいことは分かった」
「分かってくれた? 私は複数プレイなんてしないからね! 」
「あぁ。俺たちは工藤抜きでプレイすることにした。今まで変に誘って悪かったな」
「へ~っそういうことね。私たちはもう行くから、工藤さんは1人で頑張ってね」
 早瀬は俺の作戦にスグに気づいたようだ。機転をきかせたのか、俺のアイデアに乗ってくれた。
「え? ちょっと……マスター? 」
 望月はなにも気づいていないようなのでこのまま押し通そう。
「そんな……結ちゃんが可愛そうれす~……一緒に行きましょうよ~」
 どうやら白鳥まで気づいていないらしい。
 仕方ない。白鳥には気づいて欲しかったが工藤に気をかけているらしくちっとも分かってないようだ。
「とっとと工藤を1人にさせないと迷惑だろ? 行くぞー、3人ともー」
 俺は望月と白鳥の腕を無理やり引っ張って連れてった。早瀬はこっちにニコリと笑いかけて黙ってついてきた。
「え……あっ! ちょっと! ……待ってよ! 待ちなさい! 私も……私も一緒に行くから! 連れていきなさいよ! 」
 チョロい。
 まさかこんな程度の作戦に引っかかるなんてな。
 今日は『1人で』なんて言葉が工藤からも俺の心の声からもやたらと多い気がする。
 俺たちは近くの街で再びカードの確認を行った。こういうことはこまめにしないとな。
 俺や望月や白鳥は新たにカードを手にしれていないので工藤と早瀬のカードだけ紹介しよう。

 早瀬カード一覧
 マグナム(マグナムを召喚する)
 キャノン(肩に背負えるキャノン砲を召喚する)
 ランチャー(ランチャー砲を召喚する)
 フュージョン(召喚した武器が2つ以上ある場合のみ使用可能。召喚した武器を融合させて強力な武器を召喚する)
 バレット(召喚した武器が銃器系のみ使用可能。召喚した武器を連射可能にする)

 工藤カード一覧
 ウェポンコピー(召喚した武器を2つ以上に分身させる)
 ウェポンポイズン(召喚した武器に属性効果を持たせる【毒】)
 イリュージョン(使用者の体の一部又は召喚した武器を半径10メートル以内でワープさせる)

 2人とも俺たちが来るまで遺跡から出なかったらしくカードの所持数が少ない。だがどれも強力なカードなので相当の戦力だろう。
 俺たちは最後の遺跡に向かった。相変わらず墓モチーフの遺跡にある小部屋にビクつく工藤をなんとか引っ張り出して入ってみると、そこには立花が静かに立っていた。
「なるほど。立花がラスボスだったってわけか」
「そう。私はこのゲーム内に出てくるカードを全て持ってる」
 ビリビリと緊張感がただよう。戦いの火蓋を微塵切りにしたのは、早瀬の銃撃だった。
『マグナム』
「いくわよ立花さん! 」
 ドウッ!
 早瀬の放った銃弾は立花が体をヒョイと動かしただけで当たらなかったようだ。
「私からも攻撃させてもらう」
『ソード』
 立花は俺と同じ武器を召喚して早瀬に突撃した。
「あら? 銃を召喚するのかと思ってたけど、どうやら違うようね。やってやろうじゃない! 」
『バレット』
 ドドドドドっ!
 やかましいくらいの凄まじい銃声が小部屋に鳴り響いた。
「早瀬さん! 援護するわ! 」
『アロー』
 工藤もこの空気に暗いとこに対する恐怖を忘れたのか、堂々とした顔で矢を放った。
 立花は全ての攻撃をヒョイヒョイと軽々避けている。この調子では当たりそうにもなかった。
「私もいくよ! 『アクセルレイド・2』! 」
 比喩ではなくあっという間もなく立花の目の前に行った望月は早瀬の時以上のラッシュを立花に奮った。それすらも立花は余裕そうにつば競り合いで応戦している。
 俺もなんかしなくっちゃなぁ……。
『トラップ』
 というわけで俺もなんか貢献しなくてはいけないような強迫観念にかられた気がしたのでカードを使用してみた。
 地面に仕掛けられたのは地雷式鉄槍砲のようだ。罠のある場所を踏むと鉄槍が大量にぶっぱなされるらしい。
 立花は一瞬下に目をやるとバッと5メートル(目算)くらいまで大ジャンプをして、鉄槍砲を回避した。
「今だ! 」
 ドドドドドっ!
 早瀬は空中にいる立花に向かって連射攻撃をしまくった。空中なら避けられないと考えたみたいだ。
 それを見た立花は相変わらず無表情のままくるりと身を翻して早瀬の連射攻撃をかわした。
 なんてレベルの高い戦闘なんだ。これじゃまるっきり俺だけ蚊帳の外じゃないか。工藤も早瀬も望月も立花と激しすぎる戦闘を繰り広げすぎているため付け入る隙が全くない。
 ん?
 白鳥はどうしたんだろうか。一旦立花たちの激しすぎるため全くついていけない戦闘を見て動体視力にブラック企業並の労働を強いるのはやめておこう。
 辺りを見回すと白鳥が小部屋の入り口付近で突っ立っていた。
「ほえ~っ! 皆さん凄いれす~。あんな戦い、私だったらついていけませんよ~」
 なんという呑気な人だろう。まるで他人事みたいだ。
「白鳥、お前は戦わないのか? 」
「いえ、私も戦いますよ? でも私の能力だと邪魔になるかもしれないので、カードを使って後方支援をしようかな~って」
 それはまた随分と謙虚な後方支援だろう。確かに白鳥の攻撃は超接近型だから邪魔になるだろうし、カードが強力なのでそうした方がいいかもしれん。
 立花が相手はあの3人に任せるとして、俺と白鳥はのんびり雑談でもするか。
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