魔法少女の魔法少女による魔法少女のためのご主人様幸せ化計画

円田時雨

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異世界っぽい現実のような夢 終章

反抗準備開始!!

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 去年のやり残しを片付けるべく最初のループした日に時間遡行した俺は、そこでいるはずのない人物に出会ってしまった。
「よう……元気そうで何よりだな」
 そこに立っていたのは、傷だらけでボロボロになった俺だった。
 服の上から血が滲み出ている。パッと見でも顔に切り傷が付いていたり、アザができたりと満身創痍だ。
 だが、そんなことを冷静に見れたのはあとの話である。
 今の俺は月読に掛けられてるのだろうか。やばい、混乱してきた。カカシせんせのように72時間ぶっ刺され続けるよりかは大分マシだろうが、精神攻撃だったら的をうまく射ていると言えるだろう。こんなもん見せられて混乱しないやつの方がおかしい。
 ボロボロの俺は麻酔銃を撃たれた小五郎のおっちゃんのようにフラフラと千鳥足を踏んで、どっかりと倒れ込むようにソファに座り込んだ。その様子を見る限り、どうやらボロボロの俺は死にかけに近い状態にあるらしい。
 驚いたままフリーズしている俺は混乱しきった頭でこの状況を理解しようとはしなかった。ただボロボロになっている俺を見つめることしかできなかった。
「やっぱパニクってるか? 普通はそうだよな、スマン。でもこの状況を受け入れてもらうしかない」
 少しか細い声でボロボロの俺が俺に話しかけてきた。
 ごっちゃになるのでやめて頂きたい。
「時間がない。1度しか言わないからよく聴いてくれ」
 なにをなんだ? この状況を一瞬で理解させようってのか?
「俺は今からおよそ2ヵ月後の未来から来たお前だ。ま、俺がお前なのは見た瞬間わかったと思うけど」
「未来から……」
 どういうことだ……。
 なんとなく気付き始めている俺だったが、なんとなく嫌な予感がする。
 ボロボロになっている俺の姿を見ると、タダごとでないことは明らかだ。
「立花が用意していた予備の『タイム』を使ってここに来た。お前に伝えたいことがあってな。なんでこの時かって聞かれても大した答えは出てこないので期待はするな。望月たちがいないと気兼ねなく話せると思ってな」
 とっとと本題に回らないこの話し方は間違いなく俺だ。
 緊張を紛らわそうとどーでもいいことばっか話す悪い癖である。
 つまりボロボロの俺は魔人又はその他やばそうなヤツらが変装して俺に化けているなんてパターンはなさそうだ。
 ボロボロの俺は大きく重い溜め息をついて、再び口を開いた。なにか決心をした時稀に出てくる俺のレアな癖である。
「単刀直入に言おう。三好だ。アイツに……」
 力を振り絞るように、一つ一つの動作が目の前にいる俺の命を削っているように見える。
 それを自分でも理解しているらしく、話し方に焦りが見え隠れしているのが分かる。5歳児のかくれんぼみたいだ。
「あの日に戻るんだ。俺が……お前が三好に告白されたあの日に……」
 一言一言喋るたびに息を切らしていっている。
 見たらわかる、ヤバイやつやん。
 冗談はさておき、俺は混乱している頭を365度フル回転させてボロボロの俺に水を飲ませてやった。
 実質5度しか回転していないので大したことが出来ないのは仕方がない。
「大……丈夫……なのか? やたらやばそうに見えるんだが」
 ゆっくりと水を飲むボロボロの俺に、俺は思わず話しかけていた。
 やっぱりややこしい。
「大丈夫……と言えば嘘になるな。ボッコボコにやられちまったからよ」
「誰にやられたんだ? なんでそんなにやられちまってんだ? 」
 目の前にいる俺は、まるでノスタルジーに浸っているジジイみたいな顔をした。
 2ヶ月経ったらこんなにも老けるのか。しかしそんな表情を見せたのもほんの数秒である。
 スグにハッとした顔をしたかと思うと、小さく息を吐いて答えた。
「この傷は……魔人にやられた。モクモクマンを覚えてるか? アイツだ。アイツにやられたんだ」
 モクモクマンとは、去年の4月の一年生旅行の時に出てきた魔人だ。モクモクした黒煙から現れたので俺が名付けたあだ名である。本名は知ったこっちゃない。
「なんでモクモクマンが出てきたんだ……? 」
 真っ先に浮かんだ疑問を棚に上げた俺だが、どうやらその棚は欠陥品だったらしい。呟いた疑問を投げ捨てて棚から落ちてきた疑問を未来の俺にぶつけた。
「望月は……? みんなはどうなったんだ? 」
 深刻な顔をし始めた未来の俺は、絞り出すように言った。
「アイツらは……みんなやられちまったよ。モクモクマンと愉快でもなんでもない魔人どもにな」
 なんてこった……。
 それはホントなのか? 
 ウソだろ……? 
 みんなやられちまったのか? 
 ウソつけよ俺。
 人造人間編でトランクスが語った未来を思い起こされるこの絶望は、俺の語彙力じゃ言い表せない。日本語を新しく作るくらいしか方法はなさそうだ。
 ヘドバンをしてるみたいに頭がガンガンと痛くなる。
 野良トレーナーにやられた主人公みたいに、目の前が真っ暗になる。
「話がそれちまったな。もう時間が無い。お前の気持ちは分かるが、俺はそれを目の前で見たんだ。申し訳ないが構わず喋るぞ。よく聴いてくれ。俺はそれを回避するためにここに来たんだ」
 もしも本当にそれが可能なら。……なんだってやる。
 俺はここから北極点まで犬ぞりで行くくらいの腹を括った。
「立花が予備の『タイム』を持ってるはずだ。そいつを受け取ってくれ。そして戻るんだ。三好が告白してきたあの日に」
 言ってることはさっきと変わらない。
「三好がなにかやらかすのか? 」
「いや、アイツは直接はこの件に関わっているわけじゃない。大元の原因がアイツなだけで、何も悪いことはしてないんだ。モクモクマン曰く、俺の周りの人間で一番なんとかエネルギーを発生させていたアイツを利用したらしい。なにをしたのかはよくわからなかったが」
 発生させていたっていうその原因はおそらく俺だろうな。
「お前も知っているとおり、三好はあの日以来落ち込んだままだ。無理して明るく振舞っているが、今もなんとかエネルギーを発生させているに違いない」
 確かにそうだ。三好は何も無かったかのように振舞っている。でも、それでも本当はそこまで辛かったのか。
「今さら慰めの言葉を連発させたって無駄なのはお前もよく分かるはずだ。お前も実際に連発させただろ? それでもアイツの辛い気持ちを消し去ることはできなかった。だから告白されたあの日に行って、アイツに一言言ってやれ。アイツの気持ちが晴れるような言葉を」
 そんなこと言われてもいったいなんて言えばいいんだよ。
 モクモクマンを呼ぶほどの強力ななんとかエネルギーを出してたってことは、相当やばいことはわかる。
 でもその分上辺だけのテキトーな慰めや心を込めても定形句みたいな言葉なんては通じっこない。
 どうすりゃいいんだよ……。
「どうすりゃいいんだよって気持ちはわかる」
 俺の心を読むな。なんでわかったかなんて野暮なことを聞く気は無いが。
「でも俺が思いついた方法はこれしかないんだ。頼む。なんとかしてくれ」
 なんとかするさ。俺のために、望月たちのために。そして、三好のために。
 俺がそのクソッタレな未来を変えるってことは、三好の心を救うってことにも繋がりそうだ。
「頼まれた。なんとかするよ」
 俺がそう言った途端、全身が光に包まれた。
「時間切れらしいな。もっと言いたいことはあったんだが、最低限のことは伝えられたからまぁ及第点ってとこだ」
 なるほど。
 本棚に本を置いた時から今までで3分しか経ってないのは正直驚きである。
「死ぬなよ、未来に戻っても」
 俺がそう言うと、未来の俺はニヤリと笑った。
「お前次第だ」
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