魔法少女の魔法少女による魔法少女のためのご主人様幸せ化計画

円田時雨

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MMM(トリプルエム)のリアルローリングプレイゲームタイム

エピソード4

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 6つ目の遺跡の番人として立ちはだかったのは、早瀬と工藤だった。
 なぜバラけて番人にさせなかったのだろうか。難易度を上げるためか?
「ちょっと前まで2人で戦ってみたんだけどね? これがまた凄く面白かったのよ。だからマスターたちとの戦いも面白くなるんだろうって、2人で勝手に期待しちゃってるくらいなの」
「わ、私は……! 暗くてよく見えなかったしなにより暗いところがこわ……くなんかないわ! 暗いとこなんてちーっとも怖くなんかないからね! 暗いとこ大好きよ! 」
「なるほど。じゃあ工藤の家は明日からお化け屋敷ってことでもいいよな? 」
「うぐっ……! えっと……」
「まぁまぁ。そんなことよりはやく勝負を始めましょ? 私たちが勝つと思うけど」
「そそそそうよ! とっとと終わらせて私たちに戦いを挑んだことを後悔させてやるわ! 」
 工藤と早瀬はカードを構え始めたので、俺たちもそれに続いてカードを構えた。
『ソード』
『ブレイド』
 俺やその他4人はそれぞれの使い慣れてきた武器を召喚して間合いをはかりはじめた。
 バシュッ!
 戦いの火蓋を切って地面に落としたのを踏みつけるくらいの勢いで工藤が矢を放ってきた。
 どうやらとっととこの場から離れるか、終わらせるかしたいという気持ちがこの黙りこくった間合いはかり大会の中断を余儀なくさせたらしい。
 俺たちは素早く飛んできた矢を避けて反撃を開始した。
「行くよ! 『アクセルレイド・2』! 」
 相変わらず俺の動体視力をおいてけぼりにして既に早瀬の背後に回り込んでいた望月は素早く連続攻撃を仕掛けた。
 俺には小太刀をブンブン振り回してるだけにしか見えないのだが、銃を使って斬撃をなんとか受け止めている早瀬の様子を見る限りちゃんとした攻撃らしい。
 こういった本格的なバトルは魔法少女たちに任せるとしよう。俺はカードを使って後方支援のみに徹するぜ。
 情があるせいで攻撃出来ないのか、工藤と白鳥は睨み合ったまま動く気配を見せない。
 工藤はとっとと終わらせようと張り切っているような自信満々といった顔だが白鳥は困ったような顔だ。
 まあ普通に見るとどちらもただ睨み合っているだけにしか見えないだろう。
 こんな感じの微妙な表情の変化とかは立花の無表情から表情を読み取りまくっているといつか気付けると思う。
 と言っても毎日同じ釜の飯を提供して一緒に暮らすくらいのことをしないと気付けないだろう。誰か表情を読み取る力に自信のあるやつがいたらぜひ俺に御一報願いたい。
 立花に協力してもらってどっちがより無表情の表情のを読み取れるのか競い合っても俺は勝てる自信があるね。ついでにこの役割も交代してやるぞ。
「弥生! 私を攻撃することを躊躇っているの? そんなことではダメよ! 私から攻撃させてもらうわ! 」
 まるでどこぞの少年漫画に出てくる主人公の元仲間か師匠のような言い方で白鳥に言ってみた工藤だが、予想していた通り白鳥はビクっとするだけで攻撃するような素振りを全く見せない。
 こうなったら俺がなんとかするしかないのかもしれんな。
『コピー』
 俺は5人まで分身を作って工藤に突撃した。
 なんの作戦も考えていないが、まぁなんとかなるだろう。
「いくぞ工藤っ! 」
「防衛対象さん? ええい、面倒なんだから! 」
『ウェポンコピー』
 工藤が俺に向かって放ってきた矢は急に数え切れないくらい増えて、一瞬で俺の分身を消し去った。
「チッ! 防衛対象さんに当たらなかった! 」
 俺は工藤の独り言と舌打ちを聞き流してかまわず突撃を続けた。そして望月の真似(俺にとってはそのつもりで)をして剣をブンブン振り回した。
「うおおおおお! 当たれーっ! 」
「まだ来るの? しつこい! 」
 工藤は心底うざったそうにこっちを睨んできたが、当然の如く俺のようなズブのド素人のヤケクソ攻撃が当たるはずもなかった。
「やぁっ! 」
 工藤は隙を見て俺の腹に向かって矢を放ってきた。
『ウォール』
 突然現れたでかい壁に工藤の矢は弾かれ、俺は助かった。
 やっぱ前線で戦うのは俺にとっては部が悪い。というか悪すぎる。
 工藤の相手は白鳥に任せるしかないだろう。といっても、当の白鳥は工藤が睨むとビクっとするくらいで攻撃しようとしない。
「弥生! いつまで躊躇っているつもり? 私から攻撃させてもらうわ! 」
『ウェポンポイズン』
 工藤は大きく弓を引いて、紫のオーラを纏った矢を放った。
『デリート』
 慌てたように白鳥はカードをスキャンして工藤の攻撃をかき消した。
 そういやこんな感じのカードを白鳥はけっこう持ってたような覚えがある。そろそろ自分の記憶力に自信がなくなってきた。
「なに今のカード? もう! めんどうなんだから! 」
 工藤は再び弓を構え始めた。
 何がそんなにめんどうなのだろうか。そんなに暗いところが怖いのか。
 とっとと終わらせたい気持ちは分かるが白鳥の決心がつくまで少しは待ってやれ。
『イリュージョン』
 工藤は弓を構えたまま器用にカードをスキャンした。
 バシュッ!
 放たれた矢は俺たちの目の前まで猛スピードで飛んできて…………俺たちの目の前でフワッと消えた。
「ふぇ? 消えちゃいました? 」
 何が起こったのか分かってないのか、呑気にきょとんとしたままキョロキョロ辺りを見回す白鳥だが、頭上から降ってきた矢を見て絶叫した。
「ピひゃああぁ~っ! 」
 叫び声までトイプードルのような白鳥の様子を見る限り、もうほおって置いた方がいいのかもしれない。
「まだまだ~っ! 」
 工藤はどんどん矢を矢を放っている。カードの効果なのか知らんが、こっちに向けて撃っている矢は上からバンバン降ってくる。
「ふきゃあぁ~っ! やめてくらひャ~いっ! 」
 ヒィヒィ言ってる白鳥はどう考えたってもはや役に立つどころか工藤をイライラさせるだけなので悪いが少しどいておいて欲しいのだが。
『スピード』
 矢の雨をなんとか避けまくってとりあえず白鳥を小部屋の隅に運んでおいた俺は、工藤の隙を探していた。まぁ探すまでもなくけっこうありまくりなわけなのだが……。
「防衛対象さん! いつまでそうやって避けているつもり? そのカードの効果が切れた瞬間があなたの負けよ! 」
「じゃあ工藤! お前のカードの効果が切れた瞬間もずいぶんヤバイと思うんだが? 」
「その前に終わらせる! 」
 バシュッ!
 勢いよく放たれた矢は俺の頭上にワープして降ってきた。
『トラップ』
 素早くカードをスキャンして、俺は頭上の矢を避けようとダッシュを始めた。
 ここは一か八かの賭けだ。矢が俺の頭にぶっ刺さるのが先か、俺のカードの効果が発動されるのが先か。 
 結果はすぐに分かった。
「きゃあぁっ! 」
 腕をガタガタ震わせて工藤が叫び声をあげた。どうやらカードの効果発動の方が先だったようだ。
 上から降ってきた矢は消え、体を微妙に痙攣させながら工藤は倒れ込んだ。
 目の前で人が急に痙攣し始めたらけっこう怖いものなのだが……。
「ドッキリ企画とかじゃないんだからさ! なんで電気が流れたの? 」
「知らん。このカードは毎度どんな罠を作るのか分からねえんだ。工藤の電気ビリビリはそのうちの1つだろう。とにかく工藤、この勝負はお前の負けだぜ」
 負け方はあまりまともとは言えない感じだが、工藤は悔しそうな顔をしながら潔く負けを認めた。
 次は早瀬なのだが、早瀬と望月との激しすぎる戦いに加わらない方がいいような気がする。カードをスキャンする余裕もなさそうだ。
 ただ2人とも目の前にいる敵と戦うことに集中しすぎてこっちにはなんの注意もしていない。注意する余裕もないのだろうが、この隙をつかない手はないだろう。
 悪いが早瀬、この勝負をとっとと終わらせないと工藤がおかしくなっちまうかもしれんからな。
『スラッジ』
 俺は早瀬の背中に泥をぶつけて行動速度(だったっけ)を下げた。
「きゃっ! 」
 早瀬の背中にどストライクの泥は早瀬の動きをある程度鈍重にした。
 傍から見るとただのイタズラにしか見えないが、これも立派な戦術なのだ。決してイタズラなどではない。
「くっ……! 動きが重い! 」
 とは言いながらも望月の猛攻に未だ耐えている。
 仕方ない。早瀬の戦いを邪魔してでもさっさと終わらさないといけないな。工藤が頭を抱え始めたのでおかしくなる前兆かもしれん。
『ボム』
 早瀬の頭上からダイナマイトみたいな爆弾が1個だけ降ってきた。
 ドゴーン!
 火力は流石にそこそこなのだが、ぶち当たってしまえば致命傷になりそうな威力だ。
 小部屋を見回してみると、早瀬は天井付近まで大ジャンプしていた。爆風に乗って回避したと考えれるが、相変わらず魔法少女たちの身体能力はおかしいだろ。
 だがこうなってしまえばこっちのもんだ。空中では動きは取れないだろう。俺たちの勝ちだな。決してフリではない。決着は望月が付けた。
「勝った! 『アクセルレイド・3』! 」
 どうやらカードの存在を忘れてしまったらしい。魔法で決着を付けようとしている。一本だ。
 地面に降りてきた早瀬も潔く負けを認めた。
「私の負けね。チームワークが足りなかったのかしら? 工藤さんっ」
「う、うるさい! ほら、とっととこんなとこ出るわよ! 」
 遺跡から出てきた時の工藤の顔を見て思った。そんなに怖かったか?
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