魔法少女の魔法少女による魔法少女のためのご主人様幸せ化計画

円田時雨

文字の大きさ
70 / 114
MMM(トリプルエム)の年越しトレジャーハント

バッカじゃないの? そんなに妄想癖が凄いなんて呆れるわ……宝の地図なんてあるわけないでしょ?

しおりを挟む
 ダメだ、全く寝られん。
 時計を見ると時刻は夜の12時を過ぎたくらいらしい。そろそろまぶたが重くなって欲しい頃合いである。
 だが今の俺のまぶたは軽すぎて紙風船並になっているらしい。全っ然眠くならない。
 思えば昨日のことを振り返ってみると絶対疲れてるに違いないというのに、頭がまだ寝たくないと大合唱を始めちまったようだ。
 魔法少女たちのビーチバレーという名のクレーターの付けあいを目の前で見させられ、それが終わったかと思うと西田に誘われてビーチバレーをさせられたのだ。執事さんたちも加わって総勢何人か知らんがやたら多いビーチバレーだったことを覚えている。コートが箱詰めされた高級ハムみたいにぎゅうぎゅう詰めだった。
 なんの比喩かよく分からんがこんな事言ってるってことはやっぱ疲れてるんだな。
 ビーチバレーしかしてない昨日の宴会といってもいい夕食もバカ騒ぎして落ち着いた雰囲気にならなかった。
 就寝以外で体を休ませる時間である風呂も、西田にいらんちょっかいをかけられまくってゆっくりする暇なんてなかった。
 今度同じことをしてきたら大浴場の横にあったサウナにぶち込んでドアに鍵を掛けて一晩放置してやろう。干からびてミイラになってたって、どうせ犯罪者予備軍なんだ。警察は俺に感謝状を進呈するに違いない。
 そんなどうでもいいことを考えながら軽いまぶたを重くする方法はなんだろうと考えていた。
 結論。知らん、それに分からん。
 困り果てた俺は暇つぶしにと思い、まずはテレビをつけてみた。
 ここのホテルにあるテレビは全部日本の番組が見れるらしいと執事さんから言われてたので、ザッピングでもしながら面白そうな番組があれば見てやろうかと思っていた。
 だがこんな時間にやってる番組なんて永久にゆるい雰囲気でやるだらけきった深夜番組かBGMにもならない堅苦しいニュースくらいしかない。
 それでも暇つぶしにと思い、ニュースを見てみた。面白そうなニュースなんてものはなく、政治家の失笑レベルの言い訳を聞けるわけでもなかった。
 オーストラリア付近で台風モドキの異常気象が発生したらしく、日本に向かってそいつが進行中らしいくらいしか特筆すべきニュースなんてなかった。これも特筆すべきもんじゃなかったし。
 ふと夜中に1人でホテル探検でもしようかと思いドアを開けた。
 さすがにこんな時間にもなると電気はついてないので昼間と違った印象を受ける。あのイヤミったらしい内装は、暗くなると古ぼけたら洋館かお化け屋敷を思い浮かべるような印象だ。
 しばらく歩いて突き当たりの角を曲がると、声が聞こえてきた。大声で抗議の声を上げているらしい。それをなだめているような声もする。
 暇つぶしに盗み聞きしようか。声のする方向は、ここから真っ直ぐ行ったところにあるエレベーターホールからだ。
 俺はバレないためには立花のまねをしたらいいのかと考えたが、難易度が高そうに思えたので遠慮しておいた。
 いい感じの場所に観葉植物があったので、そいつを物陰として利用してみる。
 どうやら西田と執事さんの緑川さんが揉めているらしい。
「なんでスキューバダイビング出来ないんだよ! みんなで行くってずっと楽しみにしてたんだぞ! 」
「誠に申し訳ございません。ですが、この近くの海は潮の流れがはやく、インストラクター無しにはとてもではございませんが出来かねると思われます。それに加えてオーストラリア付近で台風が発生しているとのことらしく、明日の海でスキューバダイビングはおろか、海岸に行くだけでも危険が伴う可能性がございます。スキューバダイビングは辛抱して頂くしかございません。本当に申し訳ございません」
「そんな……なんとかならないのか? 潮の流れが大したことない島にクルーザー使って行ったりすりゃイイじゃん」
「それも出来かねます。この付近の海の様子は現在嵐のような荒れようでございます。クルーザーを使用することも困難かと……」
「じゃあ明日はどうすんだよ! 何も予定考えてないぞ! 」
「当ホテルには遊戯室も設置されております。そちらでビリヤードや麻雀などを皆様でお楽しみ頂ければ……」
「そんなの楽しくねえって! 俺だって毎日遊んでるから飽きてきたしよ! 」
 執事さんが何度も「申し訳ございません」を連呼しまくったが、西田は珍獣を見つけたと思ったらただのトカゲを見つけた動物学者のようなガッカリした顔をしてどこかへ行ってしまった。多分西田の部屋だろう。
 俺の心情は驚愕と困惑と驚愕で満たされていた。
 3分の2ほど驚愕で満たされているのは、やはり俺は心の底から驚愕しきっているのだろう。
 西田が俺たちの為にスキューバダイビングを企画していたなんて、にわかには信じられないよう出来事である。
 神性のアホさに隠れているが、実は友達思いだったりするらしい。
 出会ってから4年近くたっているが、ココ最近で今まで知らなかった西田についての生態情報が手に入る。いらんようなどーでもいいシロモノではあるが。
 俺は未だ襲来することを忘れた睡魔に早く来て欲しいと願いながら部屋に戻った。
 来て欲しい時に限って来てくれないくせに、来てほしくない時に限ってホイホイ来るアイツにはホント困ったもんだね。
 俺は発泡スチロール並に軽いまぶたと格闘して、およそ30分たった頃には深い眠りに落ちていた。

 そうして翌朝。
 正確には翌朝と言うよりその日の朝の方が正しいのかもしれんがそんなこと知ったこっちゃねえしどーでもいいことなのでほっとくことにしよう。どうせ誰も気にしちゃいないさ。
 俺は窓を叩きまくる風の音に起こされて、眠い目をこすりながら窓から景色を眺めた。
 そこに映る景色は、まさに嵐のど真ん中にある絶海の孤島って感じの景色がした。
 昨日まであんなにキレイだった海も荒れに荒れ狂っている。高潮なんじゃないのかと心配したくなるような波が何度も海水浴場に襲いかかり、ジャングルの木々は風に吹かれて折れるんじゃないかと心配したくなるくらい曲がっていた。
 俺はとりあえずなロビーに向かうことにした。そこならみんないるかもしれないと根拠は無いがそう確信していたのだ。
 案の定みんな集合していて、今後の予定について話し合っていた。
「どうしようか……? こんなに天気が荒れてるんじゃ外に出ることは出来なさそうね……」
 そういったのは早瀬である。
 こういう時にリーダーシップを発揮しようとするところはやはり早瀬といった感じだ。
「あ、マスター! 今日はチョビットだけ起きるの早かったね! 今みんなで今日の予定どうしようかって話してたとこなの! 」
 元気いっぱいに話しかけてきたのは望月である。
 相変わらず俺にもその元気をチョコットくらい分けて欲しいと思う。
「そうなのか。それで、なんか決まったのか? 」
「とりあえず今日は遊戯室で遊ぶことになったわ。何日かはそこで暇つぶし出来そうだからね。それにしても残念だわ、天気予報じゃこんなことになるはずはなかったのに……」
 早瀬の言葉を聞いて俺は立花に聞いておきたいことを考えついた。
「なぁ立花、魔法とかなんとかで天気を操られたりしてないのか? 俺たちの旅行気分を台無しにして、そん時に感じたストレスから生まれたマイナスエネルギーのために魔人が魔法を使って天気を操ったとかありそうな話だが」
「現在この島付近でマイナスエネルギー的魔力の観測はされていない。また、これ程の規模で天候を操作するには強大な魔力が必要。マイナスエネルギー供給が目的ならもっと別の方法をとるはず」
「じゃあ心配ないってことだな」
「ってこと。それより気になることが……」
「気になること? 」
「この近くの海に微弱ではあるが魔力を観測している。正体は不明」
「ま、気にしなくてもいいだろ」
「……了解」
 俺と立花の魔人談義が終わりを告げた直後、ホテルの玄関口から西田が全力でこっちに向かってダッシュしてきた。
「おいみんな! 大変なことが分かったぞ! 」
 魔法少女たちに対する敬語調をなくすくらい焦っているらしい。
「なんだ? 大変なことって」
「いやそれがよ! 執事の小原がクルーザーを港の倉庫に入れようとしてたら、こんなものが打ち上げられたんだ! 」
 そう言って西田が取り出したものは、理科の実験で使うビーカーくらいの大きさのビンだった。コルクで栓をされているが中に古ぼけた紙が入っている。
「なんだそりゃ? 」
「それを今から確かめるんだって! 」
 思ったよりカンタンにコルクが抜け、古ぼけた紙を取り出すことが出来た。
 紙を広げてみると、そこにはある島の地図が書いてあった。俺はこの島の形に見覚えがある。
「おいおいこの地図って……」
 俺も西田とおなじくなんとなく分かっていた。
 朱色のバツ印だとかこの島の形を見る限り、それは俺たちがいる西田島の宝の地図だった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

貞操逆転世界に転生してイチャイチャする話

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が自分の欲望のままに生きる話。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

処理中です...